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掌の月の眉

街灯が照らす街の影を踏んでいた。
今日も月は半分に欠けている。
こうして歩いているとどんどん月に近付いているような気になる。
15歳の頃学校の図書館で読んだ、まぁるく青い表紙の本に書いてあった。
今から約2300年前のこと、「地球が丸い」と初めに言ったのは哲学者であるアリストテレス。
彼は星や月を観測することによって地球が平面ではなく、球体であることを考え「月食の時に地球の黒く丸い影が映っていることから地球は丸いのだ」と説明していた。
また、ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリンといったパイロット、或いは宇宙飛行士がボストーク一号に乗り地球の軌道を一周した。
宇宙飛行は108分間、「地球は青かった」という名言を残している。
続いて日本人宇宙飛行士、毛利衛さんもまた1992年スペースシャトルにて「やっぱり地球は青かった」と発言を残していることから私達の地球は"まぁるくて青い"ものなのだと記憶されている。
丸かっただの青かっただのこの目で確かめたことが無いのだから、私には不思議に思えることが沢山ある。
例えば、地球が球体だとするのなら天井があるはずだ。
例えば、この平坦なコンクリートがオルゴールのように私ごと周らないのは何故だろう。
馬鹿げていると思われるだろうが私にとっては謎に満ちている。
かといってこの摩訶不思議をネットで調べて解決させたくはない。
肉眼で確認し理解が出来ないのならこのまま私の中にしまっておきたい。
知らなくていい。
この感覚が何故だか愛らしいから。
気付けば追いかけていたはずの月を追い越していた。
目の前にそれはあって、着実に近付いていたはずなのに真後ろになってしまうだなんて。
そしてまた遠のいてしまったのはどうしてだろう。
まるで地球が物凄いスピードで回転していることのように思える。
私は片方の目を瞑り親指と人差し指で月を捕まえた。
もう離さないぞといわんばかりに手の中にしまった。





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