友人のMさんの話

いつも通りの通学路、いつも通りの交差点でいつも通りじゃないものを見つけた。交差点脇に菊の花束が置いてある。昨日まではなかったはずだ。死者が出るような大きな事故があれば、近所に住んでいる自分の耳に入りそうなものだが、そんな話は誰からも聞いていない。学校に着いたら誰かに聞いてみようと思ったが、学校に着くと今朝のことは完全に忘れてしまい、そのままいつも通り帰宅した。

次の日の朝、家を出て5分くらいの小さな交差点で菊の花束を見つけた。2日連続で献花を見かけてしまった。あまり気持ちの良いものじゃないな。そんなことを考えながら歩いていると、昨日菊の花束を見つけた交差点に着いた。

昨日あった花束がない。普通に考えれば誰かが片付けたに決まっているが、なぜか花束が動いて家の近くにまで来た気がして少し怖くなった。

次の日の朝、家を出ると同時に足元で嫌な感触がした。なんだろうと下を見ると思わず悲鳴をあげてしまった。菊の花束を踏んでいる。慌てて家に戻り母を呼んだが、母は誰かの悪戯だろうとそのまま花束を庭に投げ捨ててしまった。

その日の晩、嫌な夢を見た。夢の中のMさんはいつも通りに登校して授業を受けているのだが、ずっと視界の端に黄色い菊の花束を持った死装束の女がいる。女の顔は髪で隠れていて完全には見えないがどこかで見たことがある気がする。誰だったか考えながら日常生活を送ったが、分からないまま一日が終わりそのまま帰宅した。食事を取りながら、シャワーを浴びながら、女が誰だか考えていたが、思い出せないまま布団に入る時間になった。布団に入って微睡んでいると、嫌な気配がして目が覚めた。今まで視界の端にいた女がMさんに覆いかぶさっていた。突然の出来事に逃げ出したかったが、なぜだか女から目が離せない。女はMさんに覆い被さったままゆっくりと髪の毛をかきあげた。女の顔がはっきりと見えた。女の顔はMさんとまったく同じ顔をしている、

汗だくになって目が覚めた。女がいないか部屋中を見渡したが誰もいない。良かった、ただの夢だった。Mさんは安心して再び眠りについた。

翌朝、母の怒鳴り声で目が覚めた。
「あんた、なんて気持ち悪い悪戯するの!」
状況が理解できないまま母を見ると、母の手には菊の花束が握られていた。驚きどこにあったのか聞いてみると、Mさんの部屋の前に落ちていたという。

花束にはMさんの足跡がついていた。

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