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【長編小説】#11「私の生まれ変わりは、君がいい。」
やっと!投稿できました…!!😂
前話一部編集しております。
よろしければ前話からお読みください〜☺️
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《待ち合わせ②》
「いらっしゃいませ。」
突然の声に、ハッとする。
カウンターの奥から男性が出てきた。20代後半くらいだろうか。スラっとした、黒髪の優しそうな顔をした人だった。真っ白いシャツに、黒いズボンを履いて、腰にエプロンをつけている。
彼が出迎えるように近づいてきたので、私は反射的に、
「…こんにちは。」
と、一言言って会釈した。
こんにちは、と彼は優しく挨拶を返すと、「一名様ですか?」と、私に問いかけた。
その言葉を聞いて、私はようやく本来の目的を思い出した。夢中になって可愛らしい世界に浸ってしまったが、私はおとぎの国に迷い込んだ絵本の主人公ではない。私は彼女とここで待ち合わせをしていたんだ。
「あの、人と待ち合わせをしていて…。」
「あ、もしかして、優葵ちゃんの友達?」
「え?」
あからさまに驚いた私の顔を見て、彼はクスッと笑い、
「やっぱり。優葵ちゃんから聞いてるよ。多分、もうすぐ来るんじゃないかな。立ってるのもなんだから、こちらの席へどうぞ。」
と、私を壁際の奥のテーブル席に案内した。
…驚いた。彼女と知り合いなのか。
そんなことを思いながら、ふかふかのソファに、腰を下ろす。
「ここ、彼女の指定席なんだ。」
彼は穏やかに微笑み、そう言った。そして、テーブルの真ん中を指差す。
「この花、ついこの間、彼女が持って来て飾ってくれたんだよ。」
そう言う視線の先には…、
「ハゴロモジャスミン…。」
そう呟いた私を見て、彼は少し驚きと感心が混ざったように「へぇ。」と言って、「君も花に詳しいんだね。」と続けた。
褒められたようで、照れくさくなる。頰に熱がこもる。純粋にその言葉が嬉しかった。
だけど、
「君も…?」
少しだけ引っかかってしまった。君も、という言葉に。
「あぁ、優葵ちゃんだよ。彼女も花にとても詳しくてね。」
穏やかな瞳で、彼はそう言った。微笑みながら、思い出すように彼女のことを話す彼を見ていると、二人は単なる知り合いではない、もっと親しい仲なのだろう、と感じた。ただのお客さんと店員さんの関係ではないということが、表情から見てとれた。恋人…という感じではない気がする。だけど、きっと、素敵な関係を築いているのだろう。
「彼女、すごく花が好きなんだ。君も好きなの?」
「はい。好きです。」
迷いもなく答えた。
「そっか。どうりで詳しいわけだね。」
「まぁ、私、花屋でバイトもしてるので…。」
そう言うと、彼はニカッと笑って、
「すごい。めっちゃ好きじゃん。」
と、嬉しそうに言った。
ドキッと胸が高鳴る。
いやいやいや、今の笑顔は反則だって。
ときめいてしまった自分を悟られないように、平常心を装って花に向き直る。そして、ある日の出来事を思い出していた。
「…この花も、先日彼女が私の店で買ったものだと思います。」
「え!そうなの!?」
「多分…。」
私は目の前にあるハゴロモジャスミンをまじまじと見る。
曖昧な返事をしたものの、自分の中では確信していた。多分じゃない。これは、絶対あのとき私が彼女に渡したものだ。
彼女は、この花を美しい花瓶に入れて、綺麗に飾ってくれていたんだ…。
そう思うと、自然と笑みがこぼれた。
「そうか。君だったんだね。」
「え?」
突然上から降ってきた言葉に理解が追いつかず、彼の方を見る。心臓は落ち着きを取り戻していた。
「何が…ですか…?」
君だったんだね。
全てを理解したように彼はそう言ったが、一体何が私だというのだろうか。
もしかして、彼女が私から花を買っていたことだろうか。
彼女が行った花屋の店員が、私だということだろうか。
私なりにその答えを考えてみたものの、彼の口から出てきた答えは、あまりにも予想外なものだった。
「優葵ちゃんの世界をカラフルに彩ったのが、だよ。」
そう言った彼の顔は、満開の時期を迎えた向日葵のように、キラキラと輝く笑顔の花を咲かせていた。
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お読みいただきありがとうございました!!
引き続き楽しんでいただけますと幸いです☺️
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