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種子と撒く者

昨日、私は失意のうちにリサイクルショップに散歩に出ていた。
キャサリンに頼まれていたテレビのリモコンを渡すためである。
なんのこっちゃ、だと思うけど説明する気はないのでごめんなさい。
ついでにお店をひとめぐりしてお買い物。

ロマンス小杉のタオルケット
きれいなブルーで一目で気に入った。
今までに買ったタオルケットでいちばん好きかも。
汚れがあるので100円で処分されていた。

・イワキ耐熱ガラスの耳付き中皿
もしかしたら耐熱ガラスキャセロールの蓋かもしれないんだけど、レンジによさそうなのでゲット。

・ステンレスカトラリー3点
槌目仕上げのオールステンレス。高級感たっぷりでキレイ。
サーバーとスプーン、テーブル用レードル。
日本製でワサビという人気シリーズらしい。

トータル495円。
今日も激安でした。
ずっと気になっているガラスコップがあるのですが、オールドファッションのグラスを買ったばかりなので悩み中。

帰り道、ディスカウントショップに立ち寄って食材をチェックしていたらさっき別れたばかりのキャサリンとばったり。
「メールしたんですよ」
私を探していた様子。

あの後、別のリサイクルショップでいろいろ仕入れて来たらしい。
「これよかったら」
と、小さな複製絵画をくれた。
ゴッホの地味な色合いの絵だった。
思いがけないギフトを脇に抱えて、私は桜の散る道を急いだ。

帰宅して玄関先であらためて絵を見てみる。
上部に描かれた太陽が明るく光っている。
ゴールドがかった空が心を染めた。

タイトルは渡された時に一目でわかった。
「種まく人」だ。

坂本龍一が初めて映画出演し、音楽を手掛けた「戦場のメリークリスマス」。
原作はローレンス・ヴァン・デル・ポストの「The Seed and the Sower」という短編小説である。
日本語訳では「種子と撒く者」で、マタイによる福音書13章の中にある「種まく人」のことを指す。
非常に有名な一節であり、ミレーの名画「種まく人」のモチーフにもなっている。

ゴッホはミレーにずっと憧れていた。生涯、強く影響を受け続けた。
この絵は、ゴッホが敬慕してやまないミレーの「種まく人」を自分流に描いたものなのである。

坂本龍一がこの世を去ったことに深く落胆しているこの時に、私の手元にゴッホの「種まく人」が届いたこと。
偶然ではない何かのメッセージのように思えた。
1つのメッセージはとても私的なものだ。
ここに書くことはしない。
そしてもう1つ。

彼はこの世に種を撒いた。
世界中に撒かれた種を、私は見守って行こう。




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