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映画みたいな事は無いし、人生で首をかけた日

若い頃の話。

地方都市だから都会にありがちな乱痴気騒ぎはかなり控えめ。って電車が10時台には終わるし。タクシー代誰が出すのよ?

小さな繁華街が点在する中にある、結婚式で行くだけのホテルのバーに割と出かけていた。

だってまともにお酒を教えてくれる人が居ないから。_(┐「ε:)_
彼氏も居ないし。←ここポイント

昭和の香りがプンプンするあの頃は会社で飲み会は今でいうキャバクラ嬢の役目を女性社員はしていたし、そんなもんだよねとも思っていたので、会社でお酒の正しいマナーを学ぶは皆無。

男性は接待があるから別かなぁ。

話を戻して
怖いもの?知らずの自分はバーの入り口で挙動不審になりつつ入ると、なんとかカウンターにちょこんとすわる。できるだけ年配のウエイターさんを呼び止めて、どんなお酒が良いのか聞くことに。

「なんでもいいからお酒を」
アル中の注文じゃんこれじゃ。

ウエイターさんが顔色を変えず一撃する。
「お連れ様は遅いですか?」

聞いて!この時点で既に学びなのよ!
それが分からん自分は変な顔をする(元々とか言わない)

「お連れ様がいらっしゃる前から酔い潰れてしまわないようにお出ししますので」

あ、そうか。

「お酒を普段飲まれないならカクテルは如何ですか?カクテルなら、お酒の量を加減出来るからアルコール弱めにオーダーできますよ」

今じゃネットでその場で調べて答えはそこそこ出せるけどあの当時は何も無いから出た所勝負になる。

オリジナルカクテルだった。そこそこ甘い。
目標滞在時間1時間なのでちびちび飲む。けっこう辛い(そそくさ出ないが修行だったのよ自分には)

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そんな感じでぼちぼち通い大体掴めてきた頃の話。

バーでカウンターが珍しく空いていない日だった。
ホテルにありがちなラフレシアみたいな椅子に座ると身体が埋もれるアレ。
端くれに座る自分。薄暗いなかでちょこんと座る自分は座敷わらし。

いなくなったら潰れるよ。おいおい。

挙動不審で顔を覚えて頂いたので、注文もウエイターさんが今日はウイスキーを少しどうですか?と提案するので頷く。
少しずつ飲んでいたら、カウンターに移ります?とウエイターさんが気を利かす。孤独すぎるのか!客からのクレームかも知れぬ。

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カウンターでウエイターさんの作業をぼんやり見ながらチョコをちびちび食べていると、こじゃれた男性(若いのか若くないのか覚えが無い)から声が出る。

「隣良いですか?」
「あゝどうぞ」

隣って言うには少し離れてはいたけど。少し遠くから喋りかけられるけど
割とまともに聞いていなかった。
まあたわいもない話をしていたと思う。愛想良くしなさいという親の言いつけを守って適当に愛想よくしていた。

気がつくとその人はほぼ真横にいた。

ただニコニコしていただけでしつこいようだが何の話かも覚えがない。相手の顔も覚えが無い。つまらないが70%越えだし、そもそも終電が近づいてきた。これはアカン。

もう帰ろうと、財布を出すべく鞄をゴソゴソしていたら

いきなり頭が移動する!ものすごい速さで頭だけが移動する事ってある?自分は無いよ。

へ?

その男性の顔が近づく!

顔を思いっきり背ける!((((;゚Д゚))ナニコレ
ペットが本気で嫌がるあのポーズ。前足を顔にむぎゅーってするやつ。
あれを自分が見知らぬ他人にするとは思わなんだ。

顏ごとのけぞるから首に半端ない力がかかる。多分大道芸で首に人をぶらさげて振り回すアレ、こんな感じなのかと。

相手、何故か負けない。

鼻の横辺りに口がワサって触りそうだから更に頭をのけぞる。
頸椎頸椎と念仏を唱えた。
何故か美容院のシャンプー台を思い出した。

と、思ったら相手はサッと立ち上がる。

その人はルームキーを机の上に置いて

「後で」と言い残し去る。

は?


呆然とする自分にウエイターさんの冷静なやれやれって表情から放つ言葉。

お代はあの方につけておきます。(怒)
鍵も預かります。(怒)

それ以来そこのホテルのバーに行かないし

一人で飲む修行もこれをもって終了となった。


アメリカ映画じゃあるまいし。
いくら見た目が覚えが無い程度に普通だとしても

アレは無いわ!


人のまばらな駅の吹きさらしのホームで(JRってわかる発言)
首をさすりながら起きた事に合点がいかないまま立って乗り込む。

何度も言う「なんなのあれ」

#ほろ酔い文学


















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