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五十音小説「く」

クラスのホームルームが終わり
生徒達が教室から出ていくのを見送った。


そして教室が静かになったところで
俺はある方向に目を向けた


そこには
ため息をつきながら机に項垂れる女


俺は女のもとにゆっくりと向かった。

「…足、大丈夫?」

女に声をかけながら
俺は今日プールで見たものを思い返す。


目の前の女は水中で遊んでいると思っていたら
同じ部の人間に足を引っ張られ捻挫したのだ。
しかもアイツら謝ることもなく笑ってた…


思い出すとまた怒りが込み上げてくる。


俺は女が所属する部活で"暇つぶし"と言うイタズラがグループ内でまわされていることを友人から少しだけ聞いてはいたが
初めて見るそれは明らかに悪質だと思った。



でも目の前の女は友人や部活内の空気が悪くなることを恐れてか担任や顧問にも言わず、反抗する事を諦めているようだった。





(…それなら俺が動くかない。)

ある考えに辿り着き、早速行動に移す。


「顧問に伝えとくから30分ぐらいここでゆっくりして部活に行きな。」


そう女に伝えると
少し考え、頷く。


その姿に可愛いなと思いながら
つい、女の頭にそっと手を乗せ軽く滑らせた。

そして一方的に満足し、
じゃあな。と言って女に背を向け目的地に急いだ。





−−−−−−−−−−−−−−−−


目的地に着くと顧問がいないことを確認し
主犯だと思われるグループに声をかける。


「なぁ…お前らプールの時間ワザと怪我させただろ。」



「「「…っ…」」」


女達を見ると
突然話しかけられたことに驚いたというよりも
明らかにマズイという顔をしていた。


「っ…ただの軽いイタズラだし!!!
それに一人だけをターゲットにしてるんじゃなくて
順番にまわしてて、みんな知ってるけど誰からも不満きてないから問題ないし!!!」


「何が軽いイタズラだ…お前らがやってること悪質なんだよ。捻挫させといて笑ってただろ!!謝まれよ!!!それに不満きてないから問題ないって…不満に思ってても周りを思って言えないやつも居るし、そんなことも知らないでどうせ盛り上がってんのお前らだけだろ。そういう事されるとマジで目障りなんだよ。」


「アンタには関係ないじゃん!目障りだと思うなら無視すればいいでしょ!!!」



ふざけんな。

「…俺には関係あんだよ!!!
アイツは俺の大事なヤツだからな!!!

…あと、まだ続けるようなら顧問に報告するから。
アイツだけじゃない。他のやつにも絶対すんな。」


話はそれだけだ。といって
強制終了させるかのように自分の部活に向かった。

安心できる日常が戻る事を願いながら。







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