マッチングアプリのシステムにマッチしなかった
先日、アラサーにして初めてマッチングアプリに登録した。しかし、僅か2日で退会してしまった。今日はこの一連の出来事について記したい。
登録のきっかけは、結婚適齢期なのに恋人すら作ろうともしないわたしを心配した周囲からの強い薦めによるものだった。
とはいえ、最初は全く乗り気ではなかった。
恋人がいない生活をダラダラと続けているが、現状への不満が特段ないからだ。むしろ、一部の元彼たちから「付き合わなきゃよかった」「外見で惹きつけて中身で幻滅させる女」という辛辣な言葉をぶつけられたことがトラウマで、恋愛を放棄した方が幸せなのではないかとすら思い込んでいたからだ。
だがしかし、
「あんたは友達が少ないでしょう。これからの人生、支えてくれる人は大切よ」という母からの助言や、「幸せになってほしい。いい人を見つけて、いつも笑顔でいてほしいって思ってる!」「アラサーの今ってすごく貴重だよ。女の子は年齢上がると恋人作るの難しくなるから」といった同僚からの言葉は、わたしの重い腰を上げるには十分すぎる内容だった。
かくしてわたしは、同僚から言われるがままにPairsをダウンロードした。マッチングアプリの王道だから初心者には持ってこいだと聞き、軽い気持ちで登録を始めた。顔写真はカメラロールを辿ってもなかなか見つからず、1年前に友達と撮った写真を切り取ってアップロードした。自己紹介文は「ピアノ演奏と料理とAmazonプライムを観るのが好きです😊」と、比較的女の子らしい趣味を引っ張り出して当たり障りなくまとめた。
すると、翌日には100件以上のいいねが届いていた。大学生らしき若者もいれば、アラフォーと思しき経営者まで、多種多様な人がいた。こんなわたしにいいねだなんて、ありがたいことだと恐縮した。
一方で、誰にいいねを押すべきなのか悩んだ。容姿端麗なイケメンもいるし、趣味が合いそうな好青年もいた。なのになぜか心が動かなかった。「話してみたい」とは微かには思っても、恋愛関係を前提として行動したいとは思えなかった。顔や趣味や年齢といった簡単なスペックしか分からない相手がずらっと並んでいて、まるで味気ないウィンドーショッピングのように感じられてしまったのだ。
程なくして、「あ、このシステムにマッチングしてないんだな…」と悟った。そしてわたしは、いいねをくれた誰にもいいねを返すこともなく、そっと退会手続きをした。時間にして約2日、あっけないものだった。
退会手続きを済ませた後、半身浴をしながら反省会をした。慎重すぎる自分の性格が招いた結果なのだろう…とか、もっとライトに考えたらよかったのかな…とか、考えても仕方ないことばかりが頭の中を支配していた。それと同時に、わたしを心配してくれる周囲に申し訳ないとすら思った。多くの人ができることが上手くできない自分が不甲斐なく感じた。なんでこんな人間なんだろう。お風呂の中で、ぽろぽろと涙がこぼれた。
でも、自分の機嫌は自分で取らなければ前に進めない。翌朝は腫れた瞼を冷やしながらパンケーキを焼いて、メープルシロップをたっぷりかけて食べた。夜は牡蠣の土手鍋を作って食べて、録画していたバラエティ番組を観た。いつも通り笑っている自分にホッとして、元気が戻ってきた。
この一連の出来事をまだ同僚に報告していないけど、きっと残念がられてしまうのだろう。
でも仕方ない。
「恋愛っていつ火がつくのかダイナマイト!」とモー娘。が歌っていたけど、いまのわたしは、ある程度の人となりが分からないとハートに火がつかないことは理解した。
恋愛をすれば、自分一人じゃできないことや、見られない景色、湧き上がらない感情に出会えることは知っている。それはそれで素晴らしいことだと思う。でも、わたしはそれを手にできるだけの自信がないし、失恋したときに話を聞いてくれる女友達もいない。恋に敗れたときは、Google先生に単語を並べて相談し、時が過ぎて傷が癒える日をじっと待つだけである。そんな辛さも知っているからこそ、自分からガツガツ行動する気にはなれない。
だから、当面は今のままでいいやと開き直った。ひとりでも楽しく慎ましく生きていける強さがほしい。
【今日の一曲】
ありのままの私/ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」より
数年前、日生劇場で出会った一曲。一幕のラストで、市村正親が演じるLGBTの看板女優が酷い仕打ちを受けてショックに打ちのめされながらも力強く歌う姿に感動して、休憩時間も余韻が残って立てなくなった思い出。
ミュージカルは生命力に溢れてて大好き。
おしまい。
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