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プチプチだった

 仕事場での飲み会というのが好きじゃなくて、ほとんどぜんぶを断っている。下戸というのもあるけれど、ああいうのって純粋に消耗でしかない(個人的な意見です)。

 ところが先日、取引先の社長と職員、うちのボスという顔ぶれのものに行くはめになった。どうにも断れない状況というのがごくたまにある。
 仕方なく行ったけれど、やっぱり、すごくぐったりとくたびれてしまった。私はこういう場で、それが目上の人であってもひとことふたこと勧められたからといって、飲みたくなければ飲むことはしない。うちのボスの、普段しらふの状態でもつまらないおしゃべりが、アルコールによって加速するし、元々のデリカシーのなさまで増大し、もうじんましんが出るんじゃないかとおもった。終始しらふの私としてはたまらない時間だった。
 あちらの社長さん方も、ひたすらひきつり笑顔で、気の毒だなともおもったけれど私のせいじゃない。というか、あちらもうちのボスとこういう席をもつのがどういう結果になるか、ある程度わかってたはずだ。わかっていたから緩衝材要員みたいな感じで、そこにいた私を標的にしたとかそういうふうではなかろうか。というのも、ある日の打合せの最後にこの飲み会の話が出て、社長さんが「じゃあ片山さんも」と言ったのだ。ああ。
 こんなかんじで、プチプチとしての数時間をがんばってやり過ごしたのだった。

*

 次の日は荷物運びの用があって、朝から外海そとめに行くようにしていた。わりと天気もよく、日差しが強かった。ふたつの場所に届け物と御用聞きに行って、外海の穏やかな人たちと風土に接して、少しずつ気分も落ち着いてきた。
 用事は済んだけれど、まだもう少しひとりでいたくて、ある場所に行ってみることにした。時間は13時で、日が高い時間帯だから暑くて汗をかくことが予想されたけれど、それでもいいとおもった。

 国道202号線沿いにある『夕陽が丘そとめ』という道の駅のそばに、大城おおじょう公園(西彼杵にしそのぎ半島県立公園城山じょうのやま)というのがあって、以前Kさんが展望台まで上った話をしてくれたことがあって、行ってみたいとおもっていた。
 あまり考えずに道の駅側を見下ろす駐車場に車を停め、そこからのびる階段から上りはじめた。しばらくはコンクリートの階段で、途中から石段の山道になる。
 生い茂った木の枝で日差しはさえぎられているけれど、あまり人もこないのだろう、枝は伸び放題だし、虫もぶんぶん飛んでいる。顔にクモの巣もひっかかった。どんどん進む。
 10分か15分くらい上っていったん、目の前がひらけるところがあって、そこからも出津しつの浜や、池島などが浮かぶ角力灘すもうなだが見渡せる。ちょっと息を整えて、また少し行くと展望台についた。この展望台からは、反対側の野母崎のもざきのほうまでぐるりと見渡すことができた。
 写真の反対側には、神楽島といって神功皇后が三韓征伐を終えて神楽を舞ったとかなんとかの伝説のある無人島が見えるらしい(見落としました)。
 風が抜けてきもちがよかった。

 景色は霞んでいた

 Kさんによると、山道にはいくつも墓があるということだったけれど、上るときには気が付かなかった。下りで注意深く歩いてみて、(あれかな?)とおもうものがいくつかあったけれど、落ち葉(枯葉)が積もっていたのもあって自信はない。
 途中で分かれ道みたいなものがあった。城山登山道と書かれた看板もある。看板の矢印は、いま私がきた方向に向けてあって、上りのときにこの看板を見た記憶はない。あれっとおもってちょっと覗いてみたら、広場になっていてふたつの碑が建っていた。それぞれ、「殉国碑」「忠魂碑」と書いてあった。広場のむこうには下に降りる階段が伸びていて、それを下りると202号線のすぐ脇の出入口に出られるということだった。あとで調べたらこちら側にも車を停められそうだった。そうか。

 墓があることや、殉国者を慰霊する碑が建てられていること、それから城山じょうのやま大城おおじょうなどと名が定まっていないことなどが気になってきた。
 手元に外海の資料がなかったからインターネット上になにか情報がないかと検索してみたけれど、でてこなかった。というか外海というともうどれも景色やキリシタンの里、夕陽とそういったものばかりを押し出す、観光客招致の記事ばかりである。
 素晴らしい景色、素晴らしい景色、素晴らしい景色・・・・・・。
 それはこの土地の一面として間違っていない情報だけれども、もっといろんな視点があっていいとおもう。このあたりについて、そのうち調べて記事にすることができたらいいとおもった。

 もう一度もとの道に戻って、駐車場まで下って車に乗りこみ、帰り道をした。
 いい汗をかいて、少し毒気が抜けたような気がした。

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