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Sowing the Seeds of Love /Tears for Fears

例えば日本の有名どころなら奥田民生とか、ビートルズへのトリビュート勢は山程あれど、この曲はなかなか奥が深い。冒頭の逆回転風ドラムロールから始まって、鍵盤を押さえつけるようなオルガンのコードバッキング、後半のトランペットのソロ等々、後期ビートルズを彷彿とさせる技をこれでもかというくらい繰り出しつつ、単なるパーツのコラージュではなく、彼らがこの時点で曲を書いたらこんな風になるだろうという再現実験を1989年に行っている。しかしながら、僕が今この文章を書いているのは2023年。ビートルズがRevolverを発表しサイケデリックに傾倒し始めたのが1966年だから、、、ん、時系列がこんがらがってきたぞ(笑)。

先日ポールが、AIの力を借りてレノンのボーカルで新曲を作り年内にリリースすると語ったけれども、Tears for Fearsは今から30年以上前に、さらにその時点から30年近く遡ったバンドサウンドに着想を得た楽曲を新規に創作していたということになる。しかもTFFの2人は自分たちがRevolverやSgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band時代の音色やアレンジを真似たのでなく、あたかも自分たちの曲をビートルズに演奏させたかのような換骨奪胎というか、創造的逆転を成功させた、と僕は思う。

ポールの説明では、レノンのボーカルトラックは音質は悪くとも既に存在するのだと思われるが、膨大なデータから中央値をとって「らしさ」を作り出す生成AIがどんな仕事を見せてくれるのか、比較されるべきはビートルズのオリジナル作品ではなく、TFFのこの曲であるべきだと思うのだ。

*画像はイメージです。ロンドン・ウェストミンスターにて

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