ぶりのおさしみ vo.0

職場、昼ご飯中。大好物 日清カップヌードルをすすっていた時のことだ。着ていたお着物に、スープが飛んでしまった。

ほんの少しのつもりだった。やってしまった。(犯人の供述)

『まぁ...このくらいなら広がらん....』と余裕面をブチかまして、再び午後から立ちっぱなしでの接客にまた戻る。

でもね。悲しいかな。どんどんどんどん広がっていくんだ...お前正気か...?

なんっっっっで綿棒の先端くらいの大きさだったシミがこんな2時間くらいで1円玉くらいにまでなってんだよ......!変な噂くらい広がったらいけないんだよ君は...ねぇ...

私が今務めているのは和菓子屋。職業柄、仕事を覚えてきたらお着物に昇格するのですが、なんと私は着物デビュー1日目にしてカップ麺の汁をブチ飛ばしたのである。

わざとじゃなかったんだ。(犯人の供述)

運がいいことに、その日は大雨。女将さんに『あなた、そのシミは何?』と突っ込まれてしまった。ヤバい。お、怒られるのは...い、嫌だッ...(クソクズ)

『あっ...これ、雨です雨。さっきゴミ捨てに行ったときに...』

犯人は嘘の供述をした...もう...逮捕だ。逮捕状をだすんだ世の中。

だが普段厳しい女将さんも『あ。そう。』と納得をしてくれて、一旦安心した。のもつかの間。その日の晩は、この油分大シミ着物とのバトルが開催されることが急遽決まったのだ。

着物を持ち帰り、一旦洗濯部屋に着物は移動させ、

冷蔵庫から酒といかの塩辛で優勝をしたいと思いましたので、反省の意思というヘルメットを隅に置き、大優勝させていただきました。

口の中では漁師たちができたてホヤホヤのいかの塩辛を漁師飯として、酒とたしなんでいる風景があった。現実、私の脳内では

大難関 油分大シミ着物とのバトル戦の攻略を考えていた...

私の記憶上、シミにはいくつかの武器が効果的であることはわかっていた。

今回は油分、そう、こいつには中性洗剤が最強武器だ。

油分大シミ着物とのバトルを前に、酒をたらふく飲んだ私は、口の中で杯を交わす漁師たちと、しばしの別れをすることにした。

そして着物を風呂場に呼び、タイマンを張った。酔っぱらっている私はなぜか、『世界が終わるまでは』を風呂場で熱唱しながら、大シミを落としていた。

なお、私は23歳の女性であることを、皆さん覚えていてほしい。

安西先生が言う、『諦めたら、そこで試合終了ですよ?』と....

そして私は言う。『安西先生....シミを...落としたいです...』と....

あぁ。これ書きながらまじでスラムダンクって最高だなと泣きそうになってる。私は三井大好きです。


心の中の音楽は世界が終わるまでは。(幻聴)

口の中では杯を交わした漁師たちの声援。(幻聴)

そして、何度も繰り返し、乾かし、ジワジワと再び現れる大シミに心を諦めかけた頃にでてくる、安西先生と三井のやりとり....(幻覚)



1時間半の戦闘の末。


私は見事、優勝をした。


着物を除湿器にて乾燥をさせようと、洗濯部屋に再び持って行った。

着物を物干しざおにかけ、私は扉をしめ眠りについた。


そして翌日。シミは落ちていた。落ちていたんだ。だがおかしい。おかしかったんだ。



除湿器の乾燥のボタンを押し忘れた結果、ビッチャビチャな着物という、新たなボスが洗濯部屋には現れていた。


世界が終わるまでは 離れることもない

そう願っていた 幾千の夜と

戻らない時だけが 何故輝いては

やつれ切った 心までも壊す....

はかなき想い... このTragedy night



このTragedy night





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