見出し画像

ウミガメ


1.ウミガメたち

今日はウミガメの見分け方について学んだ。
ウミガメとひとくちにいっても、じつは7種のウミガメがいる。

日本の近海でよく見られるのはアカウミガメとアオウミガメとタイマイの3種だ。
これはじつは、前々から見分けられる。

甲羅がぎざぎざしているのがアカウミガメで、ぜんたいにすべすべしているのがアオウミガメで、口が尖っていてなんだか小汚く見えるのがタイマイである。

ダイバーの端くれとして150本あまり潜っているが、未だにカメに出会うとカメが引くほど喜んでしまう。カメラのバッテリーが上がるほどに写真を撮りまくるので、いい加減覚えてきた。

のこりはヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメ、ヒラタウミガメ、オサガメである。
あれっなんだか小さいなと思ったらヒメウミガメ、ここはメキシコだという場合はケンプヒメウミガメ、オーストラリア近辺でアオウミガメに似た姿を見かけた際はヒラタウミガメとしておくほうがレア感があってよいだろう。

オサガメは、これはもう別格である。でかい。これまでになくでかい。浦島太郎なら2、3人は跨がれそうだが、子どもには到底いじめられまい。2メートル近くなる巨体。太い首。甲羅ではなくゴムのような皮膚に覆われた背中。爬虫類であることを矜恃するかのような顔つき。ダイビング中に出会ったら狂喜乱舞するに違いない。竜宮城など行かず、写真を撮り続けるだろう。

2.ウミガメたちとわたし

ウミガメを見ると幸せになるということわざがハワイだかどこかにあるそうだが、少なくともわたしにおいてそれは言い伝えなどではなく事実である。

何度見ても「わ〜〜〜」と乙女のような声を上げてしまう。おそらく、夢の国が好きな少女らが世界一有名な例の彼に出会ったときのような声だろう。わたしにとっての夢の国は舞浜ではなく海の中なので、定かではないが。

魚は無論好きだが、ウミガメが好きな理由の一つには表情があることが挙げられる。眠そうな時は眠そうな顔をするし、迷惑な時はこの上なく迷惑だという顔をする。その不機嫌な面構えがたまらない。実家の柴犬を思い出し、うっかり撫でたくなるレベルである。

しかし、ダイバーには「ノータッチ」の原則がある。海の生き物には決して触らない。海にお邪魔させてもらっている身としては当然のことだ。恐れを知らないタイマイの子どもが興味津々に近づいてきたときは、満員電車の男性諸君のように海中で両手を上げて必死に「触りません」を表明し、ぶんぶん首を振って否定の意を示したのだが、タイマイは我関せずガンガンに近づいてくる。

美人局、だったのかもしれない。


「お風呂で読める気軽な読み物」をつくりたいと思っています。サポートいただけたらとても嬉しいです。