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【長編小説】#6「私の生まれ変わりは、君がいい。」

《希望②》

「でしたら、ホワイトのガーベラはいかがでしょうか。」

「ホワイト…ですか…?」

 彼女がきょとんとする。

「はい。実は、ハゴロモジャスミンという花が四月から五月にかけて開花時期でして。今、とても綺麗なんです。私の名前にジャスミンの花が入っていたので思い出して…って、そんなことどうでもいいですね。」

 余計なことを話してしまった。すみません、と謝り、説明を再開した。

「その花が白色なので、春らしいかな…なんて思って…。あと、白いガーベラには、『希望』という花言葉もあって…。」

「希望…。」

「はい。もし何か望みや願いがあれば…。」

 瞬間、冷たいものが頬をつたって落ちた。
 え…。
 机にポタッと落ちた円形の水滴を見て、自分が涙を流していることに気づく。
 私、泣いてるの…?
 無意識に泣いている自分に驚きつつ、慌てて袖で涙をぬぐった。お客さんの前だよ。何してんの。

「いいですね。」

「え…。」

「希望って花言葉、素敵です。」

 彼女がニコッと笑った。まるで何もなかったかのように。

 そうだ。彼女には―、視えていない。

「ですよね。ほんと素敵です。希望…。」

 堪えきれず、嗚咽が漏れた。
 私は何を言っている。もし何か望みや願いがあれば…、なんて。希望を持ちたいのは私じゃないか。望みや願いがあるのは私じゃないか。失明なんてしたくない。見えているまんまがいい。今の生活を失いたくない。
 そんな望みを、願いを、希望を、持ちたいのは私なんだ…。

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