はじめましての人とユニバに行った話

日本のテーマパークといえば、に必ず入るだろうユニバーサルスタジオジャパン。ご存知でない方はいないのではなかろうか。
お恥ずかしながら、僕はこの歳になるまで行ったことがなかった。
つい先月まで、「関西在住にして関西屈指のテーマパークに行ったことない人生、これもまた乙なものだと思うんですよね」などと言っていた。まじで。

行ったことがない理由を言うと、いくつかあるがまず、普通に行く機会がなかった。大阪市内の小学校に通う方々であれば、遠足でユニバに行ったという方々も多いのではなかろうか。
僕の弟たちが通った小学校も卒業遠足がユニバだった。何だったかのお土産をもらったことだけは覚えている。
しかし、僕は小学校を卒業する日まで大阪府内のかなり南の方に住んでおり、そんなテーマパークとは縁遠く、小学校の遠足で記憶にある大阪市内といえば、海遊館、大阪歴史博物館、大阪科学博物館、大阪城である。
科学博物館のビックバンというアトラクションがまあまあ乗り物酔いを誘発させる乗り物で、大阪城に行く道中だったかでやたら猫の匂いがする超猫好きの人間がゲロを吐いていたのが思い出したくない思い出である。人生最初で現状最後のプラネタリウムが綺麗だったことも辛うじて覚えている。
行くか、プラネタリウム。
当然、卒業遠足がユニバでしたなんて小学校に通った人間が数多く通う中学校でユニバになど行くわけがない。
驚いたのが高校である。皆当たり前のようにユニバに行く。放課後に。
ユニバというのは文字通り夢の国で、滅多に行くものでないと思っていた。入場料クソ高いし。入場料、くっそ高いし。
しかしまあ、人には好き嫌いがある。当時の僕の世界の住人といえば、まずは当時の恋人、次に高校一年生のときに初めてみたかわいい友人。最近可愛さ減ったな。次に、愉快な友人。次に可愛い友人のクラスメイトの総勢4名である。他はクラスメイトだろうが路傍の石だろうがエキストラとなんら変わりなかった。今思えば少し勿体ないことをした気もするが、当時はこの4人が大好きだったし、今でもうち2名とは関わりが少なからずあるのでこれが僕の世界だと胸を張って言える。
さて、ところで彼らがテーマパークを好む人間かというと、どちらかと言うまでもなく否である。僕も当時も大して興味があったわけでもないし、そもそも行こうとか思いもしなかったと思う。入場料クソ高いし。なんの脈絡もなくアフリカに行こうとか思わないだろ、そんなもんさ。
そもそも幼少期も学生時代も貧困にあえぐ人生なので、家族で出かけるという話は一切出たことがなかった。父の運転するセレナに乗って、下道を使い車中泊をして行った広島、静岡、潮岬が数少ない家族ででかけた記憶である。

というわけで25年間ユニバーサルスタジオジャパンという場所に足を一切踏み入れたことがない人間だったが、ついに最近、「せっかく関西在住でありながら、ユニバに行ったことがない人生、しかし勿体ないのでは」と思い始めた。あとは、ミニオンが好きだと思えばミニオンのゾーンができたり、マリオのゾーンができたりと心を惹かれることが多くなったことも興味が湧いた理由である。
しかしまあ、友人を脳内に呼ぶと一人はそもそも興味がないので誘ったところで来るわけがないし来たらそれだけで事件である。もう一人は万が一きぐるみに遭遇でもしたら手に負えない。呼べば来たかもしれないがテーマパークはもはや苦手な場所の部類であり、来てもお互い後悔しそうな気しかしない。サイゼリアでドリンクバーしばき倒すか焼肉屋で肉を蹂躙している方が余程楽しめると思う。
当時の恋人はそれだけでノート一つ更新できそうなエピソードがあるのでそのうち書くと思う。
それでも、一人で行っても楽しめる気がしない。もともとアトラクションも得意な方ではないので一人ではまあ乗らないだろうし、お金もないのでショッピングに勤しむこともできずクソ高い入場料を払って散歩して帰ってくるのが関の山であろう。せっかく行くなら楽しみ方を知っている人間と行きたい。

というわけで、1500字あまりにしてようやく「はじめましての人とユニバに行った話」をしようと思う。
かわいい友人に、まあまあドン引きする勢いで勧められたTinderを、一度は退会したものの細々と続けている。
勧めてくれた友人には感謝しているが、
「そっかー」の裏にあったのは「うっわー」である。話し出すとわりと熱を入れてお話する子であるとは思っているが勧めてくれているものと勢いがすごい。
既知の人間と話すよりはじめましての人と適当に話す方が気が楽なので、時折三大欲求の大半を性欲が占めてそうな人間や、脳みそにちんこ生えてそうな人間と会話をするストレスに目をつぶれば手っ取り早く人間ちゃんとエンカできるのでそういう意味ではありがたーいアプリである。

たまーに誰でもいいから脳死でカスみたいな絡みをしたくなるのでそういうときには明らかにヤリモクではない、かつ写真を見る限り生理的に無理なジャンルではないタイプの人間をとりあえずライクしまくる。
マッチした人間の半分くらいはメッセージをくれるので常識的な範囲で頭のおかしい返しをする。
人と話すのは好きだが精神科医お墨付きのコミュニケーション能力の低さがコンプレックスで人と話すと疲れてしまう僕の最高の人との絡み方である。
その中で、ユニバ年パス者が返事に困る果てしなく無難なメッセージをくれたので、頭がいつも以上に異常だった僕は年パス所持している点を話題に上げ、予定が合えば行きましょーという話までした。普段であれば頭がおかしいながらも常識はあるので、適当になかったことにしたりもう少し仲良くなってからーとかで結局流すが、当時は本当に頭がおかしかったので具体的な約束を取り付けた。
それがひと月ほど前の話。

そして、ついに当日。まあ、来なくてもいいかと思いながら新大阪のホテルを出て京都線に乗り大阪駅から環状線に揺られたのが先々週の話。

結論はもう出ているが、本当に、来た。

しかも超絶無難なメッセージを寄越してくれたとおり、本当に常識的な人だった。マッチして5往復のメッセージのやり取りで取り付けたユニバ行こうの約束守る人とか、僕レベルに頭おかしい人間だと思ってた。

まず入ってハロウィンの仮想をしているミニオンに感動し、キャストの方々の接客に感動し、いつもよく見る地球儀に感動した。
幼少期のほぼ、人生の半分を田舎で暮らした上に、都会らしい都会にはあまり行かないので未だに田舎人ムーブをするのが楽しいお年頃で、バカバカしいからそろそろやめようとは思っているが今だにやめられずにいる。だって楽しいもん。しかしよく付き合ってくれたなと思う。

せっかくなのでアトラクションに乗ろうということだったが、おかしなテンションではじめましての人と人生初ユニバをキメたものの、事前知識は一切なかったので、アトラクションは何が人気なのかさっぱりわからない。

というわけでアトラクション1つ目は「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」ユニバの中で一番人気のアトラクションだそうで待ち時間もかなりだった。と、いえば、ではあるが一人で来たら絶対に乗らない乗り物である。
るーはメリーゴーランドすき。じぇっとこーすたーきらい。嫌いというと語弊があるが、得意ではない。
しかしまあ、同行者は非常に好きらしく、チキりながら無事乗車。
チキンなので出発が近づくにつれて帰りたい発言の頻度が高かったが、乗ってしまって出発を待つのみだったので「これ乗って帰りましょ、ね、ドライブですよ」「ドライブですね」などと宥めてもらう。本当にいい人だなこの人。
「ラタタ聞いてたら一瞬ですよ、体感一分くらいかな、初めての人でも三分くらい。カップ麺にお湯入れて帰ってきたらできあがってますよ」
内心んなわけるかいと思っていたが、そんなわけはなかった。
まず何が怖いかというと、あの落ちるときの浮遊感である。何だったら落下の瞬間に若干座席から浮いているのを感じるので、安全ベルトはもはや命綱である。あれがなかったら逆さまにならずに落ちてるね。
あとは地面に向かっていくあの感覚である。自ら死にに行っているんじゃないかと思うね。
回転の際、真っ逆さまになるのは意外と怖かった記憶がない、というか最早正気を失ってたような気もする。
体感三分で終わるわけはないので白神は考える。そうだ、無になろう。曲を訊こうと意識を傾けるから良くない。ありのままを受け入れろ、無為自然という言葉がある。僕は絶叫マシーンにのる肉の塊、重力がなくなるのを怖がるな、無になれ、重力に振り回されることを受け入れろ。そう思うと人生で一番ではないかと思うほど無になれた。おそらく脳の出来栄えの問題だと思うが、思考を止めるということがあまりできない。脳内には絶えず言葉が、音が、考えが、記憶が巡っている。それらが一切なくなった瞬間である。傍から見たら気を失っているようにも見えたと思うし僕もそう思った。
せめてラタタダンスには参加しようと思って意識を取り戻したが結局怖くて意識を捨てた。これが多分人には伝わらないがかなり楽しい。
同行者にも途中死んでましたよね、ごめんね連れてきてなどと言わせてしまう始末である。本人は魂が抜けて楽しんでたから無問題です。

ところで、僕が死んでいた間隣の同行者は何をしていたのかというと、「わー、すごーい」などありえん喜んでいらっしゃった。まじかよ
本当に楽しんでいらっしゃってて、一瞬意識を取り戻したのも、僕もそういう楽しみ方をしたいと思ったからである。結局捨てたけど。
これがもし、お互いジェットコースターの類いは得意ではないが面白半分で乗ってみようとかだったら、怖かったね、もう乗らないね、で終わった板かもしれないが、向こうは年パス所有者で来ればだいたい乗っているらしいジェットコースター大好きなので当然次回いらっしゃった際も乗るだろうし、僕もこの人のおかげで楽しいと思えた部分は多いにあるので、同行者は大事だと思う。その点僕は死んでいたのでなんのお役にも立てなかったが。
後日譚にはなるが、「魂抜けるのが面白かったです、隣で楽しそうにしてらっしゃって、それを見るのも楽しかったのでまた行きましょ」といったところ、「じゃあまた魂抜きましょ」などと返ってきた。隣に座る人間の魂抜けてるジェットコースター、それでいいのか

次は僕がミニオン大好きということでミニオンのアトラクション多分ミニオンザライド。途中、カチューシャを買うつもりで立ち寄ったお店でティムのぬいぐるみを勧めてもらい、テーマパークテンションでお持ち帰りを決定。ティムとアトラクションに乗ったらボブやねーなどと話しており、パークのお姉さんにも「ミニオンに取られないように気をつけてね(落とすなよ)」のご忠告を頂き、ミニオンになれるマシーンに搭乗。の直前に「ティムちゃんお留守番しましょっか」と言われ、片隅に置かれるティム。心なしか寂しそうだったが安全のためである。というか、コーヒーカップとかそういう平和的なやつ想像してたけど違うの?
結論から言おう。違うかった。同行者も以前一度乗ったきりで曖昧とは言っていたが、そこまで怖くないと言っていたのにひっでー裏切りである。めちゃくちゃ楽しかった。
まず、レールが見えていればある程度落ちるのを予想できたのに対して、こちらはVR的な臨場感あふれるミニオンとしての冒険だったので、レールもクソも見えない。目の前にあるのは…いやいるのはミニオンと三姉妹とグルーさんである。恐怖。普通に怖くて叫んでいたし、同行者の腕にしがみついていた気がする。本当に申し訳ないし今日もインスタのDMで会話続いてるのすげぇな。
しかしだからこそ臨場感が味わえて、ミニオンになろうという世界観はミニオンが大好きな人間なら楽しめると思う。僕は楽しかった。

次はハリーポッターのコーナーを散歩して、時間の都合でアトラクションには乗れず、バタービールを飲んでお店を冷やかしマイメロのグリーディングに並び写真撮影をし大変満足して解散。

翌日も仕事なので早く帰りたいのと、はじめましての人と脳死メッセージするのが一番気楽とはいえ、長時間人と一緒にいること自体が疲れるので、9:00〜15:00までというわがまま、「ホラーナイトまでいないなんてありえない」の言葉も覚悟したが、その時間で解散してくれて本当に優しい方だった。

死にに行っているとしか思えないアトラクションを楽しんでいらっしゃって楽しかったのと、よく来ているとのことでパーク内に非常に詳しく行きたいところにすんなりアクセスできたのと、年パス所有者なのでいつでも来れると仰っていただきかなりわがままを聞いていただけたのもあってすごく楽しかった。
楽しいテーマパークだったらはじめましての人でも楽しいだろうと思って踏んでいた部分はあったが、いくら楽しい場所とはいえ同行者の存在は大きかったと思わずにはいられない。
また行きましょーといったし、予定が合えばまた頭おかしいときに誘おうと思うが、同行者の重要さを学んでしまったばっかりに、人気アトラクションで半ば進んで気絶する人間が楽しさを提供できる自信がなく、誘う勇気がわかなくなってしまったのが最近の悩みである。

おててが疲れたので今日はここまで。

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