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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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ネタバレあらすじ「君たちはどう生きるか」ジブリ映画レビューと感想


【はじめに】

公開初日の午前に劇場に足を運んだ。記憶の限り文字に起こしてみたが、途中からシーンが前後しているような気もするし、すっぽり抜け落ちて思い出せない描写もある。特にシーンの切り替えがどうしても思い出せない箇所があるので、また後日見て来たいと思う。あくまで自分の記録要素が強い。また、しばらくおかわりしに行けない方のための記憶呼び起こし材になればと思う。

何も伏せていない見たままの文字起こしではあるが、セリフの言い回しまで記憶していないので意訳と捉えていただければと思う。

また時折り筆者の感想や考察が見え隠れするため、これが苦手な方はご覧にならない方が良いかと思う。

また最後に、主題歌である米津玄師さんの「地球儀」についても触れる。
三回聞く機会があり歌詞を書き起こし終えたため、一部引用させていただいた。
これについても考察を含むため苦手な方は注意願いたい。

【完全ネタバレあらすじ】

太平洋戦争の空襲により、母を入院先の病院の火事で亡くした主人公マヒト。
母を探して火の中を叫びながら走る描写は、身体に張り付く炎から熱風と痛みを感じるほどに迫力がある。
この光景はマヒトにとっても忘れ難い苦しみとなって、夢の中でも繰り返し再現される。「マヒト、助けて…」


母を亡くしたマヒトは、父に連れられ田舎に移り住むことになる。

出迎えたのは母と瓜二つの女性、父の再婚相手である、母の妹ナツコだった。
屋敷へ向かう人力車の上で、ナツコはマヒトに着物の帯の上から腹を触らせる。「わかる?」「マヒトさんの妹か弟になるのですよ」

マヒトは突然突きつけられた「新しい母、新しい命」の存在をそう簡単に受け入れることができないという表情でうつむく。
この後もしばらくナツコのことは「父の好きな人」「ナツコさん」と呼ぶ。


父は軍事航空機の工場を持っており資産家で、屋敷は大変広かった。「初めてだから正面玄関から入りましょうね」たくさんの部屋や廊下を抜ける。
一羽のアオサギがマヒトのすぐ近くを飛び抜けて行く。「覗き屋のアオサギよ」

屋敷には女中の老婆が数人おり、マヒトの父の荷物の中に缶詰や砂糖が入っているのを嬉しそうに分け合う。

だいぶ敷地を進んだ中に赤い屋根の建物が現れる。やっとマヒトの新しい部屋に着いた。身重の女性が軽々となかなかの距離を歩いたように見える。

「お茶にしましょうね」ナツコが部屋を出ると、マヒトはベッドに倒れ込み眠ってしまう。ナツコはお茶を机に置き再び部屋を後にする。マヒトの夢の中ではあの炎が立ち込め、涙をこぼして目を覚ます。


マヒトはアオサギが飛び立ち、ある塔のてっぺんの窓に体を逆さまにして入って行くところを見かけた。すっぽり体を収めると、くるっとこちらを向き、窓から顔を出す。

マヒトは塔を目指して庭に出る。
草を掻き分け進むと、古い塔を見つけた。
入り口は石や草に覆われ、先に進むことができない。
老婆が二人マヒトを連れ戻しにきた。
「この塔はなんなの?」
「さあ…なんでしょうね…」
マヒトが手に持っていたはずのアオサギの羽が消えていた。

家へ戻ると、ナツコが塔について説明する。
あれは大叔父が建てた塔だった。頭の良い大叔父は本をたくさん読みすぎておかしくなってしまった。ある日読みかけの本を開いたまま姿を消した。足跡一つ残さずに。


その夜部屋を出て階段の上に座り込むマヒトは、玄関に父の靴がないことを確認すると、帰りを待つようにまた眠ってしまう。そこでもまた炎の夢に呑み込まれそうになり、気づくと父が帰宅した。
「ただいま」「おかえりなさい」親密な二人の行為に目を背け、足音を立てないようにそっと部屋へ戻る。


「車で学校に行ったら皆驚くだろうな!!」父は誇らしそうだがマヒトはうつむいている。

転校生としてやって来たマヒトは、車での登場からしてやっかまれていた。
帰り道、草刈りをする生徒たちに絡まれ喧嘩となり、軽い傷を全身に負って帰路につく。

途中、マヒトは徐に手のひらの大きさの石をひろい、自ら右頭を強く打つ。血が溢れ、地面にパタパタと落ちる。顔を伝う血液が、その傷の深さを物語る。
後のシーンでマヒトはこれを「悪意」と語る。


手当を受けた後、マヒトの部屋の窓辺にあのアオサギが来ていた。アオサギはマヒトに、夢で聞いた母の言葉を真似するように「たすけて、たすけて」と話しかける。
マヒトは必死で窓をおろそうとするが固くて動かない。そこへナツコが部屋にやってくる。「窓をしめて!!」二人で窓を閉める。

その夜マヒトは発熱し医者が呼ばれ、ナツコや老婆たちが必死に看病をする中車を唸らせ慌てて父が帰宅する。「誰がこんな酷いことをしたんだ!許せん!」マヒトは自分で転んだんだと静かに言う。「大丈夫だから言ってみなさい、誰がこんなことをしたんだ!」「学校へ行く」「絶対に仇を打ってやるからな!!」
後に父は学校へ乗り込み「三百円寄付してやった!」と誇らしげに語る。「学校に行きたくなければ行かなくてもいいのだぞ」。

父は自分の富をひけらかすところがあるが、家族への想いは強い人物として描かれている。

【この辺まで映像付きで鮮明に思い出せるんだけど、だんだん記憶が前後したり怪しくなってきた。早いな笑】


翌朝、アオサギが屋根を歩いて行く音を聞く。
マヒトは吸飲みで水を一口飲んだ。
足音が進んでいく。
一気に水を飲み干した。
付き添いの老婆が足元で眠る中、マヒトはしつこく付き纏うアオサギを討とうと、戸棚から木刀を持ち出し外へ出る。アオサギを必死で追うが、木刀は簡単に嘴にくわえられてしまいバラバラにされてしまう。

アオサギがマヒトに語る
「ついに現れましたな。お待ちしておりましたぞ。母君は生きておられる。あなたの母君がお待ちですよ」
たくさんの魚が口を大きく開き合唱するように唱える「おいでくだされ!!」
カエルがマヒトの足元から湧き上がり、身体中をカエルが埋め尽くす。
「おまちしておりましたぞ!!」

そこへ老婆たちと共に現れたナツコが火のついた矢を放ち、マヒトは助かる。


翌朝、戸棚を開けるとバラバラになったはずの木刀が元の場所にあったのでまた持ち出そうとするが、取り出すとバラバラと砕けてしまう。それを老婆のひとりが「不思議なこともある屋敷ですからね」と気にもせずに片付けた。

ナツコはつわりで寝床へ伏せっていた。ナツコがマヒトに会いたがっていると老婆により伝えられ、ナツコを見舞うマヒト。
頭の傷を心配し涙を流すナツコを前に「早く良くなってください」と上べの言葉をかけただけでその場を去るマヒト。
帰り際、その寝室のテーブルに父のタバコ(ひかり)を見つけてスッと持ち出す。


マヒトはじいさんにたばこをあげる代わりに、ナイフの研ぎ方と弓矢の作り方を教わったが、矢はなかなかうまく飛ばなかった。
そこで、アオサギが落とした羽を使って矢を作ると、部屋の壁に深く突き刺さるほど見事な飛び方をみせた。

マヒトは寝巻き姿のナツコが森へ入る姿を見かける。

矢を作る際に、机に積み上がった本をバラバラと床に落としてしまった。
落ちた本の中に「大きくなったマヒトへ」と書かれた母からの贈り物であるらしき本を見つける。これこそが「君たちはどう生きるか」だった。マヒトはこれを涙をこぼしながら読む。


老婆のひとり、キリコもたばこがほしかった。新しい弓矢をあげるからタバコをくれないかと近づくが、マヒトは全部じいにあげてしまったと告げる。

ナツコが失踪したと聞き、自作の弓矢を持ってマヒトも森へ出る。「さっき森に入るのを見たんだ。結構前だよ。」

キリコと外にいると、アオサギがやってきた。「ナツコがいる場所を知っている、母君もそこにいる」アオサギがマヒトに語りかけるも老婆は「罠です!!」と必死で止める。

しかし聞く耳を持たずにマヒトはアオサギについて行く。キリコは不本意にもこの冒険に付き合うことになってしまう。


アオサギについていくと背後で塔の扉がおり、閉じ込められてしまった。

ソファにねそべるのは亡くした母の姿だったが、「母さん?」「母さん!」それに触れると、黒々とした液体となって消えてしまった。
「触らなければ完璧だったのに!」

アオサギの弱点は「風切りの七番」という羽だと自ら語った。思いがけずその羽を使い作った矢をマヒトは持っていた。
「何でこんなことをするんだ!」マヒトがアオサギに矢を放つが、うまく交わされてしまう。
しかしアオサギの羽で作った矢は、執拗にアオサギを追いかけ続けた。やがて矢はアオサギの嘴に命中して穴を開ける。
「そっと!そっとでっせ…」マヒトは刺さった矢をひきぬいてやる。

アオサギは、アオサギの皮を被った小さなおじさんのような生き物で、おしゃべりをすると嘴の中に人の歯が出てきたり、おじさんの顔が出てきたりする。鳥は着ぐるみのようなものだった。

嘴に穴を開けられたアオサギはうまく飛べなくなり、完全なアオサギの姿には戻れなくなってしまった。

アオサギは塔の主(ナツコの大叔父)に天井からマヒトを案内するよう告げられる。
すると、三人は床に吸い込まれて「下の世界」へと送られた。
キリコは「わたしは行かない!いやだ!」と必死に足掻くが吸い込まれてしまう。

《ここで上の世界から下の世界へと舞台が変わる》


マヒトはペリカンに襲われ「我ヲ学ブ者ハ死ス」(?表記違いあるかも)と書かれた黄金に輝く門に、ペリカンもろとも押し開き中に入れられてしまう。

「墓の門が開いた!」船を漕ぐのはキリコの若かりし頃の姿だった。
キリコがムチを使いペリカンを遠退けマヒトを助けた。
「墓の主が起きてしまう」急いでその場を離れる


キリコとマヒトは船で海原へと出る。
周りにも船がいくつかあるが、乗っているのはおよそ人ではないであろう影。
「見てごらん、あれはみんな生きてはいない」

巨大な魚を二人で吊り上げる。

キリコは魚を捌いて、上の世界で新しい命となる元「わらわら」を育てていた。わらわらは白くまるっこい足の生えたいきもので、「こだま」や「まっくろくろすけ」のような架空の存在である。

わらわらは腹がいっぱいになると空へと飛び立ち、上の世界で新しい命となる。

魚の内臓は「わらわら」が飛ぶため大切な滋養になると言うが、キリコにならってマヒトが魚を捌いてみると、誤って血をかぶり内臓を落としてしまう。マヒトはそのまま気を失った。
魚の腹から湧き出てこぼれ落ちる内臓の描写が見事で、その柔らかさの表現は千と千尋の謎の料理を思い出させた。


マヒトが目を覚ますと、キリコの家の、机の下に敷かれた布団の上だった。布団の周りには、新しい屋敷にいた女中の老婆たちが木彫り人形になったものが並び、マヒトを囲んでいた。
「お前を守っているんだ、動かすなよ」
キリコは大鍋で赤みのあるシチューのような料理をつくって皿に取り分けた。


トイレに行くため外に出たマヒトは、わらわらが膨らみ空へ飛んでいくところを見つける。
わらわらがDNAの螺旋を描くように空へ昇る。キリコとマヒトはそれを見守るが、ペリカンの群れが現れてわらわらを次々に食べていってしまう。

そこへ船でヒミが現れ、花火を打ち上げる。火の力でペリカンを焼いて行くが、いくつかのわらわらも一緒に焼かれてしまった。
それを見たマヒトは「もうやめて!わらわらが燃えてる!」
キリコは「今日はもう飛ばないだろう」とその場を去る

(追記)このシーン冒頭だったかな?月が綺麗に輝いているシーンで、ベートーヴェンのピアノソナタ月光 第一楽章のメロディをオマージュしたような美しい音楽が流れていて印象的だった。


その夜、物音を聞いたマヒトが再び外に出て確認すると、焼かれたペリカンが一羽倒れていた。
ペリカンはわらわらを食う生き物だとキリコに聞いていたため敵視してきた。

しかしペリカンが語り出す
「我々は外の世界から連れてこられた。何度もここを離れて別の場所へ行こうと飛んでも、結局ここへと戻って来てしまう。子孫は増えすぎ、食べる魚もおらず皆飢え、わらわらを食うためにここにいる。飛ぶことを忘れてしまったものさえいる。」
そのままペリカンは息絶えた。

マヒトは地面に大きな穴を掘る。
アオサギは問う「埋めるのか」

敵視していたペリカンだったが、死に際の話を聞いて心動かされたのだった。


翌朝アオサギがマヒトに井戸から水を汲むのを手伝わされる。
喧嘩をしながら水汲みをしている間に、風切りの七番で作られた矢をちぎってしまったら痛い痛いとアオサギは倒れてしまった。

キリコに、ナツコはもっと奥の屋敷にいるから二人で力を合わせて助け出せと言われ、しぶしぶ二人で旅に出る。
この時、キリコはマヒトにキリコの木彫り人形をお守りとして持たせた。


一方元の世界では、老婆たちが父に語りかける。

あの塔は昔、空から降って来た石なのだと言うこと。
そこは池(湖?)だったが、その巨大な石が落ちたことで水は完全に干上がった。
大叔父はその石を外から美しい塔で覆って保護をしようとしたが、その度に建設に関わる人々が事故にあった。そしてついには、大叔父も姿を消してしまった。
それ以来、外から入れないように入り口を塞いでしまい、誰も近付かなくなったこと。

そしてマヒトの母であるヒミも子供の頃に姿を消したことがあるが、一年後にそのままの姿で戻ったということ。

これを聞いた父は、ありったけの装備をかかえて森の塔に向かう決意をする。


嘴の穴は開けた本人が直さなければ意味がないとアオサギから聞いたマヒトは、持っていた弓の一部で、アオサギの嘴に空いた穴を塞ぐ栓を作ってやった。
飛べるようになったアオサギは逃げようとするが、マヒトの作った矢を見せつけられては慄いた。

ようやくみつけた家は家主を食って大量のインコに独占されたインコ屋敷になっていた。
アオサギが気を引いている間に入り込めと作戦を立てて実行するが、マヒトは簡単にインコに見つかってしまう。インコは厨房の奥へとマヒトを誘導すると大きなまな板の前に立たせた。
その瞬間、厨房の火の中から現れたヒミによってマヒトは助け出され、二人は暖炉を通ってヒミの部屋へと移る。
ぬけ出た世界では、赤い西洋の服をきたヒミが朝食を作ってくれた。

サクサクサクと軽快に大きな丸いパンを二枚切る。これにバターなのかチーズなのかをたっぷり乗せ、こぼれ落ちるほどたっっぷりの半分透き通ったツヤツヤの赤いジャムを乗せる。
顔をジャムだらけにしてマヒトはそれを食べた。


たくさんの扉が並ぶ中
「覚えておいてね、これがあなたが元の世界に戻る時の扉よ」扉によって繋がる時代や世界が違うことを教わる。 

途中、インコの大群に襲われ、ヒミにドアノブを握るよう言われる。
扉を開けるとそこは屋敷の庭の森だった。
老婆や父が自分を探す姿が見える。そして目が合った。「マヒト!?」
ヒミ「手を離しちゃダメ!手を離したら扉はこちらから開けられない。それとも手を離して戻る?」
マヒトは、ナツコを残して戻れないと扉から戻る。押し寄せたたくさんの巨大なインコは元の世界に飛び出ると大量の小さなインコになり父の顔に集まる。
「マヒトが…マヒトがインコになってしまった…!!」


ヒミとマヒトは光の道を進むが、石の壁に手をついてしまったマヒトは、稲光のように石がビリビリと光り腕に痛みが走った。石が進むのを拒むように光る。

ヒミに連れられやってきたのはナツコの眠る産屋。マヒトはナツコを元の世界へ連れ戻したい。
ヒミは力が強すぎて中に入れないと言い、マヒトが一人で入る。

産屋に入ることは禁忌とされている。
(もともと産屋とは、お産の血を穢れとして捉えていた昔の風習から存在したものである。)

ナツコが眠るベッドの上には、無数の白い紙でできた守りがぐるっと二周ぶら下がりヒラヒラと回っていた。
マヒトが何度か声をかけるとナツコは目を覚まし、怒りだす。
「どうしてこんなところへ来たの!あなたなんて大っ嫌いよ!!」

紙の守りがブワッと巻き上がり、マヒトへと強風を巻き起こしながら張り付いていく。
二人は身動きができないほど紙にまみれてしまうが必死でマヒトはナツコを呼ぶ
「ナツコさん!」「お母さん!」「ナツコお母さん!!」
産屋でマヒトは、ナツコを母として受け入れる覚悟をした。

紙の守りの力に押し出されたマヒトは、ヒミに支えられる。ヒミは火の力で紙の守りを燃やすが、二人は気絶しインコに捕まってしまう。


マヒトは夢の中(?)で大叔父と対面する。

大叔父は、この世界をおさめる役をマヒトに継がせたいと語る。
グラつく石の積み木をそっと整えて見せ「これであと一日は持つだろう」
マヒトは驚く「たった一日?」

大叔父は語る。
これは宇宙から降ってきた石の力であること、この積み木のバランスを保って良い世界を守ることが私の使命であること、石との契約により血縁者しかこの役目を継げないということ、より良い世界を築くためマヒトに継いでほしいということ。

マヒトはその積み木を「それは墓と同じ石だ、それには悪意がある」と断る


マヒトが目を覚ますと、そこはまた調理場だった。
今度こそ捌かれ食べられてしまう!
その時調理人に化けていたアオサギが現れて次々にインコを襲撃しマヒトを助けて二人は逃げ出す。


-インコの世界-
インコの王が仲間に見送られて出発する。部下のインコがお供したいと申し出るが、一人で行くという。

ヒミが眠る柩のような透明な箱をインコ王の部下が大叔父の元へ運ぶ。


マヒトとアオサギはヒミを連れたインコの王をあとからこっそり追いかけていくが、何かに気づいたか、長い渡り階段をインコ王によって切り崩され落下してしまう。

その先にはこの世界の主である大叔父がいた。
インコの王は、ヒミの案内によりマヒトが産屋へ入るという禁忌を犯したことを告げる。
このままでは秩序を守ることができない、と王座をねらうインコの王に大叔父は言う。
「時間をくれないか、マヒトに跡を継がせたいんだ」


崩れた階段の中で目を覚ましたアオサギとマヒトは再び進み、光の道を通り抜ける。「ここ一度通ったことがある」
後から、隠れていたインコ王がこっそりと追いかける。

再び大叔父のもとに戻ったマヒトに、大叔父は「これは悪意に染まっていない石だ」と先ほどとは別の石を差し出す。
「私が旅の中で見つけたこの悪意に染まらぬ十三個の石を三日にひとつ積んで、争いのない平和な世界を築いてほしい」と再び後継を促す。
「悪意のない血縁でなければこの役は継げないんだ」と。

マヒトは自分の頭の傷を指し、これは悪意だ。自分にはその資格がないと後継を断る。

人々が争い続ける元の世界に戻るのかという問いに対し、マヒトは「友達を見つける。キリコやアオサギのような友達を」と答え、アオサギはマヒトが自分を友達として受け入れてくれていることに驚いた目をする。

マヒトは、大叔父が世界を周って集めてきた過去の美しい石の積み重ねを引き継ぐより、自分の悪意と向き合いながらも、元の世界で友達を作って生きて行くことを選んだ。

後ろで聞いていたインコの王が怒りながら飛び出す。
「こんな石ころで世界を支配しているだなんて馬鹿げている!こんなもの!」と積み木を無理やり組み立て崩れてしまう。するとその世界は歪みだし壊れて行く。
ヒミとマヒトはアオサギの足につかまり逃げて行く。


ヒミとキリコ、ナツコ、マヒトとアオサギが、扉の並ぶあの場所へ、一堂に集まる。

ヒミが亡くなった母の若かりし頃の姿だと分かったマヒトは、元の世界へ戻ろうとするヒミを止めようとする。

「戻っても火事で死んでしまうよ!」
それでもヒミは笑顔だ。
「それでも大切な家族に出会えるんだから、行くわ!」(こりゃ泣いたわ!)

様々な時空へと繋がる扉が並ぶ中、マヒトとナツコ、アオサギは132(?)の扉から、ヒミとキリコはまた別の扉から元の世界へと戻る。
戻るべき元の世界の時代がそれぞれ違うからだろう。

アオサギは、マヒトがどうしてここまで記憶を持ったまま戻れたんだろうかと不思議がる。
マヒトはポケットの中に、キリコの木彫り人形と、石を持ち帰っていた。それが強い守りとなっていたからだ。
「数年は記憶が残るだろう。それでもしばらくすればあの世界の記憶は消えてしまう。」

元の世界に戻るとアオサギは消え、ポケットに入っていた木彫りのキリコはブワッと飛び出し、老婆のキリコに戻っていた。


戦争が終わり、家族で東京に戻ることになった。
マヒトのカバンには「君たちはどう生きるか」がしっかりしまわれた。


【主題歌について】

「地球儀」
作詞・作曲・歌  米津玄師さん

私は米津さんのライブツアー「空想」で
二度この曲を聴かせていただいた。
二度歌詞を聞き取りながらメモをとり、
今回で三回目となる初上映は再確認をしながら聴けた。

過去・現在をまっすぐ見つめ、向き合い、
大きくあたたかい希望を抱いて未来を想う
そんな歌詞にきこえる。

注)なお引用する歌詞は聞き取り文字起こししたものなので、リリース後に正しい表記へ書き換える可能性がある

季節の中ですれ違い
時に人を傷つけながら
光に触れて影を伸ばして

米津玄師「地球儀」歌詞より

綺麗なことだけではない、ありのままの過去から現在をしっかりと見つめ、前へ進んで行く。

この道の行く先に
誰かが待っている
(中略)
この道が続くのは
続けと願ったから

米津玄師「地球儀」歌詞より

「元の世界へ戻って、キリコやアオサギのような友達を作るんだ」

ああ 小さな自分の
正しい願いから
始まるもの
ひとつ寂しさを抱え
僕は道を曲がる

米津玄師「地球儀」歌詞より

悲しい過去や忘れえぬ苦しみ、ぬぐえぬ寂しさ
それを自分の一部と大事に抱えて、歩いていく

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それは大叔父を前に、自分の中の悪意をも受け止め、これからの未来を自分の手で選び進むことを選んだマヒトにも重なるようだ。

優しい米津さんの歌声が、劇場をあたたかく包み込んで、幕は閉じた。

【さいごに・考察】

小説「君たちはどう生きるか」と本作は全くストーリーが異なる。小説では父を亡くしたコペル君が叔父さんと話を交わす中で、人生の哲学を見つめ一つずつ考えていくと言う内容だ。
本作では、この小説を読んだことによって影響を受けたマヒトの冒険物語となる。

「過去の栄光を守る血縁による後継」という生き方の答えを押し付けようとした大叔父に、小説「君たちはどう生きるか」を読んだことによって、それを断り自分の意思による選択で未来を築くという答えを自ら導き出す。

また本作は、ジョン・コナリー「失われたものたちの本」から刺激を受けていると言われており、ストーリーが酷似している。
これを、宮﨑駿さん自身の人生に置き換えファンタジー化させたような作品に感じられた。

多くが語られていない本作なので、過剰な考察や解釈は控えたいと思うが、
マヒトは宮﨑駿さん自身、そしてアオサギは鈴木敏夫さんと解釈するのもおもしろい。

「我を学ぶものは死す」について調べたところ辞書に近い言葉を見つた。

「似我者生 象我者死」

師の教えを守りながらも創造を加える者は成長して、ただまねするだけの者は消えていく。

weblio辞書より

「我を学ぶ者は死す」
生半可な気持ちで門を潜れば死が待つという、宮﨑駿さんの仕事に対する言葉であるようにも見える。
そう考えると、船を漕ぐ死者の表すものが何なのかも見えてくる気がする。

13個の石を宮﨑さん作品13作である「パンダコパンダ」「ルパン三世 カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」「風立ちぬ」「君たちはどう生きるか」と捉え、後継問題をスタジオジブリとスタジオポノックの関係として解釈するのもまたおもしろいと思った。

◼︎再び鑑賞することができたら(もしくは新たな記憶が蘇ることがあったら)加筆修正する予定

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【Twitter】@_dangosan
ダンゴさん🌾vivi のTwitter

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