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ビールに合うコンテンツ考 〜あるYouTubeerの視点〜

酒の肴は、何も食べ物に限らない。音楽や会話はもちろん、動画コンテンツも酒を美味しくする。最近、テレビの大画面にYouTubeを映すことを覚えてからすっかりYouTubeer化(YouTubeを観ながらビールをガブ飲みする困った人)している者として、ビールに合うコンテンツについて一考察を加えたい。

まずジャンルは何でもよいが、映画は合わない。お金を払って劇場で2時間集中して観る観客に合わせて作られているので、麦芽の旨味に気分がホップしている状態の人間とはテンポが合わない。感動のエンディングを迎える頃には既に伏線は忘れてしまっている(「俺たち、やったな!」みたいな顔をして主人公と握手している仲間らしき人をみて「あなたは誰?」というのもよくあることだ)。ここは気ままなお茶の間の興味をつなぐため、分単位で見せ場が入るように作られているドラマがよい。

映画でもアニメ、特にジブリ作品は合う。「天空の城ラピュタ」や「風の谷のナウシカ」なんて全シーンがつまみである。冒頭の肉だんご2つで缶ビール2本はいける。パズーがシータに作る目玉焼きトーストで翌日の朝食も決定だ。西洋風の世界観とロボットや怪獣の組み合わせも異世界トリップを起こしやすく、βエンドルフィンが掛け流し状態になる(この意味ではドラゴンクエストもオススメ)。

また、アニメは風景や動きの解像度を上げれば上げるほど気持ちよさを生むという。その意味でもジブリ作品は最高だが、「エヴァンゲリオン」もなかなかのものだ。使徒との戦闘シーンの合間に差し込まれる「どうせボクなんか」モードのシンジ君が夕暮れ時にとぼとぼ歩く踏切や商店付近は、格好のガブ飲みスポットだ。その遮断機やコンクリートの過剰にリアルな質感と必ず入るひぐらしの鳴き声のダブルパンチによって容易に日本の原風景にトリップできる。

実写では大河ドラマはオススメだ。一本あたり5,000万円かけて製作されているだけあり、まず画力が違う。特に「麒麟がくる」の広大な田園風景のドローン映像やビビッドカラーは目に楽しい。「龍馬伝」「平清盛」あたりの手入れしてない水槽みたいな画もそれはそれでオツなものであったが。アニメのディテール描写と同じく、小道具やセットへのこだわりの一つひとつがことごとくビールに合う。これが朝ドラになるといけない。一気にビールが水っぽく、炭酸も抜けたシラケた味わいになってしまう。

また大河は歴史モノであるから、時空のトリップが楽しめる点も大きい。幕末でも150年、戦国時代だと400年という途方もない時間と冷えたビールが想像力を心地よく刺激する。その意味ではYouTube上にも豊富に転がっている歴史ドキュメンタリーも優秀なおつまみといえる。最近のお気に入りは「知ってるつもり」だ。最終回のイエスキリスト特集なんて、現地取材と映画シーンの差し込みによって2,000年前に瞬間トリップできる。90年代はお金も才能もテレビ業界に集まっていたからだろうか、見ごたえのある番組が非常に多い。

ドキュメンタリーといえばスポーツや音楽も忘れてはいけない。格闘技界やプロ野球のスーパースター達を眺めながらのビールなど、まさにYouTubeerに生まれてきた喜びを噛みしめる瞬間である。この点については紙幅の都合で後日改めて論考を加えたい。

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