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安やかなお顔は、残された人への最期の愛。

職業柄、たくさんの方の人生の旅立ちを見送る。

人の生死と深く関わることのない仕事をしている方に「(人の死って)慣れるんでしょ?」なんて言葉を何度か言われたことがある。

落ち着いて対処している姿を傍から見ると、慣れているように見えるのかもしれないけど・・・慣れるわけがない。


新卒の頃、亡くなった患者さんを初めて目の当たりにした時は、患者さんの前で泣いてしまった。

目の前でどんどん冷たくなっていく患者さんを見て「死ぬ」というコトを全身で理解した。

ただ、悲しかった。

でも、それから私は、少なくとも患者さんや家族の前では泣いていない。


それは「慣れ」とは全く違う。

たくさんの出会いや別れの中で、「死」が悲しい「だけ」じゃないことを知った。

「死」が「生」と同じくらい尊いことを知ったのだ。

だから、悲しんだり、泣いたりしない。

患者さんの「人生の最期の瞬間」に丁寧に向き合う。

心を込めてお見送りする。


みんな、最期は安らかな表情をしている。

今までは、これまでの苦しみやしがらみから解放されたから安らかな表情をしているんだと思っていた。

でも、ケアをする私の心が愛と感謝でいっぱいになっていることに気付き、思った。


きっと、このお顔は残された人への患者さんからの最期の「愛」だ。


家族や友人だけじゃない。

私たち医療従事者も、安らかな表情に救われている。

あの愛に溢れた時間は患者さんのおかげだった。


私に最期のケアをさせてくれて、心からありがとう。

これからも愛を込めて。

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