19歳
そこは知らない白色の天井
拘束された両腕 遠目に見える鈍色の輪
「あなたはわるいことをしたからここにいれられた」
死に損ないを見下ろす目
まるで悪い夢
喉が枯れて届かない声 代わりに鉛筆を握ったが
突き立てられた二本の針が重たくて ミミズ線が走るばかり
心電図の不協和音 糞尿垂らして眠れない夜
ナースコールで人を呼びつけて ごめんなさい、とべそをかく
ひとりじゃなにもできない まるで赤ん坊
外と通じる窓は唯一つ およそ10メートル先
見える光はいつも白く濁っていた 卓に並べられた重湯とよく似ている
重力がこんなにも重たいだなんて知らなかった
ようやく自分の足で歩けたのは 目が覚めてから七日目のことだった
ひたひたと リノリウムの床をつたって窓辺に立ってみたら
外では木枯らしが吹いているらしい
どんよりとした灰色の下で 裸ん坊になった木がぽつんと立っている
ねえフレディ
ぼくやっといま いのちの準備ができた
どうか 今さらだよ、なんて言わないで
笑って手を振る人たちに送り出されて
手を振り返して扉を開けた
もう二度と ここをくぐることがありませんように
十五日ぶりの空の下は 目を瞬くほど眩しかった
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