“予感”の答え合わせ
ーー夜電話 話がある
そんな始まりのメッセージに、良い予感がした覚えがない。
1年前、遠距離だった先輩とデートしてから数日後に送られてきたメッセージもこんな感じだった、気がする。※その電話でお別れした
そんな経験と私のいつものネガティブ思考が、しばし私を冒頭のメッセージの送り主との思い出を走馬灯のように思い出させた。
・
その人(以下Aとする)は一時期の私にとって大きな心の拠り所だった。
Aは歯に衣着せない物言いが特徴的な人物だった。
その素直さ正直さ真っ直ぐさは時に人を怒らせ、悲しませたりもしたが、私にとってはそれが憧れだったりもした。
実際、私はAから自身の容姿について
「顎削ったら人生変わるよ」
「リップ、もっと濃くしたら?」
などと色々言われたこともあったけれど、その一方で褒め言葉をくれる時もあった。
「色白で二重よね」
「瞳、綺麗ね」
「髪良い匂いする」
自分の容姿について、私は好きなところも嫌いなところも沢山あるけれど、Aから言ってもらえた言葉は私により大きな自信をくれたし、それらはAから私へのちょっとした好意を期待させもした。
・
そんなAから久々に連絡が来た。
私とAは3週間ほど前にイザコザがあり、毎日のようにとっていた連絡はほとんどない状態になっていた。
その間、Aとまた以前のように戻りたい、話したいと思っていた私は、Aがいつでも私に連絡しやすいようにと、どうでもいい内容のメッセージを2日に1回くらいのペースで送っていた。これをAは何を思っていたんだろう。
3週間前のあの日、Aは私に「しばらく距離と時間を置こう」と言い残し、仲直りを急ぐ私に対して「また連絡するから」と私の前に姿を現さなかった。
ただ、1週間前、私の忘れ物をAに届けてもらったとき、話をしたいと求める私を制止して、少し口角が上がっていたAのあの顔はなんだったんだろう。
そして今日、すれ違いざまに声をかけた時、一言も発さずに私の顔をただ見つめてその場を立ち去ったのはなんだったんだろう。
私はAのことを一生理解することはできないのかもしれない。
そんなAから今晩、電話が来る。
今日の午前、突然のメッセージ(※冒頭参照)があってから、私はさまざまなシチュエーションを考えては、そこでAにかける言葉を考えた。
Aとの仲が終わってしまう場合、縁切りという形でこのまま一生話せないかもしれない場合、打って変わって”次”がある場合、
いずれにせよ私がAに対してかけられる言葉はこれまでのありがとうとごめんねと応援している、くらいになるのかな。
もちろん私は仲直りすることを望んでいるけれど、いまの状況的に、そしてAの価値観的に、Aと私はもう一生関わることができない関係になるのかもしれない。
久々の声に私は心を高鳴らせるだろうか。
それとも告げられた内容によって胸を苦しめるのだろうか。
そんな、約束の電話の1時間前。
・
Aとの電話がおわった。
端的に述べると、
ここ1週間の間に年下の恋人ができたこと
3週間前の件について怒ってはいないこと
だった。
いつもぶっきらぼうな口調のAが、初対面の時ぶりに敬語で話始めるその口ぶりはなんとも滑稽で、かつ不愉快だった。
なぜなら、この1週間、私はAに対して嫌われまい、ここで終わらせまいと思いながら日々の重いタスクをこなしながらやっとのことで息をしていたというのに、連絡を取っていない間によくもまあそうのうのうといられるのね、と思ってしまったから。
あなたは私のことなんかそっちのけで幸せになっていくのね。
なら、私はあなたの幸せを、将来をほんの少しだけ呪ってやる。
のろける隙なんて与えてやらないわ。と。
・
しょーもない。
もう大学生なんてやめてしまいたい。もうすぐ卒業だからいいけどさ。
私が中学でも、高校でも、大学でも、一定数の”繋がり”を切りたいと思ってしまうのは、友人と自分との間に”生きることへの必死さ”に不調和を感じているからなのかもしれない。
私とAはこれから話すこともメッセージを送り合うこともないのかもしれない。(電話の終わりでAが「じゃあ、また」と言ったのに対して私が「ばいばい、さようなら」と言ったから)
でも、これでいいんだ。
私はこれで晴れて自由なのだから。
Aから過去に発された言霊も呪縛も、気にする暇なんてないのだから。
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