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魂を繋ぐ神秘の糸 #4
第6章 宙亀 そらがめ
九泉の店内では静かな午後が続いていた。
壁一面の格子状の棚にはありとあらゆる言語の夥しい数の本が、それぞれの枠の中で色とりどりの酒瓶と共に並んでいて見るものを圧倒する。
本の前に酒瓶が並んでおり奇妙といえば奇妙ではあるが、ここには黒子のこだわりがある。
一見するとなんの規則性もないように見えるが、並んでいる酒の原産国と棚の本はリンクしており、酒の度数が高くなるに応じて
魂を繋ぐ神秘の糸#2
第3章 緑雨の中に
暫くぶりの雨が奏でる音と、硯に墨を引く音とが小気味よく聞こえてくる。
ドン、っと一つ大きな音が鳴ったかと思えば、ガラガラガラっと雨戸が開く音がする。
手首の細いひょろっとした腕が茶碗と共に窓の外に飛び出してきた。
黒子は雨が降ると必ず水を集める。
雨水は天の機嫌を教えてくれる。
教えてくれるといっても、ただ雨水を溜めただけでは何も分からない。
溜めた雨水を硯に注