「2023年9月の珈琲 Guatemala:月が落ちていく」
中秋の名月を、この手のなかに。
Guatemala:月が落ちていく
タワーのようにそびえ立つ
マンションの横に月はいた
実りの秋にふさわしい
ふくよかなかがやきに吸い寄せられ
近づきたくて、手をのばす
この手のなかに月が落ちていく
なじみのよいコクとグッと締まる苦み
月を見上げれば、そのカタチに、理科のテストを思い出す。
迷ってしまうのは、上弦の月と下弦の月。
どっちがどっち?と、テスト用紙を鉛筆の芯でつついていたっけ。
新月から上弦の月、満月を経て、下弦の月、そして、また、新月から始まる月のサイクル。
月は、いつだって、どのカタチであれ、うつくしい。
(といっても、新月は見えないけれど。)
それなのに、なぜ、中秋の名月は別格なのだろう。
ヒトにいそいそとお団子を用意させてしまうほどに愛でられる秋の名月。
その夜は、月のおかげで明るかったのだ。
家へとつながる遊歩道を、自転車で走りながら、その月の明るさに誘われて、目線を20度ほど上方向に上げた。
今、住んでいる街には、幼少の頃に住んでいた町にはなかったタワーのようにそびえ立つマンションがある。
そのマンションの横に、実りの秋にふさわしいふくよかな輝きをはなつ月がいた。
月のうつくしさに吸い寄せられるように、自転車を漕いでいると、ひと漕ぎひと漕ぎするうちに、月が落ちてくることがわかった。
このまま、自転車を漕ぎつづけたなら、もっと、月に近づける。
そして、手を伸ばしたなら、この手のなかに、月がすっぽりと落ちてきて、わたしのこころのなかにまで、なじんでいくにちがいない。
9月の珈琲の「Guatemala:月が落ちていく」は、そんななじみのよいコクと存在感のあるうつくしさがグッと締まる苦味のようで、秋の夜に見た月を思い出さずにはいられなかった。
ちなみに、秋の月がうつくしいのは、春や夏に比べて、乾燥しているおかげで、空気が澄んでいるから、月がとてもくっきりと見えることにあるのだという。
今年の中秋の名月は、9月29日。
Guatemalaと団子を用意して、月を愛でようと思う。
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