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続ける!毎日掌編小説。18回目『パフェが食べたすぎて』


 お腹がすいた。甘いものでも食べたい気分だった。
「パフェでも食べたいな」
 家を出ると外は真っ暗だった。深夜の冷たい空気を肌に感じる。体が凍りそうだった。それでもパフェが食べたかった。パフェの口になってしまっていた。
 私はよく深夜に目が覚める。3時とか4時がほとんど。
 そしてよく、この時間に起きると甘いものが食べたくなってしまう。

 しかし、こんな時間だからか、店はどこもかしこも閉まっていた。

 がっかりして、諦めかけていた時、私は暗いのになぜか賑わっている路地裏を見つけた。
 路地裏には若い男女がたくさんいたので安心して入った。
 奥へ進むと、ついにパフェを売っているお店を見つけた。奇妙な光を放つお店でとてもおしゃれだった。それに周りにはパフェを片手に幸せそうにしている人たちがかなりいた。
 私は迷わず向かった。
 そして店員に話しかけた。
「にいちゃん!パフェひとつくれ!」
 全体的にふっくらとした男だった。
「ダメダメ、パフェは20歳になってからって、お母さんに教えてもらわなかったの?」
「え?!パフェが20歳から?」
 びっくりして声を荒げてしまった。
「決まりだから」
 そう言って半ば強めの態度で言われ、追い返された。

 どうしてもパフェが食べたい。これほどまでパフェにありつけないとなると、逆にパフェが余計に欲しくなってしまう。

 と言っても、パフェを売っている店があの後見つかることはなかった。体は眠気と共に疲労していき、疲れ果てていた。そんな時。
 視線を落としていると、道端の路地のちょうど影になっている場所に、二口程度残ったパフェが隠れていた。
 私は悩んだ。まだまだ新しそうだとはいえ、誰かが残したもの、これを食べてしまっていいものか……悩みに悩んだ末、結局それを口にした。
 まんべんの笑みが広がる。頬が蕩け落ちそうだった。美味しさを喉から表現するように、ハミングが高音に達した。
 まさに私が追い求めていた味と食感だった。

 もっと食べたい。私のパフェが食べたいという衝動は抑えられなくなっていた。
「あの、パフェを売っている店を知りませんか」
 たくさん人にも聞き回った。私の頭はパフェでいっぱいになっていたのだ。まるで疲れが吹っ飛んでいくようだった。
 しかし、通行人は言った。
「パフェの材料、最近素材の輸入がなくなって希少になったからそう簡単には手に入らないよ。諦めな嬢ちゃん」
 千段ある階段から落ちて振り出しに戻ったような気持ちになった。
「そんな、ここまで来て」忘れることができていた体のどよみが一気に襲ってきた。
 どうしてこれほどまで、パフェに出会えないのか……まるで、何者かに邪魔されているようだ。とまで勝手に空想した。
 もう疲れきってしまった。でもまだパフェを諦められない。
 パフェが食べたい……何年、何十年だって待つから。お願い、私を邪魔してる人。
 私は目を瞑って、手を合わせた。その時だった。
 目を開けると、目の前に扉が現れた。これまた、奇妙な光を放つ扉だ。私は吸い込まれるようにノブを捻った。

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最後まで読んでくれてありがとう!

パフェっていいですよね。

なお、パフェが特別好きなわけではありません。

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