毎日書く!掌編小説第4回目。「リベンジチェンジ」

 セミの鳴き声がうるさすぎる夏の真ん中、私は青い空にのっかっている綿菓子を眺める。少し重いペダルを漕いで風を切った。

 学校に到着して、2-3の教室の席についた。

 早くきすぎたな、なんて退屈しながら騒がしい教室の中を見た。

「お前ほんと地味だよな!」

「やめてよ」そんな声が座席一つ挟んだ先で、群がる3人組から聞こえた。「そういうこと言うのはやめて」

「えーなんてー?!」

 あー正直関わるのはごめんだ。無視、無視。そうして視線を逸らそうとした。が、その目先には彼がいた。

「ちょ、何?いきなり!」

 気づけば、本来なら絶対に関わらない輪に入っていた。そのまま無理やり彼女の手を掴んで教室の外まで連れて行った。

 私の大好きな先輩が優しい私を認知できる距離にまで。

「ちょっと痛いよ、離して!」

 その子は私の手を払った。

「なんなの急に?助けたつもり?頼んでないのだけど?」

「え?」

「はあ、そこの先輩目当て?やめなよ、そういうのくだらないよ?」

「ちがっ」

 彼女は言うだけ一方的に言って去っていった。私は先輩の近くで取り残され、本当に地獄のようだった。さらに死ぬかと思ったのは、先輩がこのタイミングで話しかけてきたことだ。

「あ、い、今いいかな、この消しゴム、君のじゃない?」

 私がわざと先輩のカバンに入れた消しゴム……しかも先輩は空気が読めない。私が好きになった理由でもあるけど、どうして今なの?!

 先輩と初めて顔を合わせて話すのがこんなタイミングなんて、今日は人生最悪の日だ。でも、全部自業自得。私が消しゴムをカバンに入れて、偽善者ずらしたからバチが当たったんだ。

 先輩が好きなのに、私、絶対に嫌われたよね。

「あぁ、そうそうぅ、ありがとぉ……」

 事前に考えておいた会話が全部水の泡。私の声は乾燥しきっていた。

 私はそれからただ涙を堪えることしかできなかった。少しでも気が緩めば、教室でギャン泣きしてしまう。それだけは絶対にダメ。

 自宅に帰ると、ただ自室で枕を濡らし、何もかも忘れるために眠った。

 次の日、昨日のことを忘れることなどできるわけもなく、結局私は学校に行けなくなってしまった。あの時どうすれば良かったのか、もう一度考えなおすことにした。

 もう先輩のことを諦めるべき?そんなのは絶対にいやだ。心の底から誰かのために優しくなろう。下心丸出しの恥ずかしい私は捨てる。先輩に胸をはって私の気持ちを伝えられるようになるために。
 
 小さいことでいい、ちょっとの積み重ねで少しずつ、私は変わる。もうあんなのは絶対にいや。先輩には私の可愛いくて優しいところだけを見てほしいけど、仕方ないよね。これはリベンジだから。人が変わるのはきっととても大変なことだから。

「あの子、最近変よね。目立ちたいのかしら?」

 これぐらいのこと軽く乗り越えてみせるわ。

「あの子、放課後学校残って他クラスまでゴミ拾いしていたわ、変なの……」

 しかし、ある日のこと、先輩が私の前に現れ、言った。

※続ける!毎日投稿掌編小説!の投稿について、
LINEで先行して投稿していた掌編小説と回を合わせるため、4つ多く投稿しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?