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【長編小説】#1「私の生まれ変わりは、君がいい。」

 もしも、生まれ変わることができるのなら、あなたは誰になりたいですか―?

 ◇◇◇

《灯莉の友達①》

 厳しい冬の寒さも終わりを告げ、温かい陽の光が差し込む。春風が頬を心地よく撫でる今日は、絶好の散歩日和だ。歩くのがとても気持ちいい。そんなのどかな日に胸を躍らせていたら、急にツーンと鼻を刺激された。癖のある、独特なこの香り。私は思わず立ち止まった。

「どうかした?」

 隣を歩く、恋人の真咲(まさき)さんが尋ねた。

「ノースポールだ…。」

 私は、香りの正体を言葉にしたとたん、自分の顔に哀しい笑みが浮かんだのを自覚した。

 ノースポール。キク科の一年草。マーガレットによく似ていて、中心が黄色く、白い花びらを身につけている。小さくて、愛らしい花。だけど、その見た目とは対照的に、菊の花独特の香りをまとっている。

 私はこの花に出会うと、どうしても思い出してしまう。今でも大好きな、彼女のことを…。

「…灯莉(あかり)ちゃん?」

 彼の声にハッとする。

「あ、ごめんなさい。ちょっと、昔のことを思い出してしまって…。」

「大丈夫?」

 心配そうに、真咲さんが尋ねる。

「大丈夫です。大好きな…、大切な人のことを、思い出していました。」

 私は微笑みながら答えた。懐かしむような、恋しがるような、そんな眼差しを向けて。

「そっか…。向こうにカフェが見えるから、少しそこで休もうか。」

 優しい声で彼が言う。

「いいですね。」

 私のその答えに、彼が微笑んだのが分かった。彼が優しく私の頭を撫でる。

「じゃあ、行こうか。」

「はい。」

 正面に向き直る。そして、

「ハル、ゴー!」

 数歩私の前を行く、犬のハルに指示を出した。


 私は、もう、目が視えていない―。

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