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親と子の法的繋がりと面倒くささ

 法的に親子の縁を切ることはできません。

 というのも、10代から調べて20代になったあたりで弁護士に相談をして、不可能であることを聞いて落胆するような家庭環境に育ったから見知った現実ですが、10代の終わりから30代の頭まで、同じような方法を探る人たちに相談をされることもあり、業務上有利になるからと10000時間ほど勉強して司法試験に4度挑み惨敗していた最中、日常的に「このケースで厄介な目に合う」と想定している話題なので、骨身にしみて面倒くささを実感しています。

 参照すべきは戸籍法をはじめとする法律ですが、まず、原戸籍からは何をやっても名前を抜けません。
 これは結婚、離婚なども含み、自発的手続きに至ろうと、「戸籍上から見えなくする」ことはできても、原戸籍には残り続けます。つまり、関係性は維持されたままなのです。

 原戸籍に残る=関係性は残る=相続の問題も解消されません。
 たとえ、資産を持つ親が、子に相続させたくないと思い弁護士などありとあらゆる手段を使ったとしても、「遺留分」というのは子が受け取る権利になります。

 子から相続権を奪う「相続人の廃除」という手段があります。
 これが非常に面倒くさいのですが、法律の原則として、各ご家庭の教育方針よりも世間一般の教育方針を基準に判断をなされ、「遺言を遺した人を虐待したか、重大な侮辱を行った相続人」または「著しい非行があった相続人」でなければ、まず認められません。

 これが親子関係の面倒くささです。
 「うちはうち!よそはよそ!」というのは、法律で解決しようとした場合に、なかなか通用しないのが日本国です。
 そして、もちろん立証する必要もあるため、日ごろからそういった記録を残すという手間も面倒くさいですよね。

 また、物理的に距離を置きたい場合、接近禁止命令を適用したくとも、明確な理由(暴力など)が必要となり、期間も6か月程度しか有効にならないという中途半端さがあります。
 弁護士に「あいつと俺はもう無関係だから近づけたくない」といっても、子ども側に明確な過失がない限りは不可能でしょう。

 「親子」という関係は常に切り離すのが難しい障害になります。

 さらに面倒くさい話ですが、親子の間には互いに扶養義務のあることが法律に定められています=親族間扶養義務(民法第877条各項)。
 ただし、義務教育を終えた子に、上級教育を与える必要性は特に求められておらず、「お金はあるけど進学に協力しない」ということは可能のようです。
 かといって20歳未満の子あるいは大学生の子を、家庭に経済的な理由がないにも関わらず家から追い出すことは先の民法上は認められていません。
 ここでも「うちはうちの金銭感覚」が通ず、親の収入、学歴、家庭環境などを踏まえ、子どもの健康状態、就学状況、収入を得られる能力で判断されます。
 およそ、中卒の子どもがどこかの企業に就職して得られる賃金では、生活は困難であろうと判断されるため、20歳までは扶養の義務が明確に存在するようです。

 かかった養育費を親は回収できるのかという点については、先述の通り、親族間扶養義務(民法第877条各項)がありますので、成人し安定した収入を持つ子は親を養う必要性が出てきますがそれは「余力の範囲内」でしかありません。ただし、子を扶養する義務が親にあるため「養育費」を回収するのは不可能です。義務ですから。
 「就学費用」について、家計を圧迫するような高額費用を捻出した場合などは、黙示の金銭消費貸借契約が締結されていたと見る余地があるかも知れませんので、子は返還をしなくてはいけないかもしれません。
 ただし、そういった事情がない限りは、おおよそ親から子どもへの「贈与」と考えることができますので、「書面によらない贈与」として「履行の終わった部分については撤回できない(民法550条)」として、親は子に対して回収はできません。

 面倒くさい話がどんどん深みにはまっていきますが、未成年者が罪を犯し、その結果、他人に損害を与えた場合、その親権者である親が、監督義務者として民事上の責任を負うことがあります(民法714条)。
 「負うことがあります」ということは「負わなくていいときもある」のですが、子どもに責任能力がある場合(一般的に12歳)、親は責任を負わなくてもよいのですが例外があります。

 弁護士に任せてりゃ負担はいいですが、嫌な出費ですよね。
 こちらも親の責任なので、親から子に請求することはできません。

 子が捜査機関の捜査の対象になると、その内容と親の対応によっては職場を解雇されたりするようです。未成年ともなると、警察に親子関係をしっかりと調べられ、社会信用度が落ちてしまう可能性があります。
 別にここら辺は、会社なんてどうでもいいと思うので、好きにすればいいとも思いますが、面倒くさいよなぁと思います。


 ここまで書いて、実はまだまだ足りないのですが(家族間のアリバイから生ずるリスクなど)、そろそろ飽きてきたので頃合いとして幕を下ろそうと思います。

 面白おかしい知識として有効活用して頂けると幸いです。

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