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都市デザインと地方デザインの解離

今回は「地方デザインと都市デザインの解離」というテーマで書きます。


都市部と地方のデザインに対する捉え方

海外の場合、一概に括ることができないので、ここからは日本という国について考えてみています。

デザインという概念自体、少し抽象的でわかりづらいと思っている方も少なくない。デザイン思考という考え方がビジネスに積極的に活かされるようになってきたのもここ数年の話で、まだまだデザインの本当の力は浸透しきっていないというのが僕の印象です。

僕は瀬戸内あたりの地方出身なので、東京へ上京してきて都市部のデザインにたくさん触れるようになりました。そして、デザインの捉え方に関しては、都市部と地方では大きく違いがあるなと感じたのが、この記事を書こうと思ったきっかけです。

地方のデザインはダサいのか

まずはじめに弁解しておきますが、「地方のデザイン」という言葉で括ってしまうことをお許しください。もちろん地方にもデザインの力を最大限に使って、素晴らしいブランディングをしている事業やプロダクト、会社が多数あるとわかった上で、平均的な一般論として書かせていただきます。

地元にいたときにオシャレなデザインに出会った記憶が少ない

思い返すと、地元に住んでいたときも、家には無数のデザインが届いていました。チラシやパンフレット、DMなど。それも毎日のように届いていたはずです。

でも、どれをとっても、「このデザインかっこいいな!」「このデザイン新しいな!」そんな印象を抱いたものに出会った記憶はほとんどありません。むしろ、「ダサいチラシだなあ」「見辛いカタログだなあ」そんな風に感じていました。

やたらとクーポン推してくるし、セールしてるし。それが普通だと思っていました。

上京してきて感じたこと

東京に来て3年目になり、もちろんいろんなところにうちの住所は漏れ、チラシやDM、地域誌がポストに投函されるようになりました。何気なくみていたそれらも、何度も入れられているうちに、少し注視してみると驚きました。

単なるチラシや地方誌なのに、実家でみていたような「ダサいデザイン」のものがとても少ないのです。斬新で新しいスタイリッシュなものこそあまり多くないですが、どれも綺麗に文字組がされ、セールのガチャついたチラシでさえ、見やすくレイアウトされていることが一瞬でわかりました。

だからと言って、実際にお店に出向くことは基本的にないですが、信用という面では僕はやはり都会の店舗の方がしっかりしていそう。。。という印象を持ちました。そして、そういったものにたくさん触れているうちに、ダサいものは見向きもせずゴミ箱に入れている自分にも気付きました。

都市部と地方のデザイン

上記の体験から導かれたのは、明らかに都市部と地方でのデザインが異質であるということ。その要因については、以下のように推測している。

デザイナーのクセ

あえて「デザイナーのクオリティ」という言葉を使うのをやめた。ここでは「デザイナーのクセ」としておく。都市部にも地方にももちろんデザイナーが居て、彼らがチラシやパンフレットを作っていることに変わりはない(経営者が自作している場合もあるが)

そしてそのデザイナーたちは、やはりその地方のデザイン案件を数多くこなしていると考えられる。卵が先か、にわとりが先か、という議論になってしまうが、やはり都市部の方がオシャレなデザインを求められる機会が多いと思う。たくさんの企業が集まる都市部には、地方と比べていち早くデザインによる差別化が始まり、各企業がこぞってミニマルだったりスタイリッシュなデザインを取り入れているし、数の多さからやはり見やすさは大前提としてデザインが組まれている。

逆に地方のデザイナーへのオーダーは、他社との差別化という観点よりかは、とりあえず営業、広告ツールを作りたい、という物が多そう。クライアント自体も、チラシといえばあんな感じ、という固定概念があるため、変に口出ししてくるタイプほどロクなものにならない可能性が高い気がする。もちろん正しい知識を持って寄り添ってくれるクライアントもたくさんいるので、そこは理解した上で、クオリティよりもやりとりの上で感じられる人柄の比重とコストパフォーマンスによって仕事が振られているのだと思う。

上記の環境的要因によって、都市部のデザイナーと地方のデザイナーでは、それぞれのある種クセのようなものが身に付きがちというのが一つ目の見解だ。

求められているハードル

そして、2つ目に、デザインによりハードルがあると思っている。クライアントだけでなく、やはりそれをみる消費者側にも、デザインに対する固定概念というのは植え付けられていて、見慣れているものとそうでないものが都市部と地方で異なる。

また、人間の思考的に、都会に出てくる人は新しい物が好きで、アーリーアダプターと呼ばれるタイプの方が多いので、海外から輸入されたカルチャーなどに適応するのも早いが、ここでもやはり地方とのギャップが生まれてくる。

地方の消費者にとって、新しいもの、オシャレなものは、もちろん魅力的ではあるが、ハードルが少し高いという要因があるのかもしれない。同調圧力的なものを過敏に感じる日本人は特に、周りで誰もやっている人がいないと、誰か試してくれるまで待つ、という思考に入ってしまいがちだ。

地方は特に、「自分なんかには似合わないか」という風に感じてしまわないように、あえて少しダサくして、消費者のハードルを下げてあげるという狙いがあるのだと思う。

都市部と地方のデザインは解離してしまうのか

都市部と地方のデザインの解離は、東京や大阪など、都市部への人口の一極集中が招いた副産物とも言えるかもしれない。コロナ禍において、テレワークの普及が進めば、自ずと地方に人が流れるのではないかとも言われている昨今。人口が地方にもうまく分散すれば、消費者のハードルが均され、デザインの解離は少しずつなくなっていくことも期待できるかもしれない。

とはいえ、デザインの使命は、届けるべきものを的確に迅速に消費者に届けること、付加価値をつけること、これを忘れないようにしながら、うまくデザインと付き合える人が少しでも増えてくれるといいなと思う。

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