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成長を促す「スキル1on1」の薦め

こんにちは、PdMやデザインなど手広くやっております高瀬です。
私事ですが先日rettyを卒業しました。
卒業に際して、社内で卒業LTを行ったのですが、好評だったためその内容を少し拡張してnoteにします。

今回の話は「スキル1on1」について。
1on1と聞くとメンバーを持つマネージャー向けかと思う方もいるかもしれませんが、どんな職であれ、ある程度経験を積むとアドバイスや育成という面で他のメンバーをサポートすることがありますよね?
シニアなメンバーも、これからシニアになるジュニアメンバーも多くの人が対象になると思います。そしてなにより自分のためにもなります。

これは私の経験則なのですが「1on1」ってプロジェクトの話がメインになりやすくないですか?私が受けてきた&やって来た1on1も殆どがプロジェクトの話に傾いていたので、これが正しいと思っていたのですが大きな間違いでした。
今回の話はそんな失敗から得れた1on1の学びについて記載します。

私が犯していた最大の誤ち

いきなり私の大失敗から述べると「相手の持っているプロジェクトに向き合い、相手に向き合っていなかった」このことが1on1の質を大きく下げている原因でした。

この間違いに気づいたのは、社内でメンバー育成の上手いマネジャーがどんなことをしているかを聞いた時です。

育成の上手い人が主にやっていることは以下の3つでした。

・ウェットなコミュニケーションで褒める&伸ばす
・どんなに忙しい場合でもメンバーの相談に対応する
・背中で魅せる(プレイヤーとしての実力を見せる)

要は「相手と向き合う」という当たり前の事。

この時私は、自分のアドバイスが相手に向き合ったものではなく、相手の持っているプロジェクトに向き合っているものだと気づきました。
今まで相手のことを思ってアドバイスしていたつもりが、相手を置き去りにしていたのです。

相手に向き合わないアドバイスはどういう事が起こるか

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上の図は、相手のプロジェクトに対してアドバイスをしている時の状態です。メンバーが持っているプロジェクトには大小いくつかの問題を抱えておりアドバイスします。

この時、プロジェクトに向き合ってアドバイスするので、「自分ならどうするかという観点や、プロジェクトの状況に合わせた合理的な意見をする」このようなフィードバックをしていました。

現場ではよくある話だと思いますが「え?なんでそんな感じになった?」とかのコミュニケーションをしており、結構ドライなコミュニケーションになっていたかなと思います。

上記の発言はシンプルに何故そうなったかの意図を確認するつもりで発言してるのですが、言い方や相手の心理状況によっては責められて聞こえる場合があります。

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しかし、メンバーの人たちは自身の様々な課題を抱えながらプロジェクトを進めています。課題Aや課題B、そもそも本人が課題すらもわからない状態でプロジェクトを進めている。
私は、この部分が見えていない状態で、自分が正しいと思うアドバイスやフィードバックをしていました。

これが過度に発展していくと「答え合わせのようなバッドコミュニケーション」になっていきます。
意外と多くの人が経験あるのではないでしょうか?
アドバイスや意見交換のはずがメンバーとメンター側で答え合わせしていっているようなあの感じ。

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これはあまり良くないです。

なぜ良くないかというと相談しているメンバーが相談しにくい状態になっていたりします。
例えば、「進めているプロジェクトに対して何か突っ込まれるんじゃないか?」など、心理的に不安な状況になってしまう可能性があります。

この問題を解決するには、相手が持っている課題に対して向き合うことが重要です。

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プロジェクトの問題を解決するのはあくまでもメンバーなのでメンターは直接的にアプローチしないようにしたほうが良いです。

課題を解決するために、プロジェクトの問題ではなく、スキルに着目した1on1をやっていこうとメンバーと話し合い決めました。

スキル1on1でやる事

スキル1on1でやっていたことは大きく2つあって、1つは「褒める」ということ、2つ目は「スキルの構造理解とスキルの分解・解説」

「褒める」


皆さんは普段から周りの人を褒めてますか?
正直な所、私はYesとは言えませんでした。とくに面と向かって褒めるって意外とできていなかったりします。本人や皆の前で褒めることが少し恥ずかしかったりと...

ですが、「ウェットなコミュニケーション出来るようになること」と比べたら褒めることの方が何十倍も簡単ですよね?

ちゃんと相手に向き合って、何が良かったのか、どう良かったのかを伝えてあげることはとても重要です。

なぜ重要かというと2つ理由があって、
①褒めることによって、相手のモチベーションが上がる
②褒めることによって、その後のアドバイスをより聞いてくれる状態になる


ただ、無条件に褒めるのではなく、相手の自己認知を広げる所を意識して褒めてあげたほうが良いです。ジョハリの窓の「盲点の窓」を意識してフィードバックすると良いと思います。

また、スキル1on1を繰り返しているとたまに「未知の窓」へのアプローチが見つかるときがあります。メンターもメンバーも知らなかったけど、対話しているうちに「もしかして、〇〇改善すればもっと上手くなれるんじゃない?」みたいに成長の可能性を発見できるときがあります。

※盲点の窓(メンバーが知らなくて、メンターが知っていること)
※未知の窓(メンバーもしらなくて、メンターも知らないこと)

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私達の場合以下のような実例がありました。

「スプリントレビュー(開発に関わるメンバーが集まりリリース物のレビューする会)での背景説明する回数が他の人と比べてメチャクチャ多いよね?それって〇〇さんがそれだけの数を担当して世の中にアウトプットできてるって証拠だから自信持って良いよ」

相談者は成長できているか実感できていなかったが、そういう捉え方ができるんだと言う自己認知が広がった。

褒めることで行動しやすい心理的状況を作り、成長と成果が出せるフットワークの軽い状態に近づけることが重要です。
(あとは単純にうれしいw)

「スキルの構造理解とスキルの分解・解説」

スキル1on1をするに当たり、私自身がスキルってどうやったら伸びるのかという説明や構造が理解できていませんでした。
その時に出会った本が「能力の成長」です。

スキル(技術)の成長について具体的に説明するのってとても難しくないですか?それを科学的にかつ体系的に解説している本です。
また、抽象度も高いので応用性が広く、ビジネスのスキルだけでなくスポーツや音楽・趣味など様々な分野でも活用ができるので一読の価値はあります。

そのなかで2つほどポイントをピックアップします。

■POINT1
スキルは網の目状で構成されており、サブスキルを鍛えることで成長する

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スキルはそのスキル一つで成り立っているのではなくて、いくつものサブスキルが固まってスキルを形成しています。さらに、そのサブスキルはまた別のサブスキルで構成されており、網の目状の構造になっています。

なので、伸ばしたいスキルがあった場合、そのスキルをサブスキルに分解して、サブスキルを鍛えることで、伸ばしたかったスキルが成長していきます。

まずはこの基本となる構造を知っておくことが効率的に成長するために必要になります。
私達の場合は以下のような実例がありました。

「背景理解」が足りないという課題があった。
背景理解のスキルを分解していくと、「コミュニケーション」の部分で認識齟齬が発生するという課題(根本原因)があった。
コミュニケーションの認識齟齬を改善するために「要約する」ということを意識して取り組み、背景理解力を強化していった。

スキル分解:「背景理解」→「コミュニケーション」→「要約力」

■POINT2
成長しやすいノイズ(問題の難易度)を設定すること

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この本ではホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブランノイズという専門的な用語が出てくるのですが、要は担当しているプロジェクトがその人にとって[簡単〜過度な不安]のどの状態なのかということ。
この状態をコントロールすることがスキルの成長において重要です。

簡単すぎる場合は、新しく得れる経験値が少なく成長に結びつきません。

逆に過度な不安や緊張を感じている場合は、その人にとってはハードルが高すぎる状態の可能性が高いです。
この状態だとプロジェクト自体も失敗る可能性が高く、本人にとっての成長にも繋がりにくいので、この場合はハードルを下げる(ピンクノイズに調整する)アプローチを行ったほうが良いです。


・よりレベルの高い人にサポートに入ってもらう
・難易度の高すぎる部分を切り出す
・担当するプロジェクトを変える

一番いい状態は、適度な緊張と安定が混在している状態[ピンクノイズ]です。
この状態の時が能力が成長しやすいので、時々メンバーの担当しているプロジェクトのノイズ状態を確認します。

もってるプロジェクトすべてが簡単すぎて退屈そうな場合は、「次はあのプロジェクト(少し上のレベル)をやってみたほうがいいかもね」と推薦してみたり、逆に不安な状態が高すぎるとハードルが下がるようにサポートを入れたりと、難易度をコントロールすることが大切です。

実務を通して出た課題を解説・アドバイスしていく

スキル1on1では、この2つのポイントを抑えながら、実務で経験した相手のスキル課題を一つ一つ解説することを繰り返していきます。
私は1週間に1回1時間でスキル1on1を行っていました。チームや組織の状況によって様々だとは思いますが、少なくとも相談者が1週間に1回、プロジェクトには関係なく自身の課題についてよもやま相談できる状態を作っておくのが好ましいと思います。

「〇〇先輩の場合は要件をぶらさないように最初にしっかりコミュニケーションする進め方で...あのとき、エンジニア側にコミュニケーション取りに行ったのは、こんな意図があって....」みたいな、先輩社員の手本をベースに解説したり、実務の中で発生する課題の解説やアドバイスをひたすら繰り返していきます。

スキル1on1の効能

1週間に1回スキル1on1の時間を設けるようになって、アドバイスのアプローチが変わりました。

アドバイスの変化
どのように変わったかというと、個人の抱えている課題も見えるようになったため、個人課題とプロジェクト問題の双方向からアドバイスをアプローチできるようになります。

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メンバーの成長
私が行っていたメンバーは、当初自分の課題が何かもわからない状況で、まずは課題を特定するためのコミュニケーションをしていました。

スキル1on1を続けて3〜4ヶ月経った頃には、自分で自分の課題を特定して「ここが良くない&もっと上手くやっていきたいと思っているのですが、こんな感じのやり方に変えてみたほうが上手くいくんじゃないかと思ってるのですが、高瀬さんからみてどう感じますか?」っと言う風になっていました。

もう、それ答え出てるやん!って状態でめちゃくちゃ褒めます。
褒めたあとに、ちょっとしたアドバイスを加えて、自分の有効性はまだあることをアピールしますw

まとめ

・相手の課題に向き合うこと
・まずは褒める、そこからフィードバック
・スキルの構造を理解すること
 ・スキルは網の目状になっていてる
 ・サブスキルを鍛えることでスキルが成長する
 ・スキルの成長しやすいノイズ(課題難易度)をコントロールする
・実務のなかでの問題や課題の対処法を解説・議論する
・これらを続けること

今回の例はPdMのスキルセットがメインでしたが、どんな職種のスキルであっても応用が効くのでオススメです。

以上、私の経験した1on1の失敗と改善談でした。

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