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高野聖
2022年8月21日 22:33
Ⅰ 河津周作は不愉快な夢から目を覚まして、身を起こすとそこはホテルの、やたらと大きいわりにひどく硬いロココ調のベッドの上だった。目の前には菱形のの植物の様な模様が並んだ壁紙と、革張りのソファー、レースのカーテンのかかった窓からからは薄暗い部屋光が差しているのが見える。明るさからして既に昼前くらいだろう。横を見やると、皺だらけの白いシーツの上に、こちらの方に向かって身体を丸めて女が眠っている。河