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じき辞める会社の有休を使った躁鬱患者の1日

有休を使ってなんの目的もなく新宿をうろついたことはありますか?

高校生に絶大な人気を誇るyutuberの「不登校の日にするべきことはベットで寝転んでいるだけではなくて、外に出て沢山の景色をみること」なんて言葉に感化されて天気の良い午後、お散歩に出かけた。

お散歩といっても精神障碍者には簡単なことではない。みんなが働いている時間にのうのうとしていていいのかという罪悪感。会社から、社会からはじき出された惨めさ。これといった目的もなく外を徘徊して迷惑ではないのか。そんなことを考えていると気が滅入るし言葉を選ばずに言うと死んでしまいたくなる。

そこで少しでもこの罪悪感を消し去るために、無くなったお風呂用洗剤を購入して、BOOKOFFでもう読まない本を売ることを目的に新宿に向かった。都営新宿線で障碍者は無料で乗車することができる大変ありがたいサービスが受けられるが、せっかくの良い天気なので自分の足で歩いて新宿に向かった。日差しに文句を言いたげな焦げたチューリップと、すれ違う外回りのサラリーマンの目線を受けないように歩道の端を申し訳なさそうに歩く。できるだけ早く、目的地に着くように。

まず荷物になる本をBOOKOFFで買い取ってもらった。誰も読まないような新書ばかり8冊を持ち込んだが、結果は60円だった。買取金額で何か1冊くらい購入しようと思ったがそんな金額はもらえなかった。一番値が張るだろうと踏んでいた医学書は購入対象ですらなかった。なのでメルカリに出すことにした。

メルカリに出品すると即購入された。わりと強気の金額で出品したのにもかかわらずだ。物の価値も人間の価値も需要と供給によって成り立っているのか…。そう考えると自分を少なくとも買ってくれる社会があるのかもしれないと思わせてくれた。

次にドトールに向かった。新宿には沢山のカフェがある。チェーン店から個人で経営している純喫茶まで。ルノワールには高給取りの外回りのサボリーマン、スタバにはMacBook信者、ベローチェには喫煙所の吸い残しを吸いに来る浮浪者。

私がチョイスしたのは全く電波が入らないのにWi-Fiすら完備されていないドトール。デジタルデトックスのためにもこのドトールだけは一生Wi-Fiを完備しないで欲しい。知りたくない、不幸なニュースばかりを知らせてくれるスマホにはほとほとうんざりしている。社用携帯なんてものを持っている人の多くは、着信音を聞くだけで心拍数が上がってしまうのではないか。Z世代には電話対応が苦手な人が多い。私もその一員なのだが。電波の入らない空間は私にとっての聖域である。LINEの返信も苦手な私には誰にも干渉されない、接客もテキトーにしてくれる外国人が働いているこの店が好きだ。

もう何周目になるかわからないエッセイを読んで一番単価の安い紅茶をチビチビ啜る。最後には冷たくなってしまう300円もしない紅茶は高級感こそないもののガムシロをたっぷり入れると至高の一品になることを教えてあげる。それと同じ本・アニメを何周もするのは鬱病患者の特徴の1つといえる。なんとコスパの良いことだろう。時間の無駄と言われればその通りだが、至高の邪魔をする権利はどこの誰にもないはず、mind your own business.

最後に近くのドラッグストアでお風呂用洗剤を購入した。沢山の魅力的な商品が並ぶなか、他のものを吟味することが苦手だ。子どもの頃のお使いからそうだったように「牛乳買って来て」と言われれば、牛乳だけを買ってきた。欲しいお菓子を見てみようとか、他の魅力的な商品を探してみようとかいう考えが欠落しているように思える。交渉力もない。感情の上下は他の人に比べて激しいくせに、他に買っていい物が無いか思い浮かばない。出社してコンビニに行っても毎日同じ親子丼を手に取る。売り切れている場合は何も手に取らずに帰社することも少なくない。自分だけの食事、食欲を満たす行為が恥ずかしいのかもしれない。食欲の他にも性欲・睡眠欲にも興味を失っている。性欲を満たすために玩具を購入するのはバカバカしく感じるし、睡眠に関しては眠剤が手放せない。三大欲求を蔑ろにすることに慣れ切った。次の職業は戒律の厳しい僧侶にでもなろうか。それにしては飲酒量が多く、天国には到底行けそうにない。

明日は何の目的をもって生きて行けばよいのか、考え中。生きているというより死んでいないだけ、こんな人生に皆さんの血税をいただいて本当に申し訳ない。障碍者ってだけでかなり優遇されるこの国で、明日誰かのために私にできることがあればいいな。


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