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「一億年間ずっとあなたの妹でした。忘れてね」続編
こちらの作品は前日の続きになります。こちらを先に読むことでより一層面白く感じるでしょう!
第一章↓『失ったもの』
_____第二章 過ち______
肌に刺さるような痛みがする。きっと町中の電気がここに集まっていて、その電気が雨を分解し続けているからだろう。雨は重く、体が鉛のように感じた。
アタシはここで育った。タイムマシーンが発明されたこの街で。
この街に季節はないから、代わりにこう表現する。冷たくて、生暖かい濁った桃色、冬春とでも言ったような空気の匂い。とても懐かしい。
そして、あの日の復讐を果たすため、アタシは街を飛び出した。
忘れられるはずがない、あの日のことを……。そのためならアタシはなんだってする。最後の家族まで失いたくない。
毎回向かうのは、活気にあふれた緑がまだ少なからず残っている都市だ。ここは、ロボット工学に携わっていて、数少ない最先端を行っていた街だ。アタシの計画にはピッタリだと言える。
アタシはここでナノテクノロジーによるナノマシンの研究を進めた。
ナノマシンは極めて小さな機械のことで、これらの機械は原子や分子のサイズで構築され、微細な作業を行うことができる。アタシらはそのナノマシンであるものを開発しようとしていた。復讐だけが私の原動力だった。
そして、ついに完成する。名をサイバという。人の思考に反応し、自在に形を変える。無限の可能性を秘めていた。これを使えば、人の命だって完全に守ることができる。もう家族を失わなくて済む。そう思うと、足が少しだけ軽くなったように感じた。
絶対に許さない。準備は整った。
私は街に戻ると、しばらくしてたくさんの罪のない人を殺した。殺してしまった。こんなつもりはなかった。サイバは悪用されてしまったのだ。何もかも、全て甘かったんだ。
全てはあの日のため、復讐を果たすためだった。お兄ちゃんを助け出すためだった。でもどう足掻いても、サイバの悪用を止める事はできなかった。
無敵のサイバ軍団ができて。順調に殺戮が進んでいた。街は炎に包まれ、生身の人間は何の抵抗をすることもできずに死んでいった。サイバは人間にこう呼ばれた。「サイボーグ」
アタシの嫌いな言葉だ。思い出すたびに、心臓がきゅうと握られているように感じた。あの日を彷彿とさせるようだった。
お兄ちゃんはアタシを、いつもサイボーグの一方的な暴力から庇ってくれた。
これはずっと前の話だ。アタシはただ見ているだけ。心はズタズタに引き裂かれていくようだった。これぐらいなら、殴られた方がマシだと思った。だから、アタシはお兄ちゃんの前に出て、振り下ろされる太い腕を代わりに受けた。お兄ちゃんはひどく悲しんでいた。
でも、アタシはお兄ちゃんのために死ねた、だから少しだけ嬉しかった。
でも、すぐに後悔した。意識が遠のくに連れ、お兄ちゃんの体温が感じなくなっていく。
寂しい。ずっとお兄ちゃんに守られるのは辛かった。だけど、離れ離れになるのはもっと嫌。
最後はこんな言葉しか出なかった。
「アタシだって、役にたてるもん……」そこまで認めて欲しかった訳でもないのに。もう終わりだと思った。
しかし、アタシは死ななかった。お兄ちゃんはアタシを死なせないためにサイボーグ、機械人間にすると決めた。その頃は正直、嬉しかった。アタシに新たな命をくれた。
でも、街がこんなんになったのはお兄ちゃんがアタシを生かしてしまったから。アタシの過ちがこの街を狂わせた。あっ、お兄ちゃんのせいじゃないの。
ある日、アタシは目の当たりにしてしまったの。お兄ちゃんが貧乏だった私たちのために食べ物を盗んでしまったから、暗い路地裏で金持ちから半殺しにされているところを。そして、お兄ちゃんはどんどん弱っていって、誰よりも早く死んでしまった。アタシはお兄ちゃんを救いたかった。もう失うのは嫌、嫌だ。
だから過去にもどってサイバを作ったの。でも悪用されてしまった。
アタシは、結局たくさんの人を苦しめたアタシに復讐しにきたの。こんなどうしようもなくバカなアタシに。何度も何度もやり直した。そうして、私が生きた時間が一億年ぐらいになったとき、お兄ちゃんと一緒にいることを諦めることにした。変よね、最低だよね。私は自分のわがままで、たくさんの人を何回も殺した。そうなることを知っていたくせに。
最後に命をくれたのに、本当にごめん。
アタシは端折ることなく隅々だでお兄ちゃんに伝えた。アタシは息が薄い昔の自分に視線を向けた。そして、またお兄ちゃんに視線を戻した。
「最後の家族だから」私はため込んだわがままを最後に吐き出した。呂律は回っていなかったし、涙が滝のように溢れた。「お兄ちゃんは私のたった一人の家族なの!まだ一緒にいたいよお!」
機械人間になった私はもう普通の人間には戻れない。死ぬためには過去を変えるしかない。これしか、無敵のサイボーグを止める方法がない。
「お願い、アタシを生かさないで。お兄ちゃん。もう家族を失いたくないの。お願い、アタシを忘れて。忘れてよ」
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最後まで読んでくれてありがとう!
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