殴れるし殴られもする

昔ヤンチャをしていたDさんの話。

ある日、女の子を何人か連れて肝試しに行くことになった。
場所は近所の墓場だったが、
夜中にくると結構雰囲気があった。

Dさん自身は心霊関係があまり得意ではなかったので、女の子達と一緒に後ろの方を歩いていた。

「うわぁああああ!」
前を歩いていた友人達が血相を変えて逃げ出してきた。
何が起きたのか前方を見てみると、
着物を着た髪の長い女がゆっくりこちらに向かって来ている。
Dさんは慌てて逃げ出そうとしたが、
女の子の1人が腰を抜かして動けないでいる。

今すぐ逃げ出したいが、
このまま女の子を置いて逃げるわけにもいかない。
そうこう考えてるうちに、
着物の女がDさんの目と鼻の先に来てしまった。
焦点の合わない生気のない目を見ているうちに、
恐怖と焦りで頭が真っ白になった。
気がつくとDさんは女に向かって殴りかかっていた。
冷たい感触が右手に広がる。
あ、お化けって殴れるんや…。
なぜか感心してしまっていると、
顔に衝撃が走り、Dさんは気を失ってしまった。

目が覚めると友人の車の中だった。
後ろにいた女の子によれば、
殴られた瞬間、女は鬼の様な表情になり、
Dさんの顔を思い切り殴り返し、
気を失ったDさんを満足そうに見下した後、
消えたという。

それ以来、Dさんは幽霊に殴り倒された男と仲間内で揶揄われるそうだ。

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