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3次以上の方程式の解き方のコツ(因数分解とそれ以外の方法)

3次以上の方程式は1次方程式や2次方程式、2元1次連立方程式などと違い「楽に解く」ということが難しいです。今回はそんな3次以上の方程式の解き方を解説します。因数分解が基本ですがそれ以外の解き方も"一応"存在します。


1. 因数分解を利用した解き方

まずは因数分解を利用した解き方です。おそらくほとんどの問題はこの方法のいずれかで解けると思います(それ以外では問題に何らかの誘導があるかと思います)。

(1) 公式を利用して因数分解する

これができれば一番楽です。この形の方程式は公式さえ暗記していれば一発で解くことができます。

$${例題:x^3+2=10  を解け。}$$

①移項して$${(文字式)=0}$$の形にする
$${\\x^3+2=0}$$
$${x^3+2-10=10-10}$$
$${x^3-8=0}$$

②左辺を公式を利用して因数分解する
$${\\x^3-8=0}$$
$${x^3-2^3=0}$$
$${a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)を利用すると、}$$
$${(x-2)(x^2+2x+4)=0}$$

③$${AB=0⇔A=0  or  B=0}$$を利用して解を求める
$${\\(x-2)(x^2+2x+4)=0}$$
$${x-2=0…(1)  または  x^2+2x+4=0…(2)}$$
$${(1)の解は、x=2}$$
$${(2)の解は、2次方程式の解の公式を利用すると、x=-1\pm\sqrt{3}i}$$
$${よって、x=2,-1\pm\sqrt{3}i}$$

(2) 共通因数を見つけて因数分解する

さて、ここからの因数分解はちょっと面倒です。3次以上には因数分解の公式がほとんどない($${ax^3+bx^2+cx+d}$$の形は$${(a\pm b)^3}$$しかない)ので、自分で共通因数を見つけてくくりだす必要があります。次の(3)で解説する因数定理などと合わせて利用すると便利です。

因数分解の共通因数の見つけ方などのコツについては下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。

$${例題:x^3-1=x^2-x  を解け。}$$

①移項して$${(文字式)=0}$$の形にする
$${\\x^3-1=x^2-x}$$
$${x^3-1-x^2+x=0}$$
$${x^3-x^2+x-1=0}$$

②共通因数を見つけて因数分解する
$${\\x^3-x^2+x-1=0}$$
$${(x^3-x^2)+(x-1)=0}$$
$${x^2(x-1)+(x-1)=0}$$
$${(x-1)が共通因数になっているから、}$$
$${(x^2+1)(x-1)=0}$$

③$${AB=0⇔A=0  or  B=0}$$を利用して解を求める
$${\\(x^2+1)(x-1)=0}$$
$${x^2+1=0…(1)  または  x-1=0…(2)}$$
$${(1)の解は、}$$
$${x^2+1=0}$$
$${x^2=-1}$$
$${x=\pm i}$$
$${(2)の解は、}$$
$${x-1=0}$$
$${x=1}$$
$${よって、x=1,\pm i}$$

(3) 因数定理と有理根定理を利用して因数を探す

(2)のような場合はまだ楽なほうで、実際はそう簡単に共通因数を見つけられる式は少ないです。そこで、因数定理と有理根定理を利用して因数の候補を見つける方法を紹介します。先に因数定理と有理根定理を見てみましょう。

【因数定理】
 
$${ある関数f(x)が(x-a)を因数に持つとき、f(a)=0}$$

つまり、ある関数$${f(x)}$$が$${(x-a)}$$(ただしaは定数)で割り切れるとき、$${a}$$を$${x}$$に代入すると$${0}$$になるということです。

【有理根定理】
 $${(整数係数多項式)=0  の形の方程式が有理数解  \dfrac{q}{p}  を持つとき、}$$
 $${pは最高次の係数の約数で、qは定数項の約数である。}$$

つまり、係数がすべて整数の式$${f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_1x+a_0}$$が$${(x-a)}$$を因数に持っているとき、$${a}$$の値は$${\pm\dfrac{(a_0の正の約数のどれか)}{(a_nの正の約数のどれか)}}$$の形をしているということです。

これらを総合すると、次のようなことが言えます。

$${係数がすべて整数である方程式  f(x)=0  に\\ある定数\alphaを代入して等式が成立しているとき、\\f(x)は(x-\alpha)で割り切ることができる。\\また、その\alphaは\pm\dfrac{(定数項の正の約数)}{(最高次の係数の正の約数)}の\\有理数の形をしており、その形をした数をすべて書き出して\\f(x)に代入してみることで\alphaを求めることができる。}$$

$${例題:x(x^2+6x-1)=30  を解け。}$$

①式を展開・整理して$${(整数係数多項式)=0}$$の形にする
$${\\x(x^2+6x-1)=30}$$
$${x^3+6x^2-x=30}$$
$${x^3+6x^2-x-30=0}$$

②$${\pm\dfrac{(定数項の正の約数)}{(最高次の係数の正の約数)}}$$をすべて書き出す
$${\\x^3+6x^2-x-30=0}$$
$${最高次(x^3)の係数は1、定数項は-30だから、}$$
$${\pm\dfrac{(30の正の約数)}{(1の正の約数)}をすべて書き出せばよい。}$$
$${書き出すと、\pm1,\pm2,\pm3,\pm5,\pm6,\pm10,\pm15,\pm30となる。}$$

③書き出した数をxに代入して0になるものを見つけ、因数を特定する
$${\\+1を代入→1^3+6\cdot1^2-1-30=-24  …\times}$$
$${\\-1を代入→(-1)^3+6\cdot(-1)^2-(-1)-30=-24  …\times}$$
$${\\+2を代入→2^3+6\cdot2^2-2-30=0  …〇}$$
$${よって、x^3+6x^2-x-30は(x-2)を因数に持つことが分かった。}$$

④左辺の式を因数で割って因数分解する
$${\\x^3+6x^2-x-30をx-2で筆算を使って割ると、x^2+8x+15}$$
$${よって、x^3+6x^2-x-30=(x-2)(x^2+8x+15)}$$

⑤因数分解後の方程式を解く
$${\\x^3+6x^2-x-30=(x-2)(x^2+8x+15)だから、}$$
$${x^3+6x^2-x-30=0より、}$$
$${(x-2)(x^2+8x+15)=0}$$
$${ここで、左辺をさらに検討してみると、}$$
$${(x-2)(x+3)(x+5)=0  と因数分解できる。}$$
$${よって、x=2,-3,-5}$$

2. 因数分解以外の解き方①「解の公式」

さて、ここからは最終手段です。大抵の場合は問題の誘導などに従ったり、上記の因数を見つける手順を実行して因数分解したりできるはずです(というかそうじゃないとほぼ誰にも解けない問題になる)。ここでは3次方程式、4次方程式の「解の公式」を紹介します。(5次以上は解の公式が「存在しない」ということが証明されています。)

(1) 3次方程式の「解の公式」(カルダノの公式)

実は3次方程式にも解の公式があります。次の(2)で説明しますが4次方程式にも解の公式があります(5次以上は「解の公式が存在しない」ことが証明されています)。まずは「カルダノの公式」と呼ばれるその解の公式を見てみましょう。

$${ax^3+bx^2+cx+d=0   (a\ne0)   の解は、}$$
$${x=-(\dfrac{b}{3a}+\sqrt[3]{A}+\sqrt[3]{B}),-(\dfrac{b}{3a}+\omega\sqrt[3]{A}+\omega^2\sqrt[3]{B}),-(\dfrac{b}{3a}+\omega^2\sqrt[3]{A}+\omega\sqrt[3]{B})}$$
$${ここで、}$$
$${A=\dfrac{3\sqrt{3}q+\sqrt{27q^2+4p^3}}{6\sqrt{3}},B=\dfrac{3\sqrt{3}q-\sqrt{27q^2+4p^3}}{6\sqrt{3}},\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}}$$
$${また、}$$
$${p=\dfrac{-b^2+3ac}{3a^2},q=\dfrac{2b^3-9abc+27a^2d}{27a^3}}$$

これは2次方程式の解の公式とはだいぶ違う複雑な式ですが、導出は2次方程式の解の公式の導出(平方完成)と似ています(これを書くと記事が1つ分できるのでここでは省略します。そのうち書くと思います)。この公式の発表のストーリーは一部の人間(数学好きの人)では結構有名な話で、カルダノが事実上「パクった」ということになっていて本当の発見者は公式に名前が残らなかったというなんとも皮肉なものです。正直これを暗記するよりは他の教科の暗記項目(英単語など)を暗記したほうが成績は上がると思います。一応「解の公式」なので代入すれば解は出ると思います(自分はやったことないです)

(2) 4次方程式の「解の公式」(フェラーリの公式)

4次方程式にも「解の公式」は一応ありますが、かなり複雑です。一応書きますが、これを使って方程式を解く人はどのくらいいるのだろうか…?と疑問に思うくらい複雑です。(書くだけで大変、間違ってたらごめんなさい)

$${ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0   (a\ne0)  の解は、}$$
$${x=-\dfrac{b}{4a}-\dfrac{\sqrt{B}}{2}-\dfrac{\sqrt{D}}{2},-\dfrac{b}{4a}+\dfrac{\sqrt{B}}{2}-\dfrac{\sqrt{D}}{2},\\ -\dfrac{b}{4a}-\dfrac{\sqrt{A}}{2}-\dfrac{\sqrt{D}}{2},-\dfrac{b}{4a}+\dfrac{\sqrt{A}}{2}-\dfrac{\sqrt{D}}{2}}$$
$${ただし、}$$
$${A=\dfrac{C}{4\sqrt{D}}+\dfrac{b^2}{2a^2}-\dfrac{\sqrt[3]{2}E}{3\sqrt[3]{H}a}-\dfrac{\sqrt[3]{H}}{3\sqrt[3]{2}a}-\dfrac{4c}{3a}}$$
$${B=-\dfrac{C}{4\sqrt{D}}+\dfrac{b^2}{2a^2}-\dfrac{\sqrt[3]{2}E}{3\sqrt[3]{H}a}-\dfrac{\sqrt[3]{H}}{3\sqrt[3]{2}a}-\dfrac{4c}{3a}}$$
$${C=-\dfrac{b^3}{a^3}+\dfrac{4bc}{a^2}-\dfrac{8d}{a}}$$
$${D=\dfrac{b^2}{4a^2}+\dfrac{\sqrt[3]{2}E}{3\sqrt[3]{H}a}+\dfrac{\sqrt[3]{H}}{3\sqrt[3]{2}a}-\dfrac{2c}{3a}}$$
$${E=c^2-3bd+12ae}$$
$${F=2c^3-9bcd+27b^2e+27ad^2-72ace}$$
$${G=-4E^3+F^2}$$
$${H=F+\sqrt{G}}$$

↓入力でブラウザタブの縦をまるまる占領されるのは初めて…↓

LaTeX入力の「フェラーリの公式」の全貌。
この量を表示するとはLaTexはすごいと改めて感じた。(やばすぎる)
*ディスプレイ形式にしない理由は①修正が楽(分かりやすい)②左揃えにするため

3. 因数分解以外の解き方②「収束の利用」

ここからの方法を利用する機会はほぼないと思います。ここからの方法は主にコンピューターなどで使われる方法であり、人間がやるには時間がかかりすぎるからです(解の公式も利用する機会はほぼないと思います)。5次以上の方程式は解の公式が存在しないので、因数分解もしくはこれから紹介するような方法でしか解くことができない(はず)です。

ここからの方法は解を確実に「特定する」のではなく、あくまで「収束」を利用したものなので因数分解や解の公式よりは不確実になってしまいます。また、あくまで「最終的には解に収束する」なので収束までに時間がかかる場合もあります(しかし4次では場合によっては公式より早いかも)

(1) ニュートン法

まずは比較的収束が早いといわれているニュートン法です。一応複素数の解にも対応しているようですが、だいぶ面倒だと思います。また、導関数を使うので極値がある場合は(場合によるが)計算途中で分母が0になってしまったりなどの欠点はあります。以下はそのやり方です。

①初期値を設定する
まずは初期値$${x_0}$$を設定します。この値は何でもいいですが、極値などからある程度解の範囲が分かる場合はできるだけ近づけておくと収束が早くて楽だと思います。また、解が複数個ある場合はこの方法だと基本一番近い値に収束するので何回かこの方法を繰り返さなければなりません。

②更新式に代入
次は$${x_0}$$を下の式に代入し、新たな近似解を求めます。
$${f(x_n)}$$は左辺に$${x_n}$$を代入した値で、$${f'(x_n)}$$は$${f(x)}$$の導関数に$${x_n}$$を代入した時の値です。

$$
x_{n+1}=x_n-\frac{f(x_n)}{f'(x_n)}
$$

③②を繰り返す
②に$${x_0}$$を代入した時の値$${x_1}$$をもう一度代入し、出てきた値$${x_2}$$をもう一度代入し、…というように②を繰り返していきます。これは$${x_{n+1}-x_n}$$の値が十分小さくなるまで行います。最後の値が解に収束しますが、実際は$${\infty}$$回繰り返さないと正確な値にはならないので、あくまで近似値です。

こちらは収束が早いので、どこまで正確に出せるかを確認するために2次方程式をこの方法で解いてみましょう。

$${例題:x^2-2=0  を解け。}$$

これはすぐに$${\pm\sqrt{2}}$$と暗算でも解けますが、あえてニュートン法で解いてみます。
まず、$${f(x)=x^2-2}$$で、$${f'(x)=2x}$$ですね。これを踏まえて、先ほどの手順に則って解いてみましょう。

①初期値の設定
ここでは$${x_0=1}$$を設定します。

②更新式に代入
$${x_{n+1}=x_n-\dfrac{f(x_n)}{f'(x_n)}}$$より、
この方程式の場合は$${x_{n+1}=x_n-\dfrac{x_n^2-2}{2x_n}}$$です。
ここに、$${x_0=1}$$を代入してみると、
$${x_1=x_0-\dfrac{x_0^2-2}{2x_0}=1-\dfrac{1^2-2}{2\times1}=\dfrac{3}{2}}$$

③②を繰り返す
$${x_1=\dfrac{3}{2}}$$を代入して…を繰り返すと次のようになります。
$${x_2=\dfrac{17}{12}\approx1.4167…}$$
$${x_3=\dfrac{577}{408}\approx1.4142156…}$$
$${x_4=\dfrac{665857}{470832}\approx1.4142135623746899…}$$

$${\sqrt{2}\approx1.41421356237309504…}$$なので、$${x_4}$$の段階で小数点以下11桁まで求められるのはすごいですね。
同じように負の値から始めると、きっちり$${-\sqrt{2}}$$に収束します。
また、複素数の解は、(今回の場合はありませんが)$${x_0}$$を複素数にすると収束します。

(2) バイセクション法

次にバイセクション法です。これはニュートン法のような複雑なことはせず、中学生でも座標平面が想像できれば理解できるやり方だと思います。ただし収束は遅く、解の近似値に至るまではとても時間がかかります。
注:このやり方は関数が連続である(途中で途切れていない)前提です。

①初期値$${a,b}$$を設定する
まずは初期値$${a,b}$$を設定します。$${x=a}$$から$${x=b}$$の範囲で解があると思われる範囲にしてください。(ただし、その範囲に解が偶数個だとうまくいきません)

②$${ab}$$間に解があるか確認する
まずは$${ab}$$間に解があるかを確認します。
これは簡単で、$${f(a)}$$と$${f(b)}$$が異符号ならば(※)解が存在(正確には奇数個存在)、同符号ならば解がないか偶数個存在するということです。解がなかった場合は初期値設定を違う値にしてください。(次の手順で解が出てきた場合はそのまま続行して大丈夫です)
※解とはx軸とグラフが交わる地点のことなので、グラフがx軸をまたいでいれば解が存在します。グラフがx軸をまたいでいるということは、またぐ前とまたぐ後では符号が異なるということです。

③$${a,b}$$の中点$${c}$$をとる
次に$${a,b}$$の中点$${c}$$を求めます。$${c=\dfrac{a+b}{2}}$$です。

④$${ac,cb}$$間それぞれに解があるかを確認する
次に$${ac,cb}$$間それぞれに解があるかを②と同じ方法で確認します。

⑤②~④を繰り返す
同じように中点をとって、その間に解があるかを確認し、ない場合はそちらの計算をやめ、…を繰り返します。

考えればすぐにわかりますが「中点をとる」作業の繰り返しなのでニュートン法のように4回目でかなり正確に…などというわけにはいくわけもなく、かなり収束が遅いです。

まとめ

3次以上の方程式は、2次方程式の$${x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}}$$のようにすぐに解を求める方法はほぼないと言っていいと思います。基本的には因数分解以外が問題に出ることはないと思いますが、それ以外の方法も特に知っておいて損はないことかと思います(無理に覚える必要はないです)。最後まで見ていただきありがとうございました!

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