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「100枚ドローイング」という、3週間で100枚絵を描く課題。

3週間で100枚となると、つまり1日5枚描くわけです。

1枚にどれだけ時間をかけるかは人によるけど、1枚1時間なら1日5時間、1枚2時間なら1日10時間。それを3週間。しんどい。やっぱブラックじゃんかデザイン科。




大学に入って一番最初の課題で、「100枚ドローイング」という課題がありました。各々が自由にテーマを決めて100枚絵を描くという脳筋課題です。美大生活始まってんなおい。


1枚目

とりあえず1枚描いてみました。

テーマは「花の色」にしました。花の色って綺麗じゃないですか。他に理由なんかないです。深く思案し始める前にスタートすんだよこういうのは。




3枚目

序盤なんでまだまだ模索中です。表現の仕方もまだ曖昧ですね。

紙は全員A3サイズですA3というとA4クリアファイルとかの倍なわけだから、結構大きいですよね。それを100枚って何考えてるんだろうか教授は。


僕の所属する東京藝大デザイン科の学年は45人なので、最終的には4500枚の絵が出来上がることになります。すごい数字だ。



6枚目

制作は全部家で行いました。背景はカラースプレーで塗っていて、花はアクリルガッシュという種類の絵の具で描いてます。

ちなみにこのカラースプレーがまあコスパが悪くて、100枚描くのに結局3万円くらいかかりました。制作費は大学が少しは出してくれるのかと思いきや、一円も出ません!

全然関係ないけど2年前くらいからの藝大の学費の値上がり分って何に使われてんだろう。食堂潰れたりしてるけど。




8枚目

始まったばかりだけど早くも若干後悔し始めます。これ大変すぎるぞ???

そもそも花は一般的にも難しいモチーフです。複雑な形をしているし、花びらも多いから描くのに時間がかかります。だけど1日5枚描かないと終わらないから長々とはできない。多分1枚あたり、めっちゃ急いで1~2時間くらいで描いてました。




12枚目

そうなると、リアルに描き込んでく時間とかは到底ないわけです。最小限の手数で、いかに花の美しさを表現するか? それを"色"という視点からアプローチしていくことが、今回のチャレンジでした。つらいよ〜〜(泣)。

ところでこの絵けっこう好きです。少ない手数で出したい雰囲気が出せてる気がします。というか出せてます。俺が出せてるって言ったら出せてるのです。





20枚目くらい

1枚の制作の流れは、

スプレーで背景をビャーって塗る。(1分)

鉛筆で下描きする。(15~20分)

絵の具で色を塗る。(60~90分)

って感じです。
ちなみにあの、分かりますかね、スプレーって噴射すると周囲に微細な塗料の粉が煙みたいに巻き散るんですよ。その仕様を最初よくわかってなかった僕は家の中でカラースプレーを使いまくって、部屋中にカラースプレーの粉が堆積して地獄になりました。

自分の頭の悪さにさすがに引きました。でもそういうとこも好き……。






30枚目くらい。

背景にわざわざ色を塗っているのは、色の組み合わせによる響き合いを探りたかったからです。この花は何色の空間にあったら綺麗に見えるかな〜とか、そういうのを考えてました。





ところでモチーフの花たちは、半分くらいは花屋で買いました。

いっぱい買うから毎回こんな感じ。綺麗だよね〜、もう絵とか描かなくて良くね??

ただ花ってまあまあ高いんですよね。トータルでこれまた3万円くらいかかりました。資金が尽きました。本来こんなお金がかかる課題じゃないはずなんです。



仕方ないので自分で写真を撮りにいくことにしました! 曇りでした! おれの予定に合わせて晴れろや〜! クソが〜〜!!





40枚目くらい。数えてないし知らんし。

リアルに描くことが目的じゃないので、色などの雰囲気は、絵の中である程度自分勝手に変えます。
この花も実際はこんなにギラギラとはしてなかったと思うんですが、そっちの方がかっこよくね〜〜? ってテンションで色塗ってます。いえ〜い。




50枚目くらい。

花の名前はほぼ把握せずに描いています。せっかくなのでこれを機に覚えればよかった。

この赤と黄の組み合わせ好きなんですよね。普段全然野菜とか食べてなさそう。週二でマクドナルド食べてそう。

自分はどういう色が好きなのか、どう表現したいのか。そういった好みは絵に明らかに現れています。やっぱり好きな色の花の絵は綺麗だし、そうじゃない色の花の絵はちょっと微妙だなあって自分で思ったりします。




60枚目くらい。多分。

最初の方に描いた絵の背景は、スプレーを何色か使って独特な雰囲気を作り出そうとしてたのですが、段々一色で塗るようになってますね。これは何もめんどくさくなったわけじゃなくて、単色で塗る方が花自体の色が強く見えるなあと途中から思い始めたからです。



いつの間にか半分を超えていました。しかしまだまだ先は長いです。

段々ともう、頭で考える余裕がなくなっていくんですよね。
一般的な順序としては「頭で考える」→「手を動かして描く」だと思うんですが、考える暇がないので「描く」→「頭で判断する」という順序になっていきました。

しかしこれはある種の洗練ですね。「手で考えろ」と大学ではよく言われます。さてまだまだ描くぞ〜〜〜。




70枚目くらい。



終わらないよ〜〜〜!!



ってこの辺りから本格的になってました。

1日5枚がノルマですが、当然、1日丸々制作に使えるわけじゃないんですよ。大学の他の授業や課題もあるし、バイトもあります。朝から夕方までバイトの日もあるから、そういう日は夜だけで5枚描かないといけません。1枚90分くらいかかるのに??

で、結局その日のノルマが終わらなくて翌日に持ち越したりもしてました。それが重なっていきます。つらぴ〜。





80枚目くらい。

そういうギリギリな状況は皆同じです。深夜にみんなでグループ通話したりしながら描いてました。励ましあったり、途中経過の作品を見せあったりしてました。

制作とは基本的には孤独な時間が多いです。「締め切りまでに終わるか分からない」「クオリティが上がるか分からない」そういった不安は誰にでもあって、それらは他者と共有できない、自分一人の問題です。

だけどお互い、そういう共有できない孤独を抱えているという点は共有できます。制作は孤独ですが、繋がりなくしてできるものではないなと改めて実感しました。仲間やライバルの存在はいつも非常に大きいですね。




90枚目くらい。


このアンスリウムめっちゃ上手くない??



今回の絵たちはどれも、そこまで細部に拘ってはないですが、これに関しては結構頑張って表面の起伏や質感を表現しようとしてますね。


そして気づけばもう終盤です。

ここまで来たらあとはもう走り切るだけです。もちろん全然余裕なんかなくて、ペースとしてはギリギリ計画通り行ってないくらいで、そのくせ何故かそんな時期に限ってバイトが多くて死にそうになったりしてたけれど、心のどこかで「終わってほしくないなあ」と寂しくなっていました。楽しかったんです、結局。



99枚目。

99枚目はひまわりを描こうと決めてました。1枚目もひまわりでしたが、雰囲気は結構違いますね。1枚目はどこか幻想的に書こうともしてましたが、今回はより素直に描こうとしています。

今のアイコンにしている絵でもあります。描いてる時からなんとなくそうするつもりでした。見るだけでエネルギーが湧いてくるような、ひまわりの元気が大好きです。


さて次がいよいよラストだ。




100枚目



レインボー!!  終わり!!!




100枚目に描いたのは、人工的に七色に染められたガーベラです。
自然さとは程遠いですが、僕は花の可憐さや清廉さよりは、鮮やかな強さに心惹かれて描いていたので、こういうアプローチも大いにありでしょう。

色をテーマにしていたわけだし、最後はこんくらいカラフルに締めるのも良いかなと思いました。描き終えたのは、締め切り当日の午前5時とかです。ギリギリ間に合った……。





終わったーーーーー!! 長かったーー!! 疲れた! もう当分なんにも描きたくないな!! 1ヶ月くらい家で寝て、アイス食べながらYouTubeとか見てたい!












101枚目です。(???)









いやね、正直序盤の方とか特に、気に入ってない絵とかいっぱいあったんですよ。少ない制作時間の中で毎回満足いく絵が描けたかっていうと、もちろん全くそんなことはなかったです。描き直したいなあってやつも何枚もありました。


で、提出締め切りが確かその日の夕方だったんです。100枚目を描いたのは締め切り当日の朝。

じゃあそれまで学校で描けるじゃん! 

そう思って追加で2枚描き、直前で差し替えました。102枚ドローイング。










何はともあれ、これにてようやく本当に終了です。並べてみた。綺麗〜〜〜!! カラフル〜〜!!








寝てみた!!! 広い!!


A3サイズは420×297mmですから、それを100枚分となると、約4m×3mになります。あと10人は寝れる。


これは僕の作品ですが、当然これがクラス45人分あります。3週間かけて、限界を超えて描き上げたこの「100枚ドローイング」









展示します!!!!






45人全員分展示します!!!!!!!!






と言っても、さすがに100枚全部は展示できません。スペースの問題です。一人当たりの枚数は10枚前後です。

しかし、100枚の中から作者が選んだ珠玉の10枚です。描く過程で磨かれた感覚や作者独自の視点、それらが詰まった10枚になっています。それが45人分。展示名は「藝大100ドロ展」です。シンプル。





会場はここ、松坂屋上野店!、

と!


その隣のPARCO_ya 上野!! です!


どちらも上野の大通りに面した、でっっかいデパートです。



松坂屋の方は本館7階のアートスペース、PARCO_yaは2階のイベントスペースに展示されます。
松坂屋が400枚ほど、PARCO_yaが60枚ほどとなっています。



ところでこの松坂屋のアートスペースでは、以前から有名な画家や作家の方たちの作品が展示されていたのですが、今回そのスペースが改修工事されたんですよ。そして、この「藝大100ドロ展」が改修後最初の展示になります。すごくない?





つい二日前、松坂屋に搬入してきました。



パノラマで撮ると会場の様子はこんな感じです! とにかく壁をできる限り多くの絵で埋め尽くしました。



めちゃくちゃ密度の高い展示になってると思います。一枚一枚見応えがあるし、人によってものの見方がこうも違うのかと、作者の一人としても見ていて面白くなります。








作品のそばには全員分、作者が何に着目して制作したかが書かれたオシャレなキャプションがついているので、照らし合わせながら作品を見るとより楽しいでしょう。僕が作りました。45人分。(すごい) (天才か?)






今回の展示のメインビジュアルになってます。今回出展しているデザイン科の同級生の一人が、修正を重ねながら作ってくれました。こっちの方が断然すごい。かっこいい〜〜。

ちなみに、さっきの写真にも映ってましたが、PARCO_yaには大通りに面しためちゃくちゃでかいウインドウがあって、そこにこのメインビジュアルが張り出されることになっています。すげ〜〜。


記載してある通り展示期間は

松坂屋が3/16~3/29、
PARCO_yaが3/16~4/5

となっています。

入場無料です。


展示期間中は、松坂屋のアートスペースに毎日作者のうちか誰かしらが在廊しています。話しかければ快く応じてくれると思うし、制作のエピソードなんかも聞かせてくれるでしょう。みな喜ぶはずです。
逆にあんまり話しかけられず鑑賞したい場合は適度にスルーしてくれると思います。

僕は3/16の9:00~12:30、
3/26の10:00~12:30、
3/29の10:00~15:00に居ます。他の日ももしかしたら居るかもしれません。



(追記)
今回の展示についての記事を書いていただきました。藝大の准教授と僕がインタビューを受けてます。

ボケようかとも思ったんですがシリアスな雰囲気だったので真面目に答えざるを得ませんでした。真面目モードの僕です。






だいたい書くべきことは以上なんですが、ちょっと個人的なことを書いていいですか、書きますね。


この展示は2ヶ月ほど前くらいに話を頂き、松坂屋・PARCO_yaのスタッフの方と、大学の教授や講師の方、あと3名の幹部の学生で連携して進めていきました。

その3名のうち1人が僕だったのですが、展示を実現させるに至るまでが、まあ結構大変で。何度もメールで話し合ったり打ち合わせしたり、展示方法やレイアウトをどうしようかと考えたり、色んな準備と苦労がありました。


というかそもそも、前半で書いた通り制作がめちゃくちゃ大変でした。それは45人全員がそうでしょう。


だけどそれらは、皆さんに見てもらうことで全部チャラになります。作品は人に見てもらってこそです。多くの人に見ていただき、そして何か感じるものを受け取っていただけたら、制作者としてこれ以上の喜びはありません。

まあ、ちょっと寄ってみるかくらいの軽い気持ちで足を運んでいただけたら幸いです。ぜひお越しください。





あとこれはひとまず余談ですが、今回の45人約10枚ずつの展示とは別に、約20名の100枚全部を公開する展示を、池袋の東京芸術劇場で実施する予定です。こちらについてはまだ企画中なので、続報は追って発信します。



それでは、何卒どうか宜しくお願いいたします!! 会場でお待ちしています!!






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