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いぬ。イヌ。犬。

よく覚えている。幼稚園の夏休み。
毎年夏休みは、家族でおばあちゃん家にいく。
田舎のばあちゃんは犬を飼っている。
近所に友だちがいるわけでもなく、
やることもなく、外で犬と遊ぶ。
ほっぺをぺちんぺちん叩いたり
しっぽを握ったり。
ふとした拍子に追いかけっこがはじまる。
何でも出来る気がしていた5歳。
コーナーだけでなく直線でも差をつける。
スター状態の自分。
が、5歳のガキに いつまでも走れる
体力がなんてあるわけがない。
そもそも犬には何一つ勝てない。
がぶり。
痛みはもう忘れたが、大声で泣いた記憶がある。
お尻に上下左右の犬歯でかまれた跡が4つ
8月半ば、5つ穴があるお尻を持つ5歳が爆誕した。


チワワとかポメラニアン位の
小さめのサイズの犬であれば
「いざ戦いになればこっちが勝てる」
と思えるから精神的に余裕がある。
倒し方を知っている。

問題はでかい犬だ。
幼き頃のトラウマ。明らかに犬側に分がある。
倒し方を知らない。
タイマンで戦ったら万に1回も勝てないだろう。


いぬ。イヌ。犬

道端で足を上げておしっこ。
走り出す。吠える。うんこ。
自分の尻尾を追いかけてくるくる回る。
走り出す。吠える。うんこ。

ヤツらは目を輝かせ四足歩行で
ハァハァと荒めの口呼吸で
こっちを見つめてくる。

一緒に遊びたいのか お腹が空いているのか
株式投資をはじめようと思ってるのか
ドイツ語を学ぼうと思っているのか
カルボナーラを食べたい思っているのか

何を考えているのか全くわからない。


近付いてくるだけならまだ耐えることができる。
がヤツらは、それだけでは飽き足らず
顔面や手を舐め回そうとしてくる。
同性異性別け隔てなく老若男女関係なく。
恐ろしいがすぎる。恐怖の権化。悪魔だ。


お目々キラキラ超絶口呼吸四足歩行の恐怖の悪魔。
契約したら体力が尽き果てるまで、
お尻に新しく4つの穴を空けるまで、
人間を追いかけ回す道を歩むだろう。


中学生の頃、通学するほぼ毎朝、
でかい犬を散歩している知らん爺さんとすれ違う。
会釈をする関係から、声に出しておはようございますを
言う関係になったとき、
犬触ってみるかいと爺さんに言われた。

周りには歩いてる人がちらほらいる。
プライドが富士山のように高く、
万人にかっこいいと思われたかった自分は、
トラウマを押し殺し、勇気を振り絞り言った。
「あっ 今日急いでるんです!」
怖いものは怖い。
トラウマはすぐに乗り越えられるものではない。
プライドは富士山より公園の砂場の山に近かった。
次の日からは家を少し早く出て、高校までのルートを変えた。


小さい犬の倒し方は知ってる。
最初の方に書いた。そう。
武井壮のポメラニアンの倒し方は死ぬほど見た。
ビターンの一撃。
ポメラニアンの群だったら
ベベベベーン。7スイング。
ポメラニアンぶち殺しおじさん。
酷評されるかもと言っているが、
是非ともシベリアンハスキーとか
ゴールデンレトリバーの群れの倒し方を
この弱き自分にご教授頂きたい。
倒し方さえ分かればトラウマを克服出来るかもしれない。


いぬ。イヌ。犬 。

口を閉じ静かな鼻呼吸で、
四足歩行ではなく二足歩行になり、
顔面や手を舐めることがなくなり、
ドイツ語を学ぼうとか、投資をしようとか
唐突にカルボナーラを食べたいとか、
思うことがなくなれば、
こちらから歩み寄ることが出来るかもしれない。


いぬ。イヌ。犬 。

舌を出し荒い口呼吸で、
二足歩行ではなく四足歩行で、
顔面や手を舐め回そうとし、
これからも
ドイツ語を学ぼうとか、投資をしようとか
唐突にカルボナーラを食べたいとか、
思っているのであれば、
今後、自ら関わりに行くことはきっと無いだろう。



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