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ふらり旅 #2ー1

朝の6時、長らく鳴っていなかった私の目覚ましが耳元で爽やかな音を奏でた。

眠い目を無理やり開いて、キンと冷えた水で顔を洗う。

一気に目が冷めた。

足元からすうっと冷たい空気が流れて肩が一瞬だけ上がった。


7時の電車

スーツ姿の社会人と、眠いのを我慢しながら片手にテキストを開く大学生。

イヤホンで音楽を聞き続ける高校生に混じって、旅行バックを手にした私は通勤ラッシュ時の車内ではさぞ邪魔だっただろう。着いた駅は仕事先に急ぐサラリーマンでどこもかしこもせかせかとしていた。

9時30分

京都駅に立った私は、長浜駅を目指して湖西線に乗る。

ゆったりと旅を進める為にもあえて、遠回りの電車を選択した。

一定の音を立てて走り続ける電車の車窓に広大な琵琶湖が映り、思わず

「うわあ」

と声を漏らした。

数週間前に見たばかりの琵琶湖は今日も美しくそこにあった。

凪いだ琵琶湖の中を観光船が竹生島目指して、波を立てて進む。

穏やかだった琵琶湖が急に目を覚まして揺れる。

船が作る泡沫は湖底まで続いているようで、見つめると連れて行かれそうな気がした。

琵琶湖も人の心も凪いでいるのに、時折他者によって波を立てられたり、突風が吹いたり荒れるときがくる。

強い力で揺さぶられて、だんだん遠ざかって、また凪が来る。

荒れるのは一瞬、少し経てばまた凪ぐのだ。

荒れた心も、時間を置けば凪ぐ時が来る。

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