日記小説|元旦の幸福

1月の寒さは特別だ。
少しつんとする石油ストーブの香りをかぎながら、電気こたつに足を突っ込む。

近くの神社には多くの人が押し掛けて、神様へのご挨拶をしている。

元旦。
昨日までのそわそわした足取りは消えて、あたたかく、のんびりとした空気が漂っているのは、暖房のおかげだけではないはずだ。

寝ずに新年を迎え入れた私は、毎年お決まりの正月番組のチャンネルを回しては、どうにかして正月気分を味わおうとしていた。
時刻は3:00をまわっている。

折角この時間まで起きていたのだから、海の方へ出向いて初日の出を拝もうか、そのまま元朝参りにも行こうか。そんな元旦らしいことを考えているうちに、暖かい眠気が私の頭を包み込んでしまう。

私は海の中にいた。
脇に抱えるようにして、大きな1匹の黒い魚を捕まえた。
初夢には富士山も、鷹も、茄子も出てこなかった。

一体どれだけの人が、初夢で縁起の良いそれらを見ることができるのだろうか。26年生きてきて、どれも一度も出てきたことはない。

死ぬまでに一度は見てみたいものだが、元旦から富士山にでも出てこられたら、その年の最大の幸運は、初夢になってしまうかもしれない。

目を覚ますと、すっかり昼で、冬にしては眩しい光が差し込んでいた。
部屋には石油の残り香が、ほんのりと漂っている。


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