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ディグ・モードvol.87「ユル イエ(YUUL YIE)」

ユル イエ(YUUL YIE)は、韓国人デザイナーのスンユル・イエ(Sunyuul Yie)が設立したソウル拠点のシューズブランド。もともとウィメンズウェアを学んでいたが、靴工場でヒールを叩く音や革の匂いに惚れ込んで以来、彼女はシューズに夢中だ。アイデアの多くは彫刻から生まれており、シーズンごとに新しい領域を開拓し、足もとの彫刻を形作っている。


靴工場でヒールを叩く音に惚れ込む

2017年秋冬コレクション(Photography by Kim Hee June)

子どもの頃、バービー人形のドレス作りや人形遊びをしていたスンユルにとって、それがファッションにまつわる最初の思い出だ。その後、彼女はエスモードソウル校に進学してウィメンズウェアのファッションデザインを学び、フランスの婦人服ブランドであるヴァネッサ ブリューノ(VANESSA BRUNO)でインターンを経験した。

スンユルはウィメンズウェアのデザイナーとしてのキャリアを追求していたが、2009年にシューズブランドのデザインを手伝って以来、靴のデザインに夢中になった。靴工場でヒールを叩く音に惚れ込み、革の匂いさえも魅力的に感じたと彼女は説明する。

2021年春夏コレクション(Courtesy of YUUL YIE)

「靴工場を訪れて、靴を作るプロセスに魅了されました。服を作っているときでも、その感覚を感じたことはありませんでした。ヒールを叩く音、革を切る匂い…鳥肌が立ちました」とスンユルはソウル東部聖水洞にあるブランドのショールームで『Korea Herald』に語っている。

しばらく友人と一緒に仕事した後、彼女はソロ活動をスタートし、2010年に自身のブランドMA VIE EN ROSEを立ち上げた。その数年後、ブランド名をユル イエに変更した。

アイデアは彫刻から誕生

2021年秋冬コレクション(Courtesy of YUUL YIE)

スンユルの美学を3つの言葉で表すと、「冒険的」「カラフル」「彫刻的」だ。アイデアの大半は、古典または現代のアーティストや彫刻から生まれており、ドイツ系フランス人の彫刻家ジャン・アルプ(Jean Arp)の作品にハマっている彼女は、彼のアートを調べ、研究し、鑑賞することが作業後のお気に入りの過ごし方だと説明する。

スンユルは自身を完璧主義者だと表現しており、急いでデザインを完成させることは決してしない。プロジェクトを適切に開始して完了することの重要性を認識しているデザイナーにとって、自身の美学や作品に妥協しないことがファッションに関して学んだ最大の教訓だ。

「今日の業界の速いペースに流されるのは簡単ですが、私はこれに追いつくために自分の美学や製品に決して妥協しないことを学びました。このことを念頭に置いて、自分の作品の最終的な結果に徐々に満足してきました」とスンユルは『Forbes』で語っている。

韓国の消費者に向けたレーベル設立

2021年春夏コレクション(Courtesy of YUUL YIE)

ユル イエはハーヴェイ ニコルズ(Harvey Nichols)、ノードストローム(Nordstrom)、レーン クロフォード(Lane Crawford)、ディエチ コルソ コモ(10 Corso Como)など世界中のセレクト ショップで販売されており、その売上の大部分は海外が占めている。

2015年、スンユルは地元である韓国のオンライン市場をターゲットとした2番目のレーベルYY BY YUUL YIEをローンチした。ユル イエのアイデンティティを継承しながらも、約20万ウォンとより手頃な価格になっており、年2回のコレクションを通じて発表される。

デザイナーは、ブランドのシグネチャーであるY字型のヒールを備えたシンプルなアンクルブーツを通常よりも低価格で発表した後に、セカンド レーベルを立ち上げた。その反応は驚異的で、「初めて地元の消費者に受け入れられたことは大きな意味がありました」と彼女は『Korea Herald』で語っている。

靴のデザインは彫刻の形成と同じ

スンユル・イエ(Courtesy of YUUL YIE)

ソウルの手作り靴製造の中心地である聖水洞に拠点を置いているスンユルは、地元の靴製造現場を高く評価している。聖水地域の生産者は購入者のニーズにすぐに対応でき、ブランドが工場と長年築き上げてきたシステムは他所では再構築できないと彼女は説明する。

ジュエリーとバッグも展開するデザイナーにとって、アクセサリーよりサイズが膨大な靴作りは大変だ。22~29センチの靴を製造し、ひとつのデザインで3つの異なるサイズのヒールを必要とする。しかし、それこそがスンユルが夢中になっている理由だ。彼女にとって靴のデザインは足元での三次元の作業であり、毎シーズン新しい領域を開拓し、彫刻を形作っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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