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ざわつくオレンジ

 電車に乗っていたら、乗っていた電車のクラクションが鳴った。路面電車は右折しようとする車などにしょっちゅうクラクションを鳴らすので、クラクションが鳴ることは珍しいことではなかったけれど、すごく長く鳴った。そしてそのあとに、がつん! という衝突音とにぶい衝撃を受けた。車と衝突したのだ。電車はそのまま急停車した。

 私の居た位置からは相手の車は見えなかったけれど、乗っていた電車の右前方との衝突のようだった。運転手さんが降りていき、あれこれ対応をしていた。電車の中は少し緊張がはしった様子で、乗客はわりにしずかだった。

 上りも下りも5分ほど停車していたけれど、それから運転手の方がすみませんというアナウンスをして、すぐそばの電停まで動いた。偶然にも車庫のある電停だったので、代わりの電車が準備され、そちらに乗り換えてくださいと言われた。乗客はみんな乗り換えてすぐに動き出した。

 私は、おもったより動揺してしまった。いつものようにイヤホンをつけて音楽を流し、本を手にしていたけれど続きを読めなかった。オレンジのポマンダーを持っていたので、すぐにポマンダーで保護。そういえば朝からオレンジの部位にしくしくした痛みがあった。

*

 前にも乗っていた電車と車が衝突したことがあった。それは2018年の7月、麻原彰晃、土谷正美、遠藤誠一、井上嘉浩、新実智光、中川智正、早川紀代秀の7名に死刑執行命令が発表された直後だったとおもう。その少し前に、アンダーグラウンド(村上春樹著)を読んでいて、私の中のある部分がこの事件にとらえられていた。

 事件当時は中学生だったし、東京で起こったその事件はどこか他人事だったけれど、何かのきっかけでこの本を手に取った。分厚い本のはじめから終りまでショックと、ダメージを感じ続けた。
 私には死刑制度についてもおもうところがあって、このときの死刑執行前後のニュースは私を落ち着かなくさせた。このときなんか、乗っていた電車の衝突があってから日を置かずに、乗っていたひとつ前の電車が車と衝突と相次いで起こって、なんだかモヤモヤとした。死刑執行と合わせて、このときも大きく動揺したのを憶えている。

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 相手の車のことはわからないけれど(大丈夫だといいな)、電車の乗客と運転手にけが人はひとりも出ていないようだった。よかった。目的地にはそう遅れず到着し、メモをとったりした。ホロスコープをチェックしてみると月(蟹座)と火星(天秤座)のスクエアがみられた。

 週末には旅をひかえていて、あまりこの動揺を抱えたまま行きたくない。何らかのことをしてから行こう。期日前投票もきのう済ませておいた。

 どうでもいいことだけど、読んでいた本のページの記録。その内容と現実のアンバランスがおかしかったので載せておきます。

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村上朝日堂はいかにして鍛えられたか/村上春樹・安西水丸 著

 トップ画像の、ポマンダーを入れたポーチはカステラ柄です。黄色がかわいい。

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