事故物件日当10万円

「めちゃくちゃ高時給のバイトを見つけたんだけど、一緒にやってみない?」
講義終わりに大学の友人から誘われた。
丁度金欠気味だったので、詳細を聞いてみることにした。

「どんくらいの仕事量で、どんくらい貰えるの?」
「アパートの1部屋を掃除して、一日泊まって日当10万円。」
「え?」
あからさまに怪しすぎる内容に、怪しすぎる日当。
普通なら断るような内容だが、好奇心が勝った。
僕は友人とバイトをすることにした。

「今更だけど、犯罪だとか怖い人だとかは絡んでないよな?」
バイト先へ向かう最中に友人に聞いてみた。
「ああ、そういうのは問題ないよ。」

今回バイトを紹介してきたのは、
友人がバイトをしているキャバクラの客だそうだ。
その客は小さな不動産屋の社長で、
今回掃除しにいく部屋もその社長が管理している建物の部屋らしい。
ただ、その部屋は曰く付きで、
今まで何人も逃げ出した部屋だそうだ。
最後の住人に至っては、荷物を置きっぱなしにして、
行方が分からなくなったらしい。
その部屋の掃除をして、一体なんで住人が逃げ出すのかを検証してくるのが僕らの役目だ。

「大きな荷物は全部出したから、細かいものはお願いね。自由に出入りしてもらって良いけど、夜はできるだけこの部屋にいてほしいな。よろしくね。」
寝袋と多めの飯代を渡して社長は去っていった。

言われた通り、指示された部屋に着いた。
3階の角部屋で2LDK,。
やたらと綺麗だったので、
前住人はすぐに逃げ出したのだろうと思った。
荷物はほとんど無かったので、
2時間くらいで掃除は終わった。
友人とゲームをして時間を潰しているうちに、
夕飯時になったので、
2人で外食に出かけることにした。

あまり美味しくないラーメンを食べ、
アパートの前に来た時に友人が口を開いた。
「俺らの部屋になんか居ねえ?」
3階まで視線を上げてみると確かに何かがいる。
窓の内側に女の頭と上半身が見える。
誰かがグルグルと歩き回ってる。

どうしたものかと友人と話した結果、
とりあえず部屋に突入してみることにした。
(僕一人だったらビビって帰ってる。)

覚悟を決めて部屋に突入してみると、案の定誰もいない。
怖くてしょうがなかったが、
朝までこの部屋にいなければいけない。
友人と無理矢理テンションを上げてゲームに集中した。

午前3時を少し過ぎたくらいだった、
グッ…グッ…。
何かを引っ張るような音が天井から聞こえる。
友人と2人で天井を見てみるが、何も居ない。
グッ…グッ…グッ…。
音はどんどん強くなっていく。

一体何の音だろう?
友人と話していると何かが天井から落ちてきた。
何だ何だと見てみると、足がぶら下がってる。
首吊りだ!

友人と二人で慌てて逃げ出した。
結局、部屋に戻れずに安居酒屋で朝まで時間を潰した。

「あの部屋、誰か首を吊りました?」
翌朝、社長に聞いてみると、
社長は苦い顔をして笑った。

H県 Nさん

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