住宅ローンが当たり前なことの危うさ

子どもの頃、親や学校の先生から、「借金をしてはいけない。」と教わりました。時は流れ、仕事をして自分でお金を稼ぐようになり、結婚もしました。それからというもの、職場や親戚の集まりなどで、「賃貸物件に住んでいる」と言うと、「家はいつ買うの?」と聞かれるようになりました。僕の職場や親族は旧態依然なので、余計なのかもしれません。でも家は数千万円を超えるような額が必要になります。当然、そんなお金を持ち合わせていないので、住宅ローンを借りることになります。つまり、職場の方々や親族は、住宅ローンを借りることを前提として話をしていることになります。ここで、昔のことを思い出します。あれ、住宅ローンって借金じゃないの?借金はしちゃいけないって教わったような・・・。

こんなことを思ったきっかけは、僕が今年、35歳を迎えたからです。住宅ローンは一般的に35年で組むことが多いです(実際は繰り上げ返済とかで35年よりも前に返し終わる人が多いと聞きますが)。それに伴って、自分のこれまでの人生を色々と思い返してみました。僕が生まれた頃の記録媒体と言えば、専ら「写ルンです」などのフィルムカメラでした。今ではデータでの保存が主となり、撮影自体もスマホで、デジカメ(カメラ)すら使う人が減っています。生まれた頃はなかった消費税も、今では10%。今後更に上がりそうな気配もあります。総理大臣に至っては何回変わったか知りません(笑)。こう思い返してみると、35年って途方もないくらい長いと感じました。当然、その間に社会情勢も文明も常識と思われていることも大きく変わります。そんな中で、「借金をすることの是非」以前に、「定額を35年間払い続ける」という契約をすること自体、いかに恐ろしいことかと思えてきました。

2021年、僕は家を買おうと色々と活動していました。結果的に買えなかった訳ですが、買えなくて良かったかもしれないと今は思っています。2022年、こんなに物価が上がってしまうなんて。手取りは上がっていないどころか、コロナの影響で微減です。今は賃貸なので、「生活が苦しくなったらもう少し安い物件に引っ越そう」と思えますが、もし購入してローンを組んでいたら、そんなフレキシブルに動けないですし、住宅ローン残金を帳消しにできるほどの金額で売れる保証もないです。生活費の中で、「住宅費」という固定費を削れないとなると、その他で削っていくしかない。僕個人としては、「食」や「健康」が生きるうえで最も重要な要素だと思っているので、「「食」の質を落としてまで持家に住む」ことや、「心身に負担を掛けてお金を稼いでまで持家に住む」ことが迫られる状況になったとしたら、本末転倒だと考えています。

職場や親戚の50歳台より上の世代の先輩方が20~30歳台だった数十年前は、まだ日本の経済も右肩上がりで人口も増えていたため、35年先の未来図を描けたのかもしれません。しかし、これから世の中がどうなっていくかあまりに不透明で、特に令和に入ってからは本当に激動で、来年の未来図だってまともに描けません。そんな中で、「長期に及ぶ住宅ローンを組むことが当たり前」という価値観を疑いもせず持ち続けることは、非常に危ういと思うようになりました。

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