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ふらり旅#1−3

日本地図に大きく空いている穴。

真ん中のあたりに空いている穴。

そんな言い草をしたら滋賀県の方々の怒りを買うだろうか。

ほとんど目にしたことがなかった琵琶湖について、私は池と大差がないくらいに考えていた。 
大きな池なんだろうと思っていたけれど、実物の湖はもっと素晴らしいものだった。湖国とはこういう場所なのだと。向こう側に霞んだ陸地が見える様子に、私はなんとなく瀬戸内海を思い浮かべた。

この美しい湖を満喫しようと、友人と一緒に「琵琶湖テラス」に向かうことにした。しかしそんな私たちは、週末を楽しむカップルや家族連れ、ツアーできた人々の中に紛れきれなかった。前はカップル、後ろもカップル、左は家族連れ、右はカップル、右斜め後ろは家族連れ、左前方にはツアー客、その向こうはカップル。

認めざるを得ない。

我々は浮いていた。

テラスにあがるためのゴンドラに友人と並んだが、ぎゅうぎゅうに集まる人の中で約1時間、我々が言葉を交わしていた時間は合計で10分に満たなかったように思う。ほとんどの時間後ろから聞こえてくるカップルの、ふわふわした、キラキラした、甘酸っぱさが伝わる会話に耳を傾けていた。

羨ましくて、悲しくなった。

しかし、そんな気持ちもかき消すくらい綺麗な景色をみることができた。ゴンドラからみる紅葉は、もうすぐ見頃というだけあって朱色と黄金色があちらこちらに広がっていた。頂上からみる琵琶湖は、一段と凛として美しかった。

しかし、それ以上に気になったのは人の数である。どこを見ても人、人、人。

我々は早々に下山し、現実世界へ早めに戻ることにした。

敦賀の駅で、駅員さんに目的地を告げて乗車券を発券してもらう。冷たくなった空気の中、夕暮れ時の駅のホームに立って今日が終わる寂しさに包まれていた。

今日、何人の人が連休の終わりを嘆いているのだろうか。連休を苦痛だと感じた人もいたかもしれない。そもそも連休などなかった人も沢山居たことだろう。

私がこの連休で出会った人たちの中で、私の顔を覚えている人は何人いるだろうか。

私は誰かを覚えているだろうか。

最後に会話をした駅員さんの記憶には残っているだろうか。

新しい人を見かける、知らない人と会話をするチャンスがある、新しい場所を訪れることができる。そんなことができる休日が、私はいつも待ち遠しい。

次に敦賀駅に来れるのは、一体いつになるだろうか。

その時はどんな人に会えるだろうか。



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