映画『アリスとテレスのまぼろし工場』を見た感想

製鉄所の爆発事故により出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす14歳の正宗。いつか元に戻れるようにと、何も変えてはいけないルールができ、鬱屈とした日々を過ごしていた。ある日、気になる存在の謎めいた同級生・睦実に導かれ、製鉄所の第五高炉へと足を踏み入れる。そこにいたのは言葉の話せない、野生の狼のような少女・五実―。二人の少女との出会いは、世界の均衡が崩れるはじまりだった。 止められない恋の衝動が行き着く未来とは?

トレーラーから抜粋

岡田磨里監督作品の最新作

監督は「さよならの朝に約束の花をかざろう」で監督デビューした岡田磨里監督。
脚本家としてとても有名な方で「あの日見た花を僕たちはまだ知らない」や「心が叫びたがってるんだ」など多数の作品を担当。後にも先にも脚本家からアニメ監督やってる方ってこの方だけではないだろうか?

知り合いと話していて、よく岡田磨里さんの作品がでていて、その形容詞が「心をざらつかせる」だったのが印象に残っていて見にいった。

ネタばれしないで話せる気がしないので、ここからもうネタバレありです

設定がうまい!

冬の夜、高校性の主人公が友人たちと部屋でラジオをききながら勉強をしていたら、突然、空が割れて街の時が止まる、、
その日から止まった時間の中で、普段と同じように生きるための「ルール」ができあがっていく。

それは「変化すること」を禁止することだった

もうこの流れがすごい、、
高校生を主人公にしておいて、変化することを禁じるというしばり。
まだ「好き」という感情がわからない主人公はここから、ヒロインにひかれていくという、、すごい設定おもいつくなぁ
ある種のロミオとジュリエット

閉ざされた街では以前、変人と呼ばれていたヒロインの父親が街の人達に宗教の教祖さながら演説をする。それにただ聞き入る街の人々

「今とリンクした世界」


「止まった時間」も「変人扱いされていた人の神格化」も今をきりとってきてる題材な気がした

コロナ禍にみんなが家から出れない「止まった時間」を経験している。
これからどうなるかわからない不安と、外に出ず、ただ家にいる日を過ごす時間はこの作中と似ていた。生きているという感覚に段々と鈍くなっていく日々。
作中の人物たちもわざと自分の体を痛めつけて、「生きている」という感覚を取り戻そうとしている。

SNSで一人のインフルエンサーとファンからなるコミュニティは以前だったら目に止まることのなかった人を一躍、有名にして発言力を与えた。
それがあってるのか間違っているのかを確かめず、受け入れてしまう流れも現代である気がする。「あの人がこういってるんだから、正しいのだろう」

何がおこってるのかわからない状況下で声を大きく上げた人の情報を信じてしまう。

この舞台を用意されてしまったら今後どうなっていっちゃうんだろうと胸がざわめく、、

セリフ回しがうまい!

「わたしの名前、どういう字を書くか知ってる? 六つの罪とかいて六罪」
主人公と睦実というヒロインが出会うシーンのセリフ

主人公がヒロインに似た謎の少女に「五実」という名をつける
「なによ 五実って!」「そうだよ!お前より罪が一つ少ない」

あ、ここで前のセリフの回収するんだ!かっこいい、、ってシーンが結構ある。ラスト付近でも効果的に、冒頭でのセリフが効いてきてたり、、

脚本書いてる人は当たり前だけどセリフ回しがうまい、、

恋愛の手触りがうまい!

高校生でまだ「好き」という感情がわからない。
「好き」という気持ちだと確信しても相手にどう伝えればいいのか知らない。

中盤で主人公がヒロインと口論になりながらも好きな気持ちを伝える。
この辺の描写がまぁ生々しくて、、
ケンカしてるときもセリフがうまいから、ハリウッド映画でよくあるケンカしてからのラブシーンと流れは同じなのに、やたらリアリティがある。

感情の変化と呼応して、割れていく空を見つめながらの、やたら生々しいキスシーンが、ベタにみえないのがすごいなぁと

見終わった後の少し物足りなさ

少し物足りなさでいうと設定が上手すぎて、この内容をどう終盤で回収しながら物語を終えていくのかと思ってたら、ラスト付近が結構、力技で終わってしまった気がしていて、、
(これは好き嫌いで分かれるポイントな気がする)

まだ舞台設定を消化しきれてなくないのでは?と思ってしまった。
あとこのお話、高校生の目線から大人の目線へのスイッチが終盤付近であるので、ここが少し見やすさの難易度を上げているんじゃないかなぁとか。

知り合いが言ってた通りの「心をざらつかせる」ポイントはいくつもあったので作品みにいけてよかった。


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