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ハトの一声
「困難を乗り越えた経験はありますか」
ESではそんな質問を聞かれることがある。
答えを述べると、基本的には、ない。
正確に言えば一人で乗り越えたことはない。
そもそも困難な状況とは何か。
身内の不幸や災害、さらには部活動の怪我など恣意的なものは確かに困難な状況だろう。
ただ、自分個人の実力や準備不足だけが原因の困難は偉そうに語れるほどの困難ではない、と思っている。
だからこそ就活で、というか他人に語れるような困難を乗り越えたことはほぼ未経験で今でも答えに困っている。(高校の時に足首を何度も怪我したことはあるが、自分なりに何か考えてアクションをとって乗り越えた困難ではなく、時間が解決しただけ、という消極的解決)
弱い人間だから。
ただ、そんな自分でも1つだけ、困難を乗り越えた経験があり、鮮明に覚えていることがある。それについて綴っていこう。
その困難は、小1から続けてきたサッカーで起きたことだ。時期は、人生で一番純粋にサッカーボールを追いかけていた中学生、確か中3の春の大会。場所は忘れもしない稲城六中。恥ずかしながら、相手は覚えていない。
黄金世代(自称)だった自分らの代は予選は無失点が当たり前、本気で都大会優勝を狙うチームだった。
予選は無失点が当たり前、つまりは負けることはない。それと同時に負けることに慣れていないという落とし穴もあった。
あの日の都大会の試合は相手が強く、先制された。大会初失点だったかは覚えていないが、とにかくパニックに陥ったことは覚えている。
時間がない。基本豆腐メンタルな自分は、仲間を信じつつも半ば諦めていた。
何もなければあのまま負けていただろう。
そんな時だ、神が1滴の「運」を授けてくれたのは。
下を向いていた試合中、突然監督が腕を見せびらかしながら立ち上がってこう言った。
「ウン、付いてるぞ!!!!!」
何言ってんだ?そう思っていたが、よくよく聞いてみると、なんと監督の腕にハトのフンが落ちて来たらしい。なんて不幸。。そして試合に全く関係ない。そう思っていた。
しかし、冷静に大いに関係ある。
そう。フン(運)は自分らのチームに付いているのだ。
元から絶大な信頼を寄せていたこともあったが、この笑えないような状況で、普段はやや怖い監督が真顔でこんな滑稽なことを言っているのを見て、笑わないはずがない。思わず笑った。
笑顔は不思議な魔法。何故か諦めかけていた気持ちも無くなり、心に再び火がついていた。
阪神風にいうと「負ける気せえへん」ってやつ。
そこから火がついた自分たちは気がつけば逆転(もしくはPK)で勝利していた。
極めて確率の低い事故、そしてあのユーモア満載な面白おかしい言葉が無ければ確実に負けていた。
信頼できる、安心できる仲間がいたからこそ最後まで戦える。真の仲間の存在は偉大だ。
みんなで乗り越えた、自信を持って乗り越えたと言える、最初で最後の困難はこのようにして乗り越えられた。改めていい経験だったと思う。
逆境を乗り越えるのは簡単ではない。しかし、逃げていてはその先の景色を見ることも出来ない。
「大概の試合はピンチから始まる」
超名作サッカー漫画「イナズマイレブン 」の灰崎もこう言っていた。
ピンチを前提に生き、逆境という状況を楽しめるくらい心に余裕のある人間が強いんだろうな。
もっと苦しいことに挑戦し、本当の苦境に立たされるような経験をしていけたら、と思う。
だってその方が絶対カッコいいもん。
色々経験してる大人ってカッコよくない?
自分が苦境を経験することで初めて人の手助けが出来る立場になれるわけだし。
見た目はどうしようもないので、せめて中身は超「カッコいい」人間でありたい。
自分が一番大事だけど、いつかは大事な人や困っている人をさりげなく助けてあげられる。そんな大人になりたい。いや、ならなきゃいけないと思っている。
それに気付く(何年かかったのか)きっかけを与えてくれたハト、そして常人ならいち早く拭きたいであろうフンを試合が終わるまで腕につけたまま、最後まで勝つためにやるべき事をやってくださった監督、そして最後まで戦い抜いたチームメイトには感謝しかない。
ハトが喋ったわけではないが、一番しっくりくるので「ハトの一声」というタイトルにさせて貰った。コンバージョン率を上げるためのネーミングも大事。コンバージョンではないか。
あの日の監督の言葉は、一生忘れることはないだろう。
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