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「11月の名前のない珈琲 タクワエル、フクラム、ハナヒラク」

ふくよかであたたかい湿気を含んだ土壌だ。
コクと苦味にそう感じた。

そこにさっと切れ込む酸味。
これは、そう、きっかけだ。

やわらかな土の中で守られた種が、水分をその中に蓄え、どんどん膨らんでいく。

そして、種のまわりにあるかたい殻が、最後に、きっかけを得て、破れ、芽が出て、花ひらく。

11月の名前のない珈琲を飲みながら、そんなことを感じていた。
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11月の名前のない珈琲:Ethiopia

エチオピアは、アラビカ種発祥の地。
(アラビカ種:香り、味が優れている。病気等に弱く、栽培が難しい。)

今でも、エチオピアには野生のコーヒーノキが育ち、一部のコーヒーは野生の木から収穫されていることもあります。

カリオモンというコーヒーセレモニーが行われるエチオピア。

人口の約5分の1がコーヒー産業に携わっていて、生産量の約30〜40%は国内で消費されているそう。
コーヒーをたくさん召し上がるんですね。

今月の名前のない珈琲は、エチオピアのイルガチェフェ地域で栽培された珈琲豆です。

イルガチェフェは、「湿地と草原」という意味。

その名のとおり、降水量が多く、水に恵まれている地域なので、水洗式(水を使って、果肉・ミューシレージ・パーチメントを取り除き、生豆を乾燥させる)が採用されています。
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11月の珈琲は、写真家智心の写真詩集「めぐる」を見て、感じたことを焙煎した珈琲。

名前のない珈琲に私は思いを込めていないけれど、焙煎した珈琲を飲んで感じたことは、やはり、写真詩集と繋がっていた。

時は流れ
季節は移ろい
そして巡る
日常にある
些細だけど
美しい変化

ひとりの女性が過ごした一年は、一見すると、とてもおだやかに見えるけれど、その奥には、喜びを分かち合った日も、ちょっとした怒りを感じた日も、どうにもならないことに涙した日も、好きの楽しさを爆発させた日もある。

すべての経験を蓄え、その蓄えに心が膨らみ、そして、花開く。

11月の名前のない珈琲に私がつけた名前は、『タクワエル、フクラム、ハナヒラク』でした。

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