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『拝啓 私が会いたかったあなたへ』#2 アルコール依存症のあなたへ
『拝啓 私が会いたかったあなたへ』って?
はじめまして。ボードゲームを作っているましかまるです。
「ましかまるくんって人脈広いよね、いろんな人の意見が聞けて楽しそう。」
そんな友人の言葉から、学生のうちにしかできない(かもしれない)、企画を思いつきました。
いろんな人が「会いたがっている」人を繋いで一冊の本を作ろう!
インタビューして記事を書く
その人が会いたい/羨む人の条件を指定
条件に合う次の人をましかまるの友人内で決定
次の人にインタビュー
を1冊のノートが終わるまで続けようという企画です。
今回は…?
前回指定されたのは、「アルコール依存症だった人」。私の大学の同級生に該当の人がいました。アルコール依存症になっていた、ということは事後報告の形で聞いたのですが、当時も私や友人の前では普通に振る舞っていたので驚いた記憶があります。
あのとき、本当はどんな気持ちで生きていたのか知るために、2人目は彼女にしました。
彼女のことを「依存症」とします。
注意:便宜上「依存症」と書いていますが、今は克服しています。
現在の依存を示唆する意図はありません。
2023.4.16 の、少し前
さて、彼女は現在フリーター。暇しているとは聞いていたので、ちょっと尋ねてみました。
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夜10時に依頼して翌日朝10時から来れる!?そんなことがあろうか。
実際は翌日のバイト前にわざわざ早起きして、私の家に寄ってくれました。めちゃ感謝。
取材場所の写真を撮ろうと思ったんですが、まんまウチなので、撮る気が起きず忘れていました。ポテトスナックと、新潟土産の草餅、1.5Lのお茶が並んでいました。カオス。
お酒に溺れる
依存のはじまり
―― 来てくれてありがとう。今日はアルコール依存症だった頃の話を聞きたいんだけど、大丈夫?
依存症「全然いいよー。」
―― まず、酒を大量に飲むより前の話が聞きたいな。いつから飲んでたの?
依存症「はたち。大学2年の頃から、友達と適量を飲むことはしてたよ。あの頃は全然飲んでなかったな。意識を飛ばすこともなかったし。」
―― うわ、さっそくネタバレ(笑)。
依存症「書く順番変えればいいじゃん(笑)。お酒を大量に飲み始めたのが、2年生の11月だね。自分でも好きかどうか自信がなかった男子が、知らない女子と付き合い始めちゃって。失って初めて気づくっていうか、付き合い始めたのを知ってから、夜眠るためにお酒を飲んでた。」
―― でもそのときは自分のことアルコール依存症だとは思ってないんだよね?
依存症「そうだね。うちはボロアパートで防音ないのに、ほとんど全員が夜中に騒いでるから、私が一人で飲んで暴れてても、通報されなかったんだ。騒ぐ以外にも色々あったよ。朝起きたら裸で寝てるとかは普通で、冷蔵庫の中身が全部出てたり、玄関のドアが開いてたり(鍵がではなく、物理的に!)、トイレットペーパーが全部巻き散らかされてたり。」
―― やばいな(笑)
依存症「ま、全部覚えてないんだけどね。一番やばいと思ったのは、身に覚えがないのに、スマホで自分の声を録音してて、最初はただの叫び声なんだけど、『痛い!』『助けて!』とか言ってるのね。」
―― はいアウトー。普通のアパートなら通報祭りだわ。それで依存症って自覚したのね?
依存症「いや、自覚したのはこのときじゃないなあ。もうちょっとあと。」
―― えぇ…。
memo:裸で寝てることへの一番の恐怖は、脱いだことなんかじゃなくて、裸でコンビニに酒を買い足しに行ったか不安になるところなんだって。なんだそのウミガメのスープみたいな話は。
まさかの理由で、病院に行く。
依存症「でね、病院に行ったの。」
―― え、依存症って自覚してないのに?
依存症「うん。依存症を治すためにじゃなくて、さっきたくさん言ってた、お酒が原因の行動をなくしたくて!あの頃はずっと頭がふわふわしてて、自転車の鍵を掛けてなかったの。そしたら盗まれちゃって。それが嫌で病院に行った。」
―― 交番いけよ。
依存症「行ったわ(笑)。そっから精神科に行って、ADHDって診断されて。これはあくまで可能性としてお医者さんに言われたんだけど、お酒で記憶が飛びやすいのもADHDが原因な可能性もあるって言われた。」
―― あくまで可能性としてね。そこでアルコール依存症って診断は?
依存症「された。でも、ふーんくらいに思ったな。だって、お酒飲むのをやめたいんじゃなくて、いろんな行動をやめたいんだもん。」
―― なるほど。かなりあっさりした反応だったわけだ。それから治療スタートしたの?
依存症「そうだね。私の場合は嫌なことを忘れて寝るためにお酒を飲んでたって話をしたから、睡眠導入剤をもらった。ADHDの薬ももらったけど、気休め程度ですよって言われた。でさ、お酒と睡眠導入剤との飲み合わせが悪いらしくて。お酒を避ける生活が始まっちゃったのね。」
―― うわ。いきなりか。
依存症「うん。それまで毎日、バイトの帰り道は『お酒飲まなきゃ』しか考えてなかったのに、そう思えなくなっちゃって大変だったよ」
―― どれくらい続いたの?
依存症「数日」
―― え?
依存症「数日だね。」
――…ん?なんて? 夜は酒を飲まずに睡眠導入剤を飲んで、寝る生活が続いたのは?
依存症「数日。そもそも、急に辞めるのは無理だから徐々にでいいっていわれたんだけど。全然続かなかったね。てか、病院に行ったのも2,3回だからね。」
note:この頃塾のバイトをしてるときに、震える右手を左手で抑えて生徒に隠しながら書いてたこともあったんだって。ちなみに時系列的にこのあたりは3年生の夏頃。まさかの大学でめちゃくちゃ俺と会ってた。
まさかの理由で、病院に行かなくなる。
―― もう何も驚かねえよ…。なんで行かなくなったの?
はい、めんどくさいからってことね。
依存症「インタビューは?(笑)。確かにめんどくさいのもあったかもしれないけどさー。明らかな決め手があって。お医者さんに訪問看護師をつけませんか?って言われたんだよね。それ言われて『えー、確かに効果的かもしれないけど、うざいなそれは』って思って。また言われるのも嫌だし、行かなくなったね。」
――あれじゃん。お母さんに宿題やれって言われたら『今やろうとしてたのに!』でやる気なくすやつじゃん。
依存症「確かに似てるかも。思い返せばこの直後が一番お酒飲んでたなあ。何もかもどうでも良くなってさ。」
―― その”一番飲んでた期間”はどれくらい続くの?
依存症「あんまり細かいことは覚えてないんだけど、数週間だと思うよ。量が増えたというより、もう辞めとこう、って日が少なくなった。」
―― いやさ、普通さ、その話の続きは”めっちゃ飲む日が半年くらい続いた”とかから始まるじゃんか…。オチ知ってるから驚けないけどさ…。
memo:この前一緒に飲みに行った時も、ふらふらしてた。本人曰く自分が酒に溺れたのは、飲んでるときに具合悪くならないからだって。二日酔いはあっても、当日は大丈夫らしい。いいなあ。
まさかの理由で、解決する。
正論パンチ
依存症「やっぱりね、正論っていうのはじわじわ効いてくるんだよ。訪問看護師つけたほうがお酒辞められて、変な行動もしなくなるっていうのはわかるんだよ。でも病院には行きたくない。で、ある日起きると、スマホにマッチングアプリが入ってたんだよねー。」
―― いやおかしいってその話。なんで朝起きたらマッチングアプリが入ってるんだよこええよ。
依存症「私も流石に驚いたよ。でも、一緒に生活する人がいて、監視してもらえばお酒減らせるかもって思った。」
―― 受け入れるのが早すぎるんだわ…
依存症「彼氏欲しい!ってわけじゃなかったんだけどね。相手が付き合ってほしいって言ってきたから、あんまり考えずにOKしちゃったかもしれない。」
memo:起きたときにはもうすでにいくつか登録してたらしい。依存症がどうしても苦手なマッチングアプリはインストールだけで登録してなくて、安心だったんだって。
彼氏クン、参上!
―― で、彼氏ができたと。
依存症「そうだね。出会って1週間で付き合って。そのタイミングでゴミ屋敷を掃除したんだ。」
―― 我々のゴミ屋敷同盟から一時戦線離脱したってわけですね。ぐすん。
依存症「大丈夫大丈夫、すぐ戻ってくるから。ゴミ屋敷を一気に掃除するには業者じゃなきゃだめだと思って、掃除して、粗大ごみとかもトラックで持っていってくれるタイプの業者を呼んだんだ。」
―― いくらしたの?
依存症「11万。冷蔵庫も、洗濯機も、ベッドも、炊飯器も、トースターも、椅子も全部持っていってもらった。」
―― すっきりさせすぎなんだよ…。冷蔵庫ないと生活できないだろ…。
依存症「片付けの直後は困ったね。業者が帰って、その後一番最初に思ったことがね、『椅子がない!』」
―― 後悔するのが早すぎるんだわ、さすがに。その後同棲したってこと?
依存症「ほぼほぼ同棲って感じかな。一緒にご飯作って、お酒の飲み過ぎは止めてもらって、いつの間にかアルコール依存症からは抜け出してた。この頃が4年生の8月頃だから、2年弱の戦いだった。記事にするにしてはあっさり解決しちゃって面白くないでしょ。」
―― いや、十分面白いです!!!!!!
memo:話がぶっ飛び過ぎて取材時には「彼氏依存で上書きしたのかな」くらいにしか思わなかったけど、男子への失恋で始まった依存症が、彼氏で満たされて解決するって、よく考えたらアタリマエのことかもしれない。
さようなら、彼氏クン
―― で、今は彼氏いないってことだけど、いつ別れたの?
依存症「4年生の9月頃。1年くらい付き合って別れたよ。」
―― スピード感ありすぎだろ。
依存症「というのも、大学から卒業するまでには、〇〇くん(一番最初に酒を飲む理由になった、失恋の相手)に会って話がしたいって思っちゃって。けじめをつけるために別れたよ。」
―― なるほどね。今はもうその相手とは吹っ切れたの?
依存症「うん。今でもたまに会うし、付き合ってないけど今の関係で十分満足してるよ。行動を起こしたことに後悔はしてないし、今はめちゃくちゃ幸せだよ。フリーターだけどやりたいこともあるし、来月はフランスに行くよ。」
―― アルコールの量と、部屋の汚さは?
依存症「お酒は程々に飲んでる。部屋の汚さはちゃんと戻ったよ。キッチンが流れないからお風呂で皿洗いするの大変♡」
memo:ベランダに数年放置してたゴミ袋が溶けてハエがいたのはもちろんとして、でかい蜂の巣ができていた、という劇ヤバエピソード持ちの依存症が、汚部屋依存から脱却できる日は来るのか。乞うご期待。
依存症生活を振り返って
今で良かった?
―― アルコール依存症だった時のこと、アイデンティティだったりする?
依存症「難しい質問だね。あんまりそうは思わないな。お酒は好きだから、どうせ人生でいつか1回はアルコール依存症になってた気がするの。逆に若いうちで良かったって心から思うよ。体も丈夫だし、暇だし。
絶対なってたってこと考えると、何となくだけどアイデンティティではないかな。」
―― なるほど。もう一回なることはあり得る?
依存症「いや、繰り返したくない。一回目にお酒に依存したのは悩みを抱えたときに人と会わなかったからだと思ってる。だから今度なにか悩んだときは、マッチングアプリでもいいから人と会おうって思ってる。」
―― 繰り返したくないってことはやっぱり、アルコール依存症は怖い?
依存症「怖いよ。記憶がなくなるのが怖いんだよね。自分が自分でいない感じがするっていうか。それに、日中もずっとぼーっとしてる感じがするから、相乗効果でそう思うんだよ。」
memo:取材前に新潟に行っていた依存症。あちらで暇すぎてマッチングアプリを再インストール。地元に戻ってきても惰性で続けていて、数日後に友達として会う予定なんだって。なんでもありだなお前。
聞いちゃいけないことを聞いてみた。
―― 高校時代に、アルコール依存症の人の体験談とか聞かなかった?講演会みたいな。(注釈:取材者にはそれがあり、普通だと思っていた。)
依存症「え、そんなのあったかな。うーん。なかったと思うけど。」
―― あ、そうなんだ。中学・高校時代にそういう経験をしてたら、アルコール依存症にならなかったと思う?
依存症「無理だと思う。私の場合はアルコールが怖いとかじゃなくてさ、別の原因から始まったから、依存症っていう部分だけ切り抜かれても、原因の解決にはならないじゃん?」
―― 確かに。
依存症「身の回りの人にアルコール原因で暴れる人とかが居て、そもそもアルコールに嫌悪感がある、くらいじゃないと効果ないと思うよ。」
memo:もし講演会みたいなのが理由で、アルコール依存症を回避できたと思っている人がいるなら、話を聞いてみたいと思った。その人の心の揺れは凄まじかったはずだ。
次は誰につなごう?
―― さ、取材はここくらいにして。依存症が話を聞いてみたい人はどんな人?
依存症「外国に住んだことがある人!いる?」(最初の候補がありましたが、前回同様私の知り合いに居なさすぎたので却下。)
―― うーん、ちょっとパッとは思いつかないけど、それだったらちょっと考えてみる!!
依存症「ありがとう!」
依存症にノートを書いてもらった。
取材を終えて
ずっと依存症の背中に広がる青空が印象的だった。すっきり晴れた日だった。「午後から雨らしいよ。」と依存症が言う。綺麗な雲が急に雨雲に見えてくる。アルコール依存症って、こんな感じなのかもしれないと思った。
私は依存症が困っていることに全く気づいていなかった。誰かに頼られる人になりたくなった。雨の日を忘れて、虹を喜び合える人が欲しくなった。結局この日、雨は降らなかった。
次回予告
依存症がノートに書いた質問を中心に、「外国に住んだことのある人」の記事を書きます。ただし、依存症がノートに書いた質問の内容がはっきりわかる書き方にはなりません。今回と似た形になると思います。(詳しくは下記)
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有料部分について
有料部分には、以下のコンテンツが含まれます。
依存症が交換ノートに書いた内容(文字起こし。依存症本名など、個人情報にまつわる部分を除く。ここに質問の詳しい内容が書いてあります。)
前回の小説家の質問と、それに対する解答(記事の中にほとんどすべての解答が書かれています。新情報は少しだけです。)
採用されなかった次の人の候補、不採用となった理由
記事の流れ的に組み込めなかった会話
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