映画『TAR』を見た感想

世界最高峰のオーケストラの一つであるドイツのベルリン・フィルで、女性として初めて首席指揮者に任命されたリディア・ター。彼女は天才的な能力とそれを上回る努力、類稀なるプロデュース力で、自身を輝けるブランドとして作り上げることに成功する。今や作曲家としても、圧倒的な地位を手にしたターだったが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録⾳のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんな時に、かつてターが指導した若⼿指揮者の死から、彼女の完璧な世界が少しずつ崩れ始めるー。

本編トレーラーより抜粋

見たいと思ったきっかけは、「天才」クリエイターとその周りの人物の軋轢からなるヒューマンドラマだったこと。
正直、重そうな内容と2時間30分を超える尺に見に行くことをためらっていた、、でもオーケストラの音楽がながれる映画で劇場にみにいかないってのはないなぁと劇場へ

主演のケイト・ブランシェットがとにかくすごい

「ケイト・ブランシェットがすごいんです!」
見に行こうか迷ってるときに知り合いに言われたセリフ。「そんなこと言われるとハードルあがるなぁ、、」と思って見に行ったらケイト・ブランシェットがすごかった。

この人が話す仕草、表情だけで絵がもつ。
気品があり、威厳があり、ひとつひとつの所作が美しい。

映画全編でこの人が悩む繊細な部分から感情が高まり激高する姿を追いかけてるのでケイト・ブランシェットの映画だった。

淡々と日常を引き気味でとっているだけなのに、こんなに話してる姿に目が離せなくなるものなのか、、

ディレクター+プロデューサーである主人公

「天才」という形容詞がつくと奇抜な人を想像してしまうけれど
主人公のターはビジネスマンの側面ももつ。外から寄付金を集めるための活動やオーケストラを運営する上でのリスクヘッジにも目を光らせれる。

相当しっかりしているじゃない、、
天才クリエイターというよりひとりでディレクターとプロデューサーを兼任できる稀な人という印象。

正直、ここまで全部できてしまったら、もっと人として歪む気がするのだけど、そのバランスもギリギリのところでとれているのでだいぶすごい、、

事実があえて語られないまま進む展開

作品全編において、起こった事件の事実が全て明確にでることはない。
何が悪くて、何が正しかったのかの判別はできないようにできている。

主人公は告発によって、世間から叩かれ失脚していくのだけど、それ自体も色々な要素が重なった結果であって、明確に「それゃこんなことしたら、、」ととれる言動は過度には見れなくなっている。

なので見た人が事実の断片から無限に解釈を広げられるのだけど

権力がある人に、利益をもとめてすり寄る人。才能による憧れや嫉妬。
よりいいものを作ろうとするための非情と葛藤。人間関係。
色んなものが重なった結果生まれてしまったことが淡々と描かれている。

受けてが事実の断片から自分の意見を発信できる現代。個人の数だけ解釈が発生する。
多くの人を引き寄せる天才は、昔よりも生きづらいのかも知れない

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