ベタ🐟を飼っていた思い出

むかしむかし、ベタを飼っていました。高校生くらいの時。その時の様々な事件を書き留めておく。

ベタとは、

コップでも飼えると言われている熱帯魚。見た目は金魚に似ていて、金魚よりもヒレが長くてスマートな感じ（私見）。色は赤とか青とか色々。私が飼っていたのは赤くてヒレが長い「トラディショナルベタ」という種類。名前は「ベタオ」。

小さい頃から、

お祭りに行くと必ず金魚を3〜5匹ほど釣って帰っていた（田舎なので釣れなくてもおまけでもらえる）。でもお祭りの金魚は弱々しく、大体１週間で全員死んでしまうということを繰り返していた。ある時、強い金魚が当たったのか、長めに生きた金魚がいた。だんだんと水槽を飾り付けたくなり、水草やポンプを揃え、ペットショップで他の小さな魚も1匹増やして楽しんでいた。けれども、その増やした小さな魚は1週間程でお別れした。飼って間もないある日、その小さな魚をじーっと見てワクワクしていると、その小さな魚のお腹のあたりにもっと小さな何かがうごめいていることに気がついた。ゴマくらい小さい。よく見ると白い蜘蛛のような形で、ザワザワと足のようなものがついて動いている。寄生虫だった。今でも思い出せるくらい、気持ち悪い光景だった。よってその小さな魚はペットショップに返却したため、早いお別れとなった。元々いた金魚もだいぶ大きくはなったが、1年程で死んじゃった。

そんなこんなで継続的に魚（主に金魚）を飼っていた私が実家で最後に飼った魚が、ベタオである。

何かをきっかけに、手軽に飼えて可愛いと話題になっていたベタを知って飼ってみることにした。魚を飼うことにはだいぶ慣れていて物品も結構揃っていたので、コップで飼えると言われているベタだが、よくある電子レンジ程のサイズの水槽で飼った。食べられる水草を入れてみたり（むしゃむしゃ食べて可愛い）、砂利を入れてお洒落な空間を目指したりした（洗う時に餌のカスが混ざって大変）。ポンプを洗うのが結構大変で、1週間も放っておくとポンプのフィルターは茶色いヌメヌメだらけになる。それは洗うか、定期的に新しいフィルターを買って変える必要があった。

世話は私自身も頑張っていたつもりだが、母が結構手伝ってくれた。

母は「あんまり生き物は好きじゃない」といいつつ、植物も動物もマメにお世話するタイプだし、祖母家の猫もなぜか母に寄っていく。母は嫌そうな顔をしながらも「めんどくさい」と言って寄ってきた猫をどかすこともなくそのままにする。また、私はいま実家を出て猫を飼っているのだが、実家に帰っている2日ほどは家を空けて猫も置いていった。実家から車で送ってもらっている最中、「猫、大丈夫かな。置いていってなんだけど死んでたらどうしよう、悲しすぎる。」と私が心配していると母は「それよりも”後始末”が大変だよ。」と淡々と言った。しかも続けて「ビニールに入れて閉じてさ、嫌だね。」と苦い顔で言った。けれども私が猫の写真を送ると「可愛い」と言ったり、旅行に行くときは猫の心配をしてくれる母なのであった。

母の話になってしまったけども、

ベタオはどんどん大きく成長していった。

コップにはもう到底入らないサイズにまで成長した。最終的にはiphoneⅩくらいのサイズになった。
私見では、魚を飼う上で一番大変な（面倒くさい）ことは「水槽の掃除」だと思っている。先に書いたポンプの掃除ももちろん大変だが、他にもある。そしてこの「水槽の掃除」の過程で、ベタオに様々な事件が起こったのである。


まず、一番多く起きた事件が、

ベタオの逃亡である。

水槽を掃除する時、ベタオを水槽とは別の容器に移す必要がある。身体が小さい時は、水槽を傾けて水を捨てながら最後に残った水と一緒にベタオを別の容器にそのまま注ぎ移す方法がある。また、水槽にコップを入れてベタオを直接すくって移す方法もある。しかし大きくなるとそうもいかない。まずコップには入らないので、コップよりも大きい容器に移すことになる。そうなると水槽から容器で直接すくうことは難しいので、網ですくう。しかし、大きくなるとパワーも増えるようで、網ですくって容器に移す間にベタオはパニックになり網から飛び出してしまう。だから網ですくったらすぐに手で覆いながら急いで容器にうつす。けれどもベタオのパニックはしばらくおさまらず暴れ狂っているため、容器からも飛び出してしまう。
飛び出したベタオは、水のない場所に行ってしまう。台所で作業しているため、シンクの中に落ちることがよくあった。水気はあるもののパニックのままピョコピョコと暴れ狂う魚を捕まえるのは大変で、でも早くしないと死んでしまうので必死で捕まえて水の中に戻す、ということが多々あった。時には排水溝にまで落ちてしまうことがあり、食べカスの溜まった排水溝で暴れていたベタオ。しかしシンクの中でも排水溝は水気が多いためかベタオの呼吸はやや保たれているように感じた（私見）。また、排水溝は狭く囲まれているため捕まえやすい。しかし食べカスがベタオにも私の手にも付着する。
そして、脱走で一番大変なのは、床に落ちた時である。身体が大きくなってくると飛び出す勢いも大きく、ピョーン！と台所を超えて床までダイブしてしまうことがあった。1度ではなく何度もあった。床は水気が全くないためベタオのパニックも酷くジタバタとして捕まえづらい。一刻を争う私の焦りもピークとなる。思い出してもハラハラする。大きく成長したとはいえ、やわらかな魚の全身を思い切り掴むわけにもいかずソフトに掴んで戻さなければならない。
なんとか捕まえて戻すが、この床へのダイブが原因でベタオの頭部には内出血ができた。赤黒くて丸っこい模様が頭頂部にあったベタオ。消えかけたと思うとまた脱走し、内出血がまたできた。母はそれを「脳出血」と呼んでいた。しかしベタオは掃除が終わって水槽に戻ると、何事もなかったかのように元気に泳ぎ回る日々だった。これがベタオの事件の1つ目である。

また別の事件は、水の入れ替えである。

熱帯魚とはいえ育て方は金魚と変わらずシンプルで、特別なことはせずともベタオは元気に育っていった。ある日、私はベタオにもっと特別で快適な環境を提供しようと、水道水ではなくミネラルウォーターがいいのではと考えた。そこで私は冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターを取り出し、水槽を掃除してからミネラルウォーターをそそぎ、ベタオを水槽に戻した。その瞬間、ベタオはふーっと気を失うように脱力した。私は慌ててベタオをすくい、別の容器に移した。すると数秒経ってベタオは復活した。
そこで気付いたことが、ミネラルウォーターがほぼ冷蔵庫内の温度のままだったことだ。ベタオは、急激な温度変化により気絶したと考えられた。そもそも熱帯魚のベタオに、本当に申し訳ないことをしたと反省し、普通の水道水に戻して、二度と同じあやまちは繰り返していない。

繰り返される脳出血や、冷えたミネラルウォーターによるショックを乗り越えながらも、ベタオは3年間生きた。ベタは寿命1〜2年と言われているが、ベタオはとても長生きした。

ベタオが死んだ日はあっけなかった。

これまた事件だった。ベタオが来て3年経ってベタオの住居環境をさらに発展させようと、ペットショップで水質改善薬のような物を買った。バクテリア、ミネラル、プランクトン……詳細は忘れたが魚が元気になる的な、水に混ぜて使う液体だった。それを入れた瞬間、ベタオは死んだ。すぐにベタオを別の容器で新しい水に移し替えたが、ベタオは復活しなかった。あっけなさすぎて言葉も出なかった。母は「何度も脳出血ができたのに3年もよく生きたよ。」と言っていた。

そして、ベタオは家の庭に埋めて供養した。それから何日か経って、

ふと埋まっているベタオが気になって掘ってみた。

ベタオの骨がそのまま綺麗に”　>゜)+++<　”という形で残っているのかなと思っていた。実際に掘ってみるとベタオはまだほとんど身が残っていたのだが、お腹のあたりに白くて小指の爪程のサイズの”何か”がうごめいていた。この世の者とは思えないくらいキモい見た目で、おそらく寄生虫だった。はらわたを喰らっている様子だった。かなり気持ち悪くてショックてすぐ埋めなおした。この光景も、今でも思い出すと気持ち悪いくらいの、ベタオの最後の事件となった。

このように、ベタオには色々と苦労をかけて申し訳なかった。ごめんねベタオ。でも平均寿命よりも生きてくれて、何より楽しませてくれて、私の魚に関する一番の思い出になっているよ。ありがとうベタオ。あれから魚は飼っていないし、たぶん飼わない。

ベタオとの思い出日記、おわり。つらつらと長い日記、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。