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【長編小説】#5「私の生まれ変わりは、君がいい。」

《希望①》

 最近確かに、見にくくはなっていた。だけど、日常生活にそこまで支障はなかったんだ。きちんと、今までも普通に生活を送れていた。

 なのに―。

 四月の健康診断のとき、初めて視力検査で引っかかり、病院に行った。そしたら―。

 若盲症?私が?どうして…。なんで治らないの…?近年若者にみられるようになった病気?知らないよ、そんなの。なんでそんな病気があるの…?どうして、こんな突然…。

 一日経つと、自分の状況を理解し、やるせない気持ちでいっぱいになった。誰も悪くない。わかってる。でも、理屈じゃどうにもできなくて、ただただやり場のない怒りがこみ上げた。

 どうして私が…。

 そう思わずにはいられなかった。

「すみません。」

 声をかけられてハッとした。ダメだ。今はバイト中だ。

「…いらっしゃいませ。…いつものでよろしいでしょうか?」

「はい。お願いします。」

 彼女が優しく微笑んだ。いつものお客さんだ。近所の私立の制服を身にまとい、彼女の左側には…盲導犬がいる。

 いつか私も、こんな風になるんだろうか…。

 思ってしまってハッとした。私、今何考えた?なんてこと…。最低だ。

「あの…。」

「あ、すみません。すぐにお持ちします。」

 ダメだ。ボーっとしてはいけない。私は急いで数本のガーベラを取った。

「お待たせしました。実は先日、たくさん入りまして。色がいっぱいあるんです。ピンク、赤、オレンジ、イエロー、ホワイト。どちらの色がよろしいですか。」

 彼女の顔がみるみる輝いていった。

「わあ。ほんと、たくさんあるんですね。どれにしようかな。」

 選べない、という風に悩んでいる。そんな様子が楽しそうだった。

「前回は、確か…。ピンクでしたよね?」

 目の前に揃えられた色とりどりのガーベラたちを見て、私も一緒に悩む。

「わあ。よく覚えてますね。」

「それはもちろん。大切なお客様ですから。」

 そう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。素敵な笑顔だなあ、と思った。

「春らしいからってことで、ピンクにしたんですよね。」

 彼女が思い出すように言う。

 春らしい…。四月…。あ!

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