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あいちトリエンナーレ2019レポ@豊田会場

こんにちは、かどかわまほこです。
随分時間が経ってしまいましたが、2019年9月28日(土)に行ってきた「あいちトリエンナーレ2019」の豊田会場のレポを書きたいと思います。
状況がまたかなり変わってきているので、私が行った当時と展示内容が変わっているものがあるかもしれませんがご了承下さい。
行った当時の私の感想をつらつらを書いています。

これから行く人は序盤だけ読んでください。
読み進むと作品のネタバレになってしまうので、ネタバレしたくない人は見に行ってから読んでくれると嬉しいです。
それではどうぞ。

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名鉄を使って豊田市駅へ。

名古屋鉄道(名鉄)を利用して豊田市駅へ向かった。
普段、豊田市へ行くときは愛知県の実家の車を使っていたから、電車で行くのは初めてのことだ。
ちなみに豊田市駅〜名古屋駅間は電車だとおよそ1時間くらいのようだ。
のんびりとした田園風景を眺めているうちに豊田市駅へ到着。AM10:00を少し回っていた。

まずはwebであらかじめ購入手続きをしておいたフリーパスの発券をするために、豊田市駅地下インフォメーションへ向かう。
改札を出てすぐのところにインフォメーションはあった。
豊田市は今あいトリに加え、ラグビーW杯の会場の1つでもある(豊田スタジアム)。
この日はちょうどラグビーW杯の日本×アイルランド戦の日。スタジアムの近くにパブリックビューイングなんかもある関係で、駅にはラグビーW杯スタッフとあいトリスタッフが散らばっていた。

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まずはインフォメーションに行こう。

インフォメーションはまだ混雑はなく、QRコードを提示してチケットを発券してもらった。
フリーパスは大学生で¥2,300。会期中各会場を何度でも巡ることができる。1日以上かけて見る場合はこちらの方がおトクとのこと。
フリーパス特典として「あいトリオリジナル手ぬぐい」も付いてくる。
ちなみに1DAYパスは一日限りで大学生¥1,200。各会場を何度でも鑑賞可能。

豊田市駅地下インフォメーションでは、歩いて豊田会場を巡るオススメルート付きガイドマップを貰うことができる
これが豊田会場を見て回るに当たってものすごく役に立った。
初めて歩く街、かつ複数会場に分かれている展示を見落とすことなく巡るには、このガイドマップの順に進むのが効率的
写真付きでルート解説されているので、グーグルマップに頼らなくて良いくらいだった。ありがたや。

※この先、作品の内容に言及している記述があります。作品のネタバレがあるのでご注意ください。

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豊田市駅地下を回る。

まずは豊田市駅地下から見ていく。
印象に残ったのはトモトシさんの作品《Dig Your Dreams.》
豊田市と深い関係にある自動車会社トヨタとの関係性について、市民との協働プロジェクトを通して言及している映像作品。
私は愛知県民として17年間住んでいたけれど、豊田市が1958年まで豊田市ではなく挙母(ころも)市という名前だったことを初めて知って衝撃を受けた。全然知らなかった。
エンブレムを掘り出す映像が流れている時に、鑑賞者の1人が「どうせなら昔のトヨタのエンブレムにすれば良かったのにねえ」と言っているのが聞こえてきたのが少し面白かった。

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豊田市街を巡る。

ガイドマップに従ってテクテクと歩いて豊田市街を巡った。
交通機関の利用がなくても、どの会場へも徒歩で接続できる距離だった。それぞれ10〜15分くらい歩いたかな。

豊田会場はいたって平穏そのものだった。
デモをやっているとか反対勢力が声を上げいてるとかそんな様子は全くなく、メディアで報じられていたようなことが嘘みたいに静かだ。
高校生から高齢者の方まで、幅広い年齢層のボランティアスタッフと思わしき人たちも、各会場で丁寧に対応をして下さっていたのが印象的だった。色んな地元の人があいトリの運営に携わっているんだなあというのが分かった。
笑顔で話しかけてきてくれたスタッフの子は高校生だった。夏休みからボランティアスタッフとして会場の運営を行なってきたのだそう。
こういう人たちが、今回の一連のことで傷つけられたりしていたら嫌だな、と強く感じた。

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喜楽亭《旅館アポリア》ホー・ツーニェン

印象的だった作品は、豊田市街にあるホー・ツーニェン作《旅館アポリア》
喜楽亭とは、豊田市神明町で明治時代後期から続いた元料理旅館で、平成25年に国の登録有形文化財にも登録されているらしい。
昔ながらの広い玄関には靴がびっしり並んでいて、入場者がかなり多いことが一目で分かった。

この作品の凄いところは喜楽亭という場所のもつ歴史と建築の構造を存分に活かした作品の構築。
ここでしか出来ない作品を作っていて、だからこそ見る意味が強かったと感じたし、地域で開催される芸術祭の意味や意義があるんじゃないかと感じた。
私にはこういう作品は作れないからその作品構造に圧倒された。

《旅館アポリア》は、かつてここにあった第二次世界大戦時の歴史を掘り起し、映画のイメージと重ね合わせながら鑑賞者をその当時へと誘って行く。
建物に施された仕掛けは、当時の人々の心の揺れ、不穏な空気、地響き、海鳴り、猛スピードで空を切り裂く航空機の窓ガラスの震えを想起させる。
文学・芸術・映画で起こっていたプロパガンダと、敗戦後にまで続く著作者たちの心の揺れ、無かったことにしたい・忘れてしまいたいというような気持ちの見え隠れが淡々と、しかし容赦なく暴かれて行く。

喜楽亭を出た頃には、時空を超えてしまった心を取り戻すのに時間がかかり、少々呆けてしまった。

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豊田市民ギャラリー《未来を開封する》アンナ・ヴィット

次の会場まで歩いて向かえたことが私にとって幸運だった。
歩いているうちに心と感覚を取り戻し、アンナ・ヴィットの作品《未来を開封する》へたどり着く。
広々とした空間には巨大な画面が3つ設置されている。

1つの映像内では市民と思わしき人たちがディスカッションを行なっている。
どうやら愛知県で盛んな工業や農水産業に従事している人々のようだった。

もう一方の画面では、市民ひとりひとりが、何か物を組み立てたり、ベルトコンベアに流すような動作を行なっている。
そこに実際の物はないが、まるであるかのように錯覚するほど、動きは一定のリズムを保っていた。
話の内容と、産業ロボットが自動車組み立てを行なっている工場の映像が同時に流れていたことから、おそらく(自動車などの)工業製品製造工場で、組み立てを行なったり、製品の検査を行なっている動作だと想像された。
彼らが日々行なっている仕事の動作は、物がなくとも再現できるほどにその人の身体に染み付いているんだなあと感心した。

ディスカッションの話題は仕事の機械化やAIの発達、今までの労働とこれからの労働と人の生き方、などだった。
彼ら曰く、現在多くの場面で実際に機械と共に仕事をしている状況があり、「もはやこのパートに人間が必要なのか?」と思うことがあること、
「原始的なやり方に立ち戻って、米の生産を機械無しで人の手で行ってみたが、想像以上に自分たちが機械の恩恵を受けていることを実感した。機械なしにやることは困難である」と感じたこと、
また『この先の未来、AIにほとんどの仕事が奪われる』と言われている中で、労働に対してどのように考えているのか、生きがいなのか、生活のために仕方なく働いしているのかについて話し合ったり、労働せずとも生きていけるとしたら何をしたいか、について話し合ったりしていた。
発言の中で一番驚かされたのは、妻が保育士をしているという男性の「現代の幼児教育の現場では『AIに負けない人を育てよう(機械に出来ない人間の能力を伸ばしていこう)』という方針が打ち出されているらしい」という発言だった。

画面はディスカッションと共にどんどんと展開していき、先ほどまで再現されていた工場での動きが組み合わさり1つのコンテンポラリーダンスのようなものが完成していた。
また、全員で作業着を着て、それを協力し合ってお互いにハサミを入れて作業着を脱いだり(労働からの解放を示唆しているのか?)、
テクニックやスキルが殆どない楽器を触って全員でセッションし音楽を作る、などをしていた。
最近話題になっている『労働が奪われる』という話について、製造業が盛んな愛知県の特性を切り口に作品が構築されており、とても興味深いものだった。
愛知県民のうち、本当にびっくりするくらい多くの人が製造業に携わっているのだが、そんな愛知県民が見たら、色々考えられるものだったんじゃないかなあ、と思った。

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豊田市美術館を巡る。

最後に歩いて豊田市美術館へとたどり着いた。
ジャーナリズム的な作品が多いという印象をうけた。
かつ、豊田市美術館でようやく初めて、大々的に今回の一連の騒動に対して抵抗の意を表するために展示内容を変更した作品に出会うこととなった。
レニエール・レイバ・ノボの《革命は抽象である》。床に設置された巨大な立体作品は真っ黒な布に包まれ、壁に掛けられた平面作品は新聞紙で覆われていた。

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近づいてよく見てみると、全ての新聞紙において、必ずあいトリについて掲載されている紙面が使用されていたのが面白かった。
こういう作品だ、と言ってしまえば成立しているような気さえした。
記事を読み込んでいる人の姿もちらほらと見受けられた。

「あっ、いいな」と思ったのは豊田市美術館最後の作品、スタジオ・ドリフト《Shylight》
天井から吊るされた光が上下運動しているのを、鑑賞者は床に寝転がって鑑賞する。
作品もまあ、可愛かったんだけど、どちらかというと、円形に寝転がっている人の姿の方が良いなと思った。
知らない人同士が隣り合う形で美術館の床に寝転がって、1つの作品を一緒に鑑賞している姿が、なんだか美しく感じた。

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【おわり】あいちトリエンナーレ2019豊田会場を巡って

先述したように、豊田会場は今回の一連の騒動の気配をあまり感じさせなかった。
多少の変更を伴っている作品がいくつかあって、でも本当にそのくらいだ。
のんびりとした街歩きと、芸術鑑賞とをゆっくり楽しむことが出来た。

余談だけれど、美術館を出た後は母に呼ばれてラグビーW杯のパブリックビューイングを見に行った。
公式のファンゾーンだったので、パブリックビューイングの会場自体もすごく広く、観衆の数も凄かった。
試合はちょうど後半に入ったところで、日本チームが華麗に逆転をキメていて、大勢の観衆が沸きだって、全員で喜びを分かち合うその空間に、極めて健全な元気をもらった気がした。

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アートを鑑賞しスポーツを観戦する、ずいぶん文化的な一日だったな、なんて思う。
パブリックビューイングの会場は豊田市営の体育館だったのだけど、建物がまあデカくてすごく立派で、
で、豊田市美術館もデカくて綺麗な公立美術館なのだけど、
文化にお金をかけてみんなが幸せになれることは幸福なことだなと改めて思った。

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