51207号室

お気に入りの本屋がある。
会社帰り、
そこで陳列されていたひとつのぬいぐるみと目が合った。
その名前はお文具さん。通称「おぶ」。
SNSで動画やイラストを発信しているキャラクターだ。

お文具さんを手に取ると声が聞こえてきた。


「頑張らなくてもよいのです」
いつもの動画のあの声だ。
ただ泣いてしまった。

はたからみると売り物のぬいぐるみを
手に取って泣いている限界OLである。
もちろん、ぬいぐるみから聞こえる声は空耳。

ワーキングプアなのでお金はないが、
昔学生の頃に貰った図書カードを使って家に連れて帰った。

するとどうだろう、
家に帰っても焦燥感しかなく、逆になにをする元気もなかったのが、落ち着いて過ごせている。
私に必要なのは、癒しだったんだ。
その夜から一緒に暮らしている。

お文具さん、ありがとうね。
これからもよろしくお願いします。
そして、私もそんな限界な人たちの役に
少しでも立てるような役目を果たしたい、と思ったが、
これは寝言である。

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