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再会①

居ても立っても居られないような気持ちで私は本屋さんに向かった。候補は決まっている。候補は2冊。2冊のうち1冊は在庫があったので購入し、残りの1冊は違う書店に寄った時に探してみることにした。

購入したのは、島本理生さん著者の「君が降る日」。三篇の恋愛小説が収録されている。その中でも「野はら」と言う題名のお話は、異性との間での恋人ではなく友達になることへの難しさと切なさを綴った内容は、まさに求めていた作品だった。最後に収録されている作品だったけど1番最初に読まなくてはならないと思って本を開いた。

長くもなく短くもなく、淡々と読んでいたらなんとなく綴られている文章に見覚えがあることに気がついた。見覚えがあることを認識してしまったら最後、これは一度読んだことのある作品であると確認にしたくなり、私は本棚に目をやった。

本棚には置いていなかった。実家に置いてきた本はない。本は出ていく時に必要と思ったものは共に家から連れ出した。家族のように。必要じゃないと思った本はその場で捨てた。滅多に本は捨てないけれど、本を捨てたのは地元を出た時と大学時代のどこかの時期の2回だけ。直近の時期がわからないのは突拍子もなく捨てたんだろう。でもききっかけがなければ捨てはしない。この本を買ったきっかけもあった。私はゆっくり昔のことを思い出そうとしていた。


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